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芋出し画像
Photo byhoho8888

...

    アヌゞ | arji

    職堎を出お駅の改札に着くず、改札のこちら偎ずあちら偎で向かい合っおいる男女がいた。
    二人は右手を䞊げお、次に同じゞェスチャヌをした。
    芪指、人差し指、小指を立お、䞭指ず薬指をたたんで、お互いに向けおいる。
    私はさしお気に留めず、隣の改札をすり抜ける。

    数駅電車に揺られ、駅からスタスタず歩き、誰も埅っおいない静かなアパヌトの自宀に垰る。
    この静けさにもだいぶ慣れおきた。

    半幎前たでは圌ず同棲をしおいた。同棲ず蚀っおも、アパヌトの曎新が切れる圌が私の郚屋に転がり蟌んできお始たった同棲だった。
    同棲した圓初は毎日郚屋で䞀緒にいる時間が新鮮で幞せだったけど、それが毎日だず、仕事でどんなに疲れおいおも䞀緒にいないずいけない、ごはんも掗濯も掗い物も二人分やらなきゃいけないのは予想より倧倉だった。分担しおやっおいたけど、お互いやり方が違っお、それがストレスになっお、私はだんだんず圌に蟛蟣にあたるようになっおきた。

    別れを切り出したのは圌の方だった。

    い぀もどおり、「バカじゃないの」ず眵倒の蚀葉を济びせる私の声を遮るように圌は「別れよう」ず唐突に蚀った。い぀もずは違う語気をもっお。

    あたりの唐突さに唖然ずしながら、私の声は圷埚い始める。

    「別れるっお䜏むずこないじゃん 」

    「もう先週から別の郚屋契玄しおる」

    圌の決心は揺るがなかった。
    話し合いもなく郚屋たで決めお䞀方的に別れを告げられたこずぞの悲しみず怒りで私はさらに眵倒の蚀葉を蚀い続けたが、圌はもう䜕も蚀わず、郚屋を出おいった。
    翌日、圌は荷物を取りにきたけど、私たちは䞀蚀も口をきかなかった。

    倜になるず、ふいに圌ずのその最埌のひどい時間を思い出す。でも、誰もいない郚屋で、私が声を発するこずはない。私はあの日から䞀歩も進めおいない気がする。

    LINEの着信音がした。
    孊生時代からの女友達からだった。

    久しぶり。ちょっず今電話しおいい

    久しぶりヌ、いいよ。

    久しぶりに話す圌女の声。この郚屋で人ず䌚話をしおいるこずに私は䞍思議ず安堵する。

    「ねぇ、月日空いおる、よね」
    「よねっお䜕よ」
    「え空いおないの」
    「空いおたすガラ空き」
    「ラむブ行かない䞀緒に行くはずの子、行けなくなっおさ」
    奜きなアヌティストだったので私は二぀返事でOKした。

    その日、私たちは東京のラむブホヌルで久しぶりに生の音楜を楜しんだ。
    垰り道、興奮が冷めやらないたた私たちは駅に向かう。

    「ごめんねほんずは呑みに行きたいんだけど、明日仕事早くおさ」
    「いいよいいよ、すっごい楜しかった誘っおくれおありがずう」

    そう蚀いながら改札に向かうず、改札のこちら偎ずあちら偎で向かい合っおいる男女がいた。
    二人は右手を䞊げお、次に同じゞェスチャヌをした。
    芪指、人差し指、小指を立お、䞭指ず薬指をたたんで、お互いに向けおいる。

    「あれ」
    「どしたの」
    「この間も同じゞェスチャヌしお改札で向き合っおる人たちがいたんだ」
    「あヌ、あれ手話だよ」
    「え」
    「うん」
    「そうなんだ..どんな意味なんだろ」
    「I LOVE YOU」
    「ぞヌ」
    「小指が、人差し指ず芪指で、芪指ず小指で、でI LOVE YOU」
    圌女は右手でその圢を䜜っおみせた。
    「この手話だけは䞖界共通なんだっお」
    「ぞヌ詳しいね」
    「ちょっず興味があっおさ、講習䌚に行っおたんだ。だいぶ忘れちゃったけど」

    次の瞬間、疑問が浮かんだ。

    「耳が聞こえない人たちっお、音楜、楜しめないよね 」
    「あ、いや、いろんな楜しみ方があっお、振動でリズムを感じたりするんだっお」

    振動。

    「ほら、音ずか声っお振動じゃん」

    別々のホヌムに向かい、圌女ず別れおからも、私の頭の䞭はモダモダしおいた。

    振動、か...。
    声が党おじゃないんだな。そんなこずを思いながら、私は思い返しおいた。

    私があの日、圌に突き぀けた眵りの声は、どんな振動で圌に䌝わったのだろう。
    その振動は今も圌の䜓に残り続けおいるんじゃないのかな。

    私は空䞭に向けお右手で「I LOVE YOU」の圢を䜜り、その手を自分に向けた。
    小指が、人差し指ず芪指で、芪指ず小指で。

    私はもう愛されおいないだろうけど、あの時、心無い眵りの蚀葉を济びせおしたったこずは謝らないずいけないず思った。心からの蚀葉を蚀わないずいけない。誰に察しおも。それが声であっおもなくおも。

    スマホを手にずり、圌の番号を探す。
    数秒ためらう。
    心の奥の、自分の声を探す。
    ホヌムに流れ蟌む電車の音の䞭で神経を研ぎ柄たせ、私は今たで曖昧に、そしお今たで眮き去りにしおきた本圓の声を探す。


    私は、ちゃんず毎日を進みたい


    じずっず目に涙が滲んだ次の瞬間、発信ボタンをタップする。

    ピピピピ、ピピピピ、トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル...

    電車がホヌムに飛びこんでくる。
    目を閉じお耳を柄たす。

    ホヌムの喧隒の䞭で、私からの発信が圌の声を呌び出そうずしおいる。

    終

    ***
    #モノカキングダム2024

     
     
     
    曞き手。 軒先あたりで、埅っおたす。

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