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Photo byfuten55

とんだエスカルゴ

    空原 ゆに

    今から20年近く前、秋が深まったころ。
    ある日の夕方、私は洋風居酒屋にいた。

    友人が企画した3対3の合コンに欠員が出たため、召集されたのだ。
    普段は積極的に合コンに参加しない私だが、友人が後日ケーキをおごってくれるというので、参加することにした。

    洋風居酒屋は、男性たちのセレクト。
    料理はアラカルトだったので、男性陣が気を利かせて注文してくれた。

    初対面ながらもお酒の力で徐々に打ち解け、会話も弾みだしたころ。

    「お待たせしました」

    テーブルに運ばれてきたのは、エスカルゴ。
    本物を見たのは、この時が初めてだった。

    (どうやって食べるんだろう)

    巻貝と言えば、サザエぐらいしか食べたことがなかった。
    フォークやナイフを使った食べ方が分からず戸惑う。

    すると、困った様子の私に、右隣の男性Aさんが親切に食べ方を教えてくれた。
    Aさんは、フォークとナイフを巧みに使って、殻から身を取り出す。

    私も真似して、フォークとナイフで身を取り出そうとした。

    すると、あろうことか、私はナイフでエスカルゴを飛ばしてしまった。
    猛スピードのエスカルゴは、勢いよく右隣のAさんの左袖に着地した。
    そして、エスカルゴの中のバターが流れ出て、Aさんのジャケットを汚してしまった。

    「ごめんなさい!本当に申し訳ありません!クリーニング代、払います!」

    親切に教えてくれたのに、私に服を汚されてしまったAさんに申し訳なくて、誠心誠意あやまった。

    しかし、この日の私はついていなかった。
    頭を下げた拍子にエスカルゴの皿に私の手が当たり、油がはねて私のスカートについてしまった。

    ますます慌てる私。
    楽しい場を台無しにしてしまったと焦ってしまう。
    私の服のシミも気になるが、とにかく今はAさんに全力で謝らなければ。

    「大丈夫。こちらこそ食べづらいものを選んで、申し訳なかったです」

    Aさんはそう言ってくれたが、私はとにかく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。隣に座るAさんの袖口の油ジミと、私のスカートの油ジミを見るたびに、心が痛んだ。
    そして、消極的だったとはいえ、合コンの席でとんでもないドジをしてしまった自分を呪い、落ち込んだ。

    こうやって、私にとんでもない目に遭わされたAさん。
    この合コンで狙ってた女性と後日付き合い、数年後結婚したという。

    Aさんにとっては、エスカルゴなんてもはや記憶の彼方だろう。

    しかし、私には忘れられない思い出となった。
















    なぜなら、Aさんは、今の私の夫なのだから。

    あのエスカルゴ、とんだエスカルゴだった。














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    そらはらゆに。エッセイを書いて生きる文筆家。 ほっこりエッセイ|旅行記|短編小説|読書|喋りすぎる口下手|向上心で突き抜ける|2人の息子の育児に奮闘|感謝を忘れない|つけ麺しか勝たん|好きな色は空色|隠せないジュビロ磐田愛|イメージは抹茶|霊長類最弱女子|

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