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ドアtoドア、驚異の秒居堎所のなかった27æ­³OL、船乗りになりたす①

    朝時分。
    私は毎朝、髪をずかし、化粧をしお家を出る。
    敎ったずころで向かう先は、営業成瞟最䞋䜍の職堎だ。
    満員電車に揺られ駅から早歩きで出瀟し、そしお朝瀌。

    これが平日のルヌティン。私はこの繰り返しから抜け出せない。
    倉わりたいけど倉われない。もっずもな蚀い蚳ばかりが頭に浮かぶ。
    たぶん電車の䞭はそういった人で満たされおいお、同窓䌚で語られる近況は、仕事や家庭の愚痎ばかりなのだろう。

    䞀歩を螏み出せないのは昔から倉わらない。

    近くの高校に進孊した私は、絵画コンクヌルで金賞受賞し錻を高くしおいた。
    あたり喋ったこずのない同玚生たちからちやほやされ浮かれた勢いで藝倧を受隓したが芋事に倱敗。
    なぜかっお
    そりゃ、あのコンクヌルは田舎町の圹堎で行われた小さなものだったからに違いない。
    浪人しお予備校に通うこずを芪は蚱しおくれたが、初めお盎面した壁の倧きさに怖気぀き、逃げるように絵筆を抌し入れに仕舞い蟌んだ。
    「ピカ゜みたいだな」
    ず、おじいちゃんに苊し玛れのコメントをさせなくお枈む。
    そう自分に蚀い聞かせながら。だっおラッセンのほうが奜きなんだもん。

    そしお今、ルヌティンに固められた職堎での朝瀌が終わり営業車の軜バンに乗り蟌み町を駆けたわる。
    むンタヌホンを鳎らしおも、垰っおくる冷たい声は、゚ントランスや門扉を通るこずすら拒むかのよう。
    お願いだから開けおおくれ。䞃匹の子ダギだっお私を拒吊するだろう。
    どこに隠れようず子ダギを芋぀け出し契玄を亀わさせる。
    そんなこず出来るわけもないし、そもそも私は、その人が本圓に欲しいず思うものを届けたい。
    車内、䞀人で食べる昌ご飯はどれを食べおも同じ味がする。
    軜バンのシフトレバヌにコンビニ袋を匕っかけ、冷えたおにぎりを五口で食べ終えた。
    これは昌䌑みじゃなく、ただ次の蚪問先たでの移動時間だ。
    むンセンティブずいう蚀葉にお尻を叩かれたっおオオカミにもなれない私は䞀䜓䜕者なんだろう。
    売れない営業に昌䌑みなんおないんだ。

    事務所に垰るず資本䞻矩を具珟化したホワむトボヌドが埅っおいる。
    同期で入った高橋君のグラフだけ、毎月ちゃんず䌞びる。
    氎でもやっおるんだろうか。
    お願いだから、私のグラフを高橋君ず暪䞊びにしないでほしい。
    玙タバコの匂いがしみ぀いおいる所長は高橋君に、
    「来月䞻任いけるぞ」ず蚀っおいた。
    その぀いでに、
    「䞉吉さん、日報あずで出しずいお」
    遠回しに、「数字も取らずに䜕やっおたんだ。」ず聞こえおくる。
    期埅されない人間は、叱られる暩利すらない。
    ハラスメント防止の䞀環で所長は私に数字のこずは盎接泚意しおこない。
    だが、高橋君ず私の扱いをみれば䞀目瞭然だ。
    ここの䌚瀟に私の居堎所は䞀畳もない気がする。
    胡麻をするわけではないが、せめおもの居堎所を確保しようず、コヌヒヌを䞊叞の奜みに合わせお淹れ、差し入れる。
    い぀かこの䞀畳のスペヌスは高玚なコヌヒヌメヌカヌに奪われるかもしれないずいう恐怖が、私を動かしおいる。
    味じゃなく、気が利くずころを芋おほしい。
    いたや私は高橋君じゃなくおコヌヒヌメヌカヌずの戊いだ。
    コヌヒヌメヌカヌに負けじず、奜みの味だけではなく、その人が飲みたいタむミングたでもメモを取る。
    少しでも呚りの圹に立ちたい気持ちがあるが、これじゃただのお茶係じゃん、、。

    もちろん所長にはコヌヒヌを出さないよ。
    だっお私はお茶係以前に人間なのだ。

    満員電車に揺られ家に着くのは時すぎ。
    ドアtoドアで考えるず時間、、
    自炊に時間を割く暇などなく、割匕された匁圓が私の身䜓を䜜っおいる。

    土曜は粟気を逊い日曜は次の日に背を向けるよう家に匕きこもる。
    ベッドから起き䞊がれずにSNSをサヌフィンするず眩しい光景が私の顔を照らす。
    海倖旅行に結婚、出産、そしお数倚のカフェショット。
    Kの郚屋、独りでリットル円のペットボトルコヌヒヌをいただく私はSNSにも茝ける堎所がない。

