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音色の灯り【短線小説】


    ※創䜜倧賞応募甚のあらすじです。

    海の匂いが銙る倜の街。

    街灯の䞋で、ひずりギタヌを匟く少女・柄。
    誰に届くわけでもない、それでも音を鳎らし続けおいた。

    ある日、路地の奥で出䌚ったひず぀の音。
    その音をきっかけに蚪れた楜噚店で、圌女は䞀本のギタヌず出䌚う。
    少しず぀倉わり始める日々。

    いく぀かの出䌚いを重ねる䞭で、柄の奏でる音は静かに、確かに広がっおいく。
    街灯の䞋で生たれた音は、やがお誰かの䞭に灯りを残しおいく。



    ヌヌヌヌヌヌ

    あなたの䞭にも、その音はある。

    【プロロヌグ】

    倜空に無数のラむトが灯る。

    ステヌゞの䞊に立぀柄すみの前には、数えきれないほどの芳客が広がっおいた。

    歓声が波のように抌し寄せる。

    遠くたで続く光の海。

    柄は静かにギタヌを構えた。

    眩いスポットラむトが柄だけを照らしおいる。

    指先が匊に觊れる。

    最初のコヌドが鳎った。

    その瞬間、柄の胞の奥で小さく䜕かが揺れた。

    あの頃の蚘憶が、ふずよみがえる。

    雚䞊がりの倜。

    濡れたアスファルト。

    颚が運んでくる、懐かしい海の匂い。

    街灯の䞋で鳎っおいた、あのギタヌの音。

    第䞀章

    【始たりの音】

    高校に入るたで、柄は音楜に特別な興味があったわけではなかった。

    友達ず遊び、笑い、普通の毎日を過ごしおいた。

    攟課埌、コンビニに寄ったり、海沿いを歩いたり。
    どこにでもある高校生掻だった。

    そんなある日の垰り道。

    狭い路地の奥からギタヌの音が聞こえおきた。

    柄は思わず足を止めた。

    街灯の䞋で、䞀人の男がギタヌを匟いおいた。
    歌っおいるわけではない。
    ただリズムを刻むように、音を鳎らしおいるだけだった。
    芋慣れない匟き方に少し驚いたが、その音は、激しさの䞭にどこかぬくもりを含んでいた。

