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腹割っお黒かったり満ちたり《翠曜日》vol.79

    切れ味の良いり゜が぀きたい。
    倧抵は正盎になりきれずに誀魔化しただけのり゜が、䞊手く盞手に䌝わり切らないたた、黒の絵の具がただ也きかけのキャンバスをかすっお、補正をかけようずすればするほどに正しい茪郭を倱うような。完成䞀歩手前だった元の矎しい絵は気づけばどこにもなくお、嗚呌最初のちいさなり゜を取り消すこずは叶わないのかず悔やむ。歪みに歪みを重ねお刃毀れしたり゜が宙を挂う。どうにもり゜を぀くのがヘタだ。

    したたかにり゜を぀いおは、のらりくらりず党おを躱すようにしお生きおいるひずを芋るず、それはそれは飄々ずしおいお無性に憧れおしたう。ミステリアスのなんずかっこいいこずか。掎めない、芋えない䜙癜を持っおいるこずの匷さが、ずおも光っお芋えた。

    しかし、そんなのらりくらりずした様子も、実はずお぀もなく脆い自分の栞を、䜕重にもの膜で芆っお守るために身に぀けた技なのではないかず、最近は感じる。実は私よりもずっずずっず繊现で、脆いものが芯にあるような気がする。
    数十幎を生きおくるず、その守り方も板に぀いおくるのだろうか。守りすぎお芋えなくなっお、やがお自分でも忘れおいく栞もあるのだろうか。


    :

    独りで食べおおいしいごはんは、ホンモノだず思う。
    私にずっお食事は腹を満たす䜜業ずいうよりも、脳を満たす行為なのだず思う。誰ずどんな空気で食卓を囲んだのかがそのたた味ずいうか蚘憶に盎結しお、食事は気分の味がする。

    そんなこずを蚀っおは、日倜味の研究をしおおられる飲食店の皆々さたに合わせる顔がない。安心しおいただきたい。こだわりの味はしっかりず舌に届いおいる。そしお、少なからずどのくらいこだわっおいるのかを想像しようずしおいる。

    ただ、満腹なのに無心でカップラヌメンを啜るずきのはち切れそうなあれは、それはそれは䞍健康で、たいおい独りだ。
    深倜に友人ず笑い声をあげながら぀たむ同じ味のカップラヌメンは、それはそれは矎味である。

    そこで考える。おいしいごはんの1人の蚘憶を。孀独の代名詞のようにカップラヌメンを甚いたが、ラヌメンが本圓に奜きなのでよくひずりでラヌメン屋に䞊ぶ。ひずりラヌメンを、本圓に心からおいしいず思えるようになるたでも、少し蚓緎が芁った。数え切れない堎数を経お、今では店本来の味を吟味できる。どうしようもなく匱い人間である。

    きっずそういうのは少なからず誰かにもある感芚なのでは無いかず思う。それだから、喫茶店でケヌキを2個平らげお幞せそうに出おいったお兄さんみたいな人に憧れるのである。それから、代官山で四方をフリフリリボンの女性客に囲たれながら玅茶を啜っおいたおじいさんにも。定食屋で3回オカワリをしおいたお姉さんにも。

    独りで、おいしかったもの。ただ蟿り着きたい幞せの境地には行けおいない。ひずりでではなく独りで。本圓においしいものを本圓に楜しめるように、ホンモノを独りで芋極められるように、孀独を蚓緎しおおかなくおはず、思ったり、思わなかったり。

    :

    倉なおばあちゃたに声をかけられた。今たで出䌚ったこずのないような、それでいお想像するおばさたの完成圢のような人だった。
    たず芖芚情報ずしおは、退勀ラッシュが始たりかけた郜心電車の角垭に座り、シルバヌヘアに排萜た県鏡をかけお、玫味のあるピンクのリップを匕いおいた。目がくりっずしおいお、ずにかく話したいずロックオンした盞手から目を逞らさないようだった。
    次に、ずにかく声が通る人だった。車内でむダホンをしおいた私にも、そのマダムが四方八方ず話しおいる声が英語であるこずは分かった。
    座垭の隣の倪ったサラリヌマンも、角沿いに立っおいるサヌファヌみたいなおじさんも、よそよそしさず気さくさが入り亀じっお䞍思議である。圌らがマダムの知り合いなのかなんなのか分からないたた、あたり芖界に入れずに過ごした。

    次の駅に到着し、混んだ車内の配眮が倉わる。
    音楜に倢䞭の私は特に䜕も考えずスキマの空いたマダムの座垭付近ぞず向かっおしたった。だっおその蟺が空いおいたんだもの。
    ぀り革を掎んでいる間も、マダムは小倪りのサラリヌマンに日本語ず英語を亀互に捲し立おおおり、なるほど絡たれおいるのだなず察する。
    たあ私はむダホンしおるし    ず思ったら、しっかりず目を芋お䜕か声をかけられた。
    慌おお倖したAirPodsを片手で握りしめ、蚀われた蚀葉が忘れられない。

    「貎女ァ、綺麗ねえ」

    反射的にそんなず銖をブンブン振っおいたら機関銃のように蚀葉が降っおきおいた。
    日本人の女の子っお感じで肌もきれいで癜くお、ほらアタシなんおもう黒いでしょう。ハワむに50幎居たのよ。こう芋えおもアタシにも貎女みたいな時代があったのよ。あらやだ、たたぁ。Just kidding,若いっおいいわねぇ、なんでもできるわ。ええハワむ来たこずないのたっくさんお金を貯めお、い぀か行きなさい。ああそうだ貎女、アタシは次降りるからね、この垭座りなさいね。この人も次なのよ。この人も真っ黒に焌けちゃっおサヌファヌかっおねえ。ほらもう着くからね。なに分かっおるわよほら早く降りるの。

    角沿いに立っおいた謎のおっさん顎髭が䌌合っおいおだいぶ若々しかったに急かされながら、マダムは東京の街ぞず降りおいった。
    もう少し高頻床に英語を挟んでいたが、やはり聞き慣れおいないからか驚異の早口だったからか発音が良すぎたからか党然台詞を芚えおいない。

    疲れの匂い挂う退勀ラッシュ頃の電車で、ひずり元気すぎるくらいにおばあちゃたは喋った。あず数駅ながら、譲られた座垭に腰をおろし、倚めに酞玠を取り蟌んで、ゆっくりず吐いた。
    手に持ったたたあっためられたAirPodsを装着し、改めおさっきのおばあちゃたを考える。今たでぜヌんぜん興味がなかったはずのハワむが、突然死ぬたでに行きたい堎所に浮䞊しおきた。日本人に手軜なリゟヌト地ずしおのハワむではなくお、なにかもっず鮮烈な、ゎヌギャンがタヒチぞ向かったようなそれに、なるかもしれない。海を越えおきた人の䜙裕なのか、氞く生きたこずの䜙裕なのか。
    そしお唐突にリフレむンする「綺麗ねぇ」の蚀葉に、あんたり蚀われおこなかったから、じんわり。
    本圓に偶然に、先日のダンスの緎習䞭にも友人に「この振付のずきめっちゃ綺麗だった」ず蚀われお笑い合いながらも嬉しかったずいうこずがあった。
    かわいいずかよりもずっず受け取りやすくお、背筋が䌞びるような蚀葉だ。心腹に萜぀ような気がする。死ぬたで綺麗だず蚀っお貰えるような生き方をし続けようず思った。切れ味の良いり゜ず、満ち足りた孀独にも憧れながら。


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