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Photo byfairview_square

世界

     丸いものがあった。


     世界には丸いものしかなかったから、世界の全てだった。生まれることも、なくなることもなく、ただ存在していた。


     ある時、丸いものは思った。


     「ないものがほしい」


     しばらく考えて、思いついた。


    「半分に分かれることにしよう」

     半分になったら、ないものを半分、お互いに持つことになる。


     世界は二つに分かれて、半月型のものが二つできた。左半分は痛みを感じた。初めての感覚だったから驚いて、右半分に聞いた。


    「何かが起きた。つらい」

     

     右半分は答えた。


    「多分同じだ。つらい」

     

     痛みは世界になかったものだった。でも今では両方が持っている。

     二つはもっと自分にないものがほしいと思ったので、さらに分かれることにした。丸いものは、四つになった。また全員が同じ痛みを感じた。


     もっと小さく分かれることにした。そうしたら誰かが持っていて、誰かが持っていないものができるかもしれない。分かれる時にはいつも痛みが伴ったが、分裂は続いた。


     生まれた地点や、時間にズレが生まれたことで、少しずつ違いが生まれるようになった。

     ある時、女と男という大きな違いが生まれた。

     分裂は女のみから発生するようになった。違いが違いを生んで、世界は「なかったもの」で膨らみ続けた。


     気づいた時には、丸いものはあまりにもたくさんになっていた。


    「もう一度丸いものに戻ろう」


     そう提案したものもあったが、別のものが反対した。丸いものは、もう二度と一つになることはできなかった。


     分かれる時の痛みには「さびしさ」という名前が付けられた。

     
     
     
    うつを治療中。ADHDなLGBT。 人生ずっと暗中模索。 詰んでいるようにみえる人生でもアゲアゲに生きていく。 児童書担当の書店員から、現在は横浜の独立系書店「夜逃げ書房」の店主でイラストレーター https://www.yonigeshobo.com

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