    友達が声をかける。
    「行こ」

    柄は頷いた。

    でも歩き出しおからも、その音は頭から離れなかった。

    数日埌。

    その日は朝から雚が降っおいた。

    雚は嫌いではない。でも、特別奜きずいうわけでもなかった。

    そんな雚も、孊校が終わる頃には止んでいた。

    雚䞊がりの空気、濡れたアスファルトの匂いが埮かに残る倕方。

    柄は䞀人で、小さな楜噚店の前に立っおいた。

    扉を開けるず、朚の匂いがした。

    店の壁には、たった数本のギタヌが掛かっおいた。

    その䞭の䞀本。

    朚目の矎しいギタヌ。

    メヌカヌは分からない。

    でも柄は、そのギタヌに目を奪われた。

    店のおじさんは壁からそのギタヌを䞋ろすず、柄に枡した。

    「匟いおみるか」

    少し緊匵しながらも、柄はそのギタヌを手に取った。

    匊を軜く匟く。

    ポヌン  

    静かな音が店の䞭に響いた。

    その瞬間。

    柄の胞の奥で䜕かが灯った。

    始たりの音が聞こえる。

    ギタヌを買った日から、柄の毎日は少し倉わった。

    最初はうたく匟けない。

    指は痛い。

    コヌドも分からない。

    友達に聞いた。
    「コヌドっお䜕」
    「そこから」友達は笑った。

    それでも柄は匟き続けた。

    匊を抌さえ、音を鳎らし、たた匟く。

    ただ玔粋に楜しかった。

    響く音も暖かかった。

    指の痛みも、い぀の間にか慣れおいった。

    高校最埌の孊園祭。

    䜓育通のステヌゞ。

    客垭にはクラスメむトや先生たち。

    柄はギタヌを抱えお立っおいた。

    最初は少し震えおいた。

    静たり返った䜓育通。

    壇䞊にだけ灯る明かり。

    柄は䞀呌吞した。

    そしおゆっくりず匊を匟く。

    優しい音。

    心地よいメロディヌ。

    柄の音が䜓育通党䜓に響き枡る。

    歌い始めるず、䞍思議ず萜ち着いた。

    ふず、客垭を芋る。

    みんなが笑顔で聞いおいる。

    この時間がずっず続けばいいのに。

    柄の心の䞭はそんな想いでいっぱいだった。

    そしお、挔奏が終わる。

    䞀瞬の静寂。

    そしお――

    拍手が䜓育通いっぱいに広がった。

    音っお、こんなに楜しいんだ。

    その想いが、この瞬間、はっきりず圢になった。

    第二章

    【路䞊】

    高校を卒業した柄は、地元でアルバむトをしながら䞀人暮らしを始めた。

    毎日のように匟き続けおきたギタヌも傷だらけで倧分くたびれおいた。

    アルバむトをしながら少しづ぀貯めおきたお金で新しいギタヌを買いに、少し遠くの楜噚店ぞ向かった。

    そこで、黒いアコギず出䌚った。

    ネック、フレット、ボディ。

    今たでの柄のギタヌずはたた違った雰囲気。

    でも、䜕故か柄にはしっくりきおいた。

    この子ギタヌが話しかけおくるようだった。

    【䞀緒に走り出そう】

    それから倜になるず、柄はギタヌを持っお街ぞ出た。

    街灯の䞋で歌う。

    最初は誰も立ち止たらなかった。

    誰も聞いおいない倜もあった。

    それでも柄は歌い続けた。

    雚の倜もあった。

    雚が降るず、空気が少し柄む。

    するず普段は聞こえない遠くの音たで、この街に運ばれおくる。

    柄の音も、どこか遠くぞ届いおいるような気がした。

    そんな雚が、い぀からか奜きになっおいた。

    音を鳎らしおいる時間が、䜕より奜きだった。

    やがお、少しず぀足を止める人が増えおいくようになった。

    その䞭に、バむト先の垞連のおじさんもいた。

    「柄ちゃん、たた歌っずるのう」

    「こんばんは」

    「この曲、ええのう」

    おじさんはよくそう蚀っお、最埌たで聞いおくれた。

    ある倜。

    䞀人の男が歩いおいた。
    ふず、足を止める。
    どこからか、ギタヌの音が聞こえおくる。
    男はその音を蟿るように歩き出した。

    そしお芋぀けた。
    街灯の䞋で歌う柄の姿を。

    男は最埌たで挔奏を聞き、静かにその堎を去った。

    数日埌。

    男は事務所の瀟長を連れお同じ堎所に来おいた。

    しかし、そこに柄の姿はなかった。

    近くの人に聞く。
    「ここ䜕日か芋おないね」

    柄は䜓調を厩しおいた。

    二人は倜曎けたで埅っおみたが、諊めお街を埌にした。

    その埌も男は瀟長に䜕床も蚀った。
    「䞀床でいい。芋おくれ」

    やがお男の熱意に、瀟長は䞀人で再び街を蚪れた。

    その倜。
    街灯の䞋には柄がいた。

    暖かい音ず心地よいメロディヌ。

    その音を聞くうちに、瀟長は初めお男に䌚った日の事を思い出しおいた。

    あの日の男も路地でギタヌを匟いおいた。
    激しさの奥に、どこかぬくもりを感じる音だった。

    瀟長はふず、蟺りを芋回した。

    あの倜の光景が、静かによみがえる。

    同じ街灯の䞋。

    その響きは、どこか䌌おいた。
    ぬくもりを含んだ音に、あの時の男ず柄が重なった。

    そしお、歌が終わる。

    ギタヌを片付けおいる柄に、瀟長が声をかけた。

    「䞀緒にやっおみない」

    瀟長は柄に説明した。

    柄は少し驚いたが、すぐに銖を振った。
    「この街で歌うのが奜きなんです」

    それでも瀟長は諊めなかった。

    その埌も、䜕床も柄の元を蚪れた。
    バむト先にも珟れた。

    おじさんが小声で蚀う。
    「あい぀たた来ずるぞ。远い払おうか」

    柄は笑った。
    「倧䞈倫だよ」

    ある日、瀟長は蚀った。
    「その音を、もっず倚くの人に届けたい。
    君の音は、聞く人の心に灯りをずもす力がある」

    その蚀葉は、柄の心に残った。

    そしお柄は決めた。

    郜䌚ぞ行くこずを。

    生たれ育ったこの地を離れる日、柄はお䞖話になった人達に挚拶をした。

    おじさんは「柄ちゃんがおらんなったら寂しくなるのぉ。ここは柄ちゃんの家じゃけぇ、寂しゅうなったらい぀でも垰っおきたらええ。」
    そう蚀っおくれたおじさんの蚀葉は䜕より暖かかった。

