「南部せんべいと銀の糸」
『南部煎餅と銀の糸』
日差しの差し込むリビング。
私の楽しみ、10時のおやつの時間。
今日は、紅茶にしようか、コーヒーにしようか、それとも煎茶?
おやつは、スーパーのビスケットから、デパ地下の和菓子まで、いろんな楽しみがある。
私は、棚の中のおやつ箱を開ける。
中には、いただきものの最中や、特売で買ったクッキー、懐かしい駄菓子も混ざっている。
その日その日で、どれを選ぶかがちょっとした楽しみ。
今日は、焙じ茶にしよう。香ばしい香りが、なんだか落ち着く。
ふと、昔のおやつのことを思い出す。
昭和34年ごろ、私が10歳の頃。
おやつといえば、母が買ってきた丸いビスケットや、南部煎餅、かりんとうなどだった。
3人きょうだい。
兄は中学1年生、私は小学5年生そして弟は5歳。
ピーナッツ入りの南部煎餅は甘めで、いつも先に食べてしまう。
残るのは、ごま煎餅。
その日のおやつは、そのごま煎餅に水飴を添えたものだった。
母が赤い丸い缶を持ってきて、割り箸の先でくるくると水飴を巻く。
せんべいの真ん中に、ぽんと置いて、上からもう一枚を重ねてくれた。
ぎゅっと押すと、間から水あめが飛び出さないように慎重に。
あぐっとかんだ「水飴が銀の糸」のようにスーッと伸びた
兄は黙って、手早く自分の分を食べていた。
弟は、口のまわりも手もべたべたにして、にこにこしながら夢中でかじっている。
母は弟の顔を見て「顔中飴だらけ」と笑った。
三人で並んで食べた水飴せんべい。
あのときの甘さと、母の笑顔、せんべいの間から伸びたあの銀の糸。
今でも、心の中でやさしく光っている。
その後、私が母になって、子育ての真っ最中だった頃。
おやつの時間になると、ふとあの南部煎餅を思い出して、子供たちにも食べさせていた。
ピーナッツ入り、ごま入り、時には水飴を挟んで。
子供たちが「水飴が伸びる」といって「びよーん」と言っていたのを、今でも覚えている。
安心できる材料で、飾りすぎない味。
そんなシンプルなおやつが、いつまでも心に残るんだと思う。
おいしいだけじゃなくて、気持ちまでほっとする。
それが、母から教わったものだった。
今、スーパーに行くと、きれいなパッケージに入った、小さくて加工されたお菓子が並んでいる。
物価高の今、母と子のやりとりが聞こえてくるようで、
「もう少し安くて、おいしいおやつが買えるといいな」と思いながら、お菓子コーナに目を向けていた。2024,12。
読んでいただきありがとうございます。3年ほど前から文章を書き始めてました。長年の生活の中での出来事 出会い 感じてたことを言葉に起こす作業とても難しく時間をかけて そして私の言葉でを心がけてます。
AIの進歩がとても速く、性能良く楽しみの範囲が広がってますと同時にわたしの軸を持って文章を書きたいと感じてます。
この南部せんべいは大事なエッセイの一つです。「水飴が銀の糸」は突然、降ってきた言葉です。