    䌑みの日は母ずAIずしか喋らない。
    『私の茝ける堎所』『歳 女 スキルなし』
    なんでも答えおくれるAIにもたれかかるかのように無理難題を投げおみた。
    AIは私を肯定し、母は心配をする。
    もっず䜓重を乗せおもたれかかっおしたう。
    海倖旅行に行きたいだずか、孊生時代は絵を描いた、などなんでも話した。

    『画家』『䞖界を巡る専門職』『孀独な衚珟者』『海技士』

    ラッセンはマグロじゃなくおむルカだよ。
    ず思い぀぀『海技士』に぀いおの䌚話を広げた。
    ベッドに暪になり3時間ほど経った頃、たばゆい海面反射に目を现め、朮颚を党身に济びおいた。
    そこに行きたい。実際に海で働きたい。
    埌悔したっおかたわない。

    コヌヒヌメヌカヌずの戊いが終わるなら。
    私を必芁ずしおくれるなら。

    毎晩、海技士に぀いお調べた。
    私が知らないだけで、日本の生掻を支えおいるのは船ず蚀っおも過蚀じゃなかった。
    船に乗るず日本を支えられる私にそんなこずが可胜に、、
    ただ芋ぬ自分の将来像に照れる。

    ネットの求人に
    「未経隓歓迎甲板員募集」
    ほう。

    「月絊 䞇〜䞇円」
    ほう

    今の䌚瀟なんお䞇だったのに、、
    さすがに玙タバコの匂いがしおくる。

    「月絊䞇」

    某ファストフヌド店ではMサむズが䞀番売れるらしい。
    埡倚分に挏れず、ここに決めた。

    曞類で萜ずされおも萜ち蟌たないし、仕方がないこずだ。
    ず膚らむ劄想に蚀い聞かせながら、䌑日の朝䞀、蚌明写真を撮りに行った。
    志望動機は圓たり障りのないこずを曞くこずしかできなかった。
    動機も資栌も、なにも歊噚がなく、あるのは郜合よく祈る信仰心だけ。

    倉わらぬ日曜日を挟み、い぀ものルヌティンをこなしおいく。
    ただ䞀぀い぀もず違うこずが起きた。
    携垯にから始たる着信。
    はっ、船䌚瀟だ。
    久しぶりの就職掻動で耐性がなくなっおおり、震える手ず携垯を前に深呌吞。

    「䞉吉さんですか。応募の件で――」
    「面接、䞀回来おもらえたす」

    ぜかんず口が開いたたた、東京行きの新幹線を予玄した。

    面接時間前に船䌚瀟の近くに぀き、そのビルの倧きさに気圧されそうになるも、有絊を日䜿っおきた私は足の裏に力をこめる。
    カフェでコヌヒヌだけを頌みAIず準備しおきた質疑応答䞀芧に目を通すも、゜ヌサヌずカップの震え合う音のせいで集䞭できない。

    郜䌚の゚レベヌタヌは早い。
    慌おお、『぀いたら䜕おいうんだっけ。』ず質問をAIに投げかける間もなく、フワッずした。
    到着した合図なのか、それずも地に足が぀いおいないお告げなのか。

    フロアに぀くず、嫌いなむンタヌホンが珟れ、すでに『䞍採甚』の文字が芋えおくる。
    さっき行ったばかりのトむレに再び行きたくなるが、長い針はを指しおいた。
    人差し指に力を蟌めワンオクタヌブ高い声で挚拶をした。

    ガラスドアの向こうから、カヌドを持った人が笑顔で近づいおくる。

    「入っお入っお」
    い぀もずは真逆の察応に少々戞惑いながら、䌚議宀Dぞ案内され早速面接が始たった。

    面接官は物腰柔らかそうな物蚀いで
    「ロヌプ結べる」

    「觊ったこずありたせん」

    「船、乗ったこずある」

    「琵琶湖でなら、、」

    面接官は口を䞀文字にした。
    船ず蚀っおも倧きさが違ったそう、、
    営業をやっおいた頃ず同じだ。
    あ、この空気、ダメなや぀だ。

    「い぀から乗れる」

    私はあいた口を閉じられなかった。
    ずいうこずは、ずいうこずだよね
    準備しおいなかった質問に戞惑い
    「今の䌚瀟の匕継ぎが1か月ほどで終わるず思うのでそれ以降ならい぀でも、、」
    匕継ぎなんお営業成瞟最䞋䜍の私にはないのに、぀いか月ず蚀っおしたった。

    必芁ずされるっお、もっず嬉しいものだず思っおいた。
    採甚されたら飛び跳ねるかもしれないず思っおた。
    なのに胞の奥に広がったのは、広い海ぞのたじろぎ。

    船は私をすぐに求めおくれた。


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