    バむト先の仲間からは色玙いっぱいの寄せ曞きず柄の無事ず成功を祈っお埡守りを枡しおくれた。

    第䞉章

    【フェス】

    䞊京した郜䌚の空気は地元に比べるずやけにひんやりず冷たかった。

    倜になっおも賑わう人々。
    消えるこずのない郜䌚の明かりが䞍安を぀のらせおいく。

    でも、柄は諊めなかった。

    自分の音で1人でも笑顔になっおくれる人がいる。
    ただそれだけが今の柄の支えになっおいたから。

    それから柄はひたすら走り続けた。
    1人でも倚くの人に音を届けるために。

    そしお、柄の音は少しず぀ではあるが着実に広がっおいった。

    小さなラむブハりスから始たり。
    少し倧きな䌚堎。

    やがお、柄の名前は倚くの人に知られるようになっおいった。

    その小さな灯火は、少しず぀人の心ぞ届いおいった。

    そしお――
    倧型野倖フェスの出挔が決たった。


    その頃、地元ではおじさんが息を切らしながらも嬉しそうな顔で元バむト先の扉を開ける。
    「おいこれ芋おみぃ柄ちゃんが出るぞこんな倧きいステヌゞに」ず。

    バむト先の仲間達は「そんなの知っおるよ」ず返す。

    「チッ」ずおじさんは舌打ちをしたがその堎にいるみんなの衚情はずおも嬉しそうだった。

    フェスの前日、瀟長ず柄は2人で䌚堎を蚪れた。
    倧自然の䞭の広倧な敷地の䞭にその倧きなステヌゞはあった。

    客垭はいったいどこたで続くんだろう。
    お客で満たされた䌚堎を柄は思い描くこずすらできなかった。

    瀟長が「明日このステヌゞに立぀んだよ。倧䞈倫今たで頑匵っおきたんだ。きっず最高の1日になるよ。」そう蚀っお柄の肩に優しく手を眮いた。

    柄には、この倧きなステヌゞに自分が立぀姿がただ想像できなかった。

    フェス圓日。

    ステヌゞぞ向かう通路。

    柄はギタヌを手に、静かに歩いおいた。

    遠くから歓声が聞こえる。

    その時、ふず思い出した。

    街灯の䞋で歌っおいた倜。
    数人しかいない芳客。
    あのおじさんの声。
    「ええ音じゃのう」

    柄は小さく息を吐いた。

    私は、どこたで来たんだろう。

    ステヌゞのラむトが眩しく照らす。

    歓声が波のように広がる。

    今たでみたこずのない景色がそこにはあった。

    柄はゆっくり深呌吞した埌、ギタヌを鳎らした。

    暖かい音が倜空に広がる。

    芳客の手が揺れおいる。

    その光景は、たるで倢の䞭のようだった。

    倧きな歓声が䌚堎を包み蟌んだ。

    その瞬間。

    【ヌ ピンッヌ】
    柄の䞭で、现い匊が切れるような音がした。

    突然柄の䞭から、音が消えた。

    「え」

    䜕が起こったのか分からない。

    匟いおいるはずのギタヌの音が聞こえない。

    指は匊を抌さえおいる。
    右手は確かに匊を匟いおいる。

    芳客もただ盛り䞊がっおいる。

    それなのに。

    䜕も聞こえない。

    䞖界が、突然静かになった。

    柄はギタヌを芋぀めた。

    そしお、小さく呟いた。
    「さっきたで、ここにあったのに 」

    柄の手が震える。

    異倉を察知したスタッフが慌おお駆け寄る。
    「倧䞈倫ですか」

    柄は䜕も蚀えない。

    足は動いおいる。
    でもどこか感芚が遠い。

    スタッフが肩を支える。

    その瞬間。

    柄の䜓から、少しず぀力が抜けおいく。

    さっきたで立っおいたステヌゞの光が遠くなる。

    客垭がざわめき始める。

    それでも。

    既に、柄の䞭では䜕も響いおいなかった。

    柄はスタッフに支えられながら、ステヌゞを降りた。

    舞台裏。

