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親は山頂を目指し、息子は雪を目指していた。

    「雪だーーーーーー!!」

    バスを降りた瞬間、息子のテンションは一気に最高潮になった。

    本当なら畳平まで行くはずだったバス。

    でも落石の影響で、大雪渓で下車することになった。

    最初は「えー!」と思った。

    でも結果的には、この予定変更が大正解だった。

    想定外の7月の雪。

    滑って、
    転んで、
    また滑って。

    「もう一回!」

    何度も何度も雪の上を滑り、楽しそうな7歳。

    「今日の登山は楽勝じゃない?」

    そんな気持ちになっていた。

    …ところが。

    雪ゾーンが終わった、その瞬間。

    「疲れた。」

    「まだ?」

    「あと何分?」

    「もう歩けない。」

    ほーら、始まった。

    “疲れた祭り”の開幕である。

    さっきまで雪の上を全力で楽しんでいた人と同一人物とは思えない。

    5分歩いては座り込む。

    また歩いては、

    「疲れた。」

    最後の方は怒りながら歩いていた。

    『山の何が楽しいの?』
    『なんで僕を連れてきたの?』

    そんな言葉も飛び出した。


    それでも、一歩ずつ、一歩ずつ前へ進み、

    親子で3026mの山頂へ。

    「やったね!」

    その瞬間は、本当に嬉しかった。

    でも…。

    息子の本領発揮はここからだった。

    下りになった途端、

    「待ってーー!!」

    私が叫ぶほどのスピードで歩いていく。

    さっきまで「疲れた」を100回くらい言っていた人はどこへ?

    そして最後の大雪渓。

    「もう一回滑る!」

    勢いよくスタート。

    …したのはいい。

    止まらない。

    「止まらなーーーーい!!」

    本人は楽しそう。

    私は顔面蒼白。

    そのまま一直線に向かった先には、

    こぶスキーを楽しんでいるスキーヤーたち。

    「すみませーーーーん!!」

    心の中で何度叫んだかわからない。

    幸い、大きな事故にはならず、
    周りの方も笑ってくださった。

    私は寿命が縮んだけど。

    帰り道、息子に聞いた。

    「今日、一番楽しかったことは?」

    「雪!!」

    即答だった。

    山頂じゃないんかい(笑)。

    でも、その答えが息子らしかった。

    私は「3026m登頂」というゴールを見て歩いていた。

    でも息子は違う。

    雪があれば雪で遊ぶ。

    疲れたら休む。

    また楽しいことがあれば笑う。

    ただ、その瞬間を全力で楽しんでいた。

    同じ道を歩いたのに、

    見ていた景色は少し違っていた。

    親は山頂を目指し、

    子どもは”楽しい”を目指していた。

    だから子どもとの登山は、思いどおりにはいかない。

    でも、思いどおりにいかないからこそ、

    こんなにも面白い。

    3026mの景色も忘れられない。

    でも私が一番思い出すのは、

    雪の上をケラケラ笑いながら滑り、

    最後には止まれずスキー集団へ突っ込んでいった息子の後ろ姿だ。

     
     
    40代会社員、 予備自衛官、二児の母。 ランニング、キャンプ、登山が生きる源。 家族の病気をきっかけに、「食べること」「生きること」「当たり前の日常」の尊さを考えるように。慌ただしくて、笑えて、ときどき泣ける、そんな40代のリアルな毎日ブログ。 簿記3級 | FP3級

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