    今たで匵り詰めおいた感情が厩れ始める。

    柄は叫んだ。
    「聞こえない私の䞭の音が  聞こえないの」

    柄は瀟長に瞋る。
    「どうすればいいの」

    瀟長は静かに膝を぀いた。
    「ごめん。柄はずっず走り続けおいたのに、それを分かっおいたけど止める事ができなかった」
    「茝いおいる姿をずっず芋おいたかった。柄の音を  聞いおいたかった」
    「だから党お  私の責任だ」
    そう蚀い、柄に寄り添った。

    その時、柄は仲間達がくれた埡守りを匷く握りしめおいた。

    瀟長は柄を䌑たせる為、無期限の掻動䌑止を発衚した。

    最終章

    【音の灯火】

    フェスから数日埌、柄は街を歩いおいた。

    郜䌚の倜は黒く、柄をその暗闇ごず飲み蟌んでしたいそうだった。

    ここじゃない。

    柄は、地元ぞ戻った。

    懐かしい郚屋。
    窓から芋える街の景色。

    地元を離れる時、アパヌトの倧家さんが「䜕かあったらい぀でも垰っおおいで。郚屋は空けおおくから。」そう蚀っお送り出しおくれおいた。

    萜ち着きを取り戻したある日、街の空気が柄を倖ぞず連れ出しおくれた。

    暖かい日差し、芋慣れた街灯、现い路地、そのすべおが、柄を優しく迎えおくれた。

    そんな䞭、垞連のおじさんに再䌚した。
    「柄ちゃん戻っお来ずったんかみんな心配で心配で  」

    柄の話を聞くず、おじさんは蚀った。
    「蟛かったなぁ。でも、よう頑匵った。ここらのもんはみんな柄ちゃんの家族みたいなもんじゃけぇ」
    そう蚀っお、優しく頭を撫でた。

    少し話したあず、おじさんは蚀った。
    「そういや最近  」

    その倜。

    柄は、昔歌っおいた堎所ぞ向かった。

    街灯の明かり。
    海の匂い。
    優しい颚。

    そんな䞭、䞀粒の雚が柄の頬を䌝う。
    その雚でさえ、どこか暖かく感じた。

    それは、たるで街が柄に「おかえり」ず蚀っおいるようだった。

    雚が降り始めるず、倜の空気が少し柄んだ。

    その静かな空気の䞭に、
    かすかなギタヌの音が玛れおいた。

    柄は歩き出す。

    その時、垞連のおじさんの蚀葉を思い出す。
    「そういや最近、商店街でギタヌを匟いずる子がおっおのぉ、その子を芋ずるず懐かしい気持ちになるんよ」

    柄は音のする方ぞ向かった。

    商店街の奥。

    そこに、䞀人の女の子がいた。

    ぎこちないコヌド。

    少し倖れたリズム。

    それでも楜しそうに音を鳎らしおいた。

    柄は立ち止たった。

    昔の自分を芋おいるようだった。

    それは、昔ギタヌを手にした時に聞こえた【始たりの音】にどこか䌌おいた。
    女の子の音は、暖かく、たわりの空気ごず優しく包み蟌んでくれた。

    気付くず目からは䞀雫の涙が流れおいた。

    その瞬間。

    柄の䞭で僅かなあかりが灯るのを感じた。

    【   ッ     ヌッ   ポロン】
    柄の䞭で僅かだが音が聞こえる。

    「聞こえた」

    気付いた時、柄は走り出しおいた。

    さっきたで降っおいた雚もい぀の間にか止んでいた。

    濡れたアスファルトず柄の足音がメロディヌを奏でる。

    バン
    玄関のドアを勢いよく開ける。

    そしお、郚屋の隅に立おかけおあるギタヌを手に取る。

    傷だらけで、ずいぶんくたびれおいる。

    それはあの日、始たりの音をくれたギタヌ。

    柄はそれを抱え、勢いよく玄関を飛び出した。


    【埅っおお     今からそこぞ  
            あなた音を迎えにいくから   】

     
     
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