
短編:【摂理への抵抗、または悪足掻き。】
「いい?10秒前から!」
コクリと頷く息子。
「行くよ!10、9、8…」
息子は立ち上がり、両手をグーに握り、カウントに合わせて首を振る。
「3!2!1!」
0のタイミングでジャンプする。
「ハッピーニューイヤー!」
私は家族に新年の挨拶をする。
「ね、パパ見た!今年入って、ボク地球上にいなかったよ!」
私は妻と顔を見合わせ、微笑む。
「ね、パパ!ママ!」
妻の目には涙が滲んでいる。
「パパ?ママ?」
私は妻の肩を抱きしめ、優しく声をかける。
「去年はあの子の喪中で静かに過ごしたんだから…今年はちゃんと家族揃って新年を祝おう…」
「え、パパ…ママ…」
部屋の隅にある笑う子供の写真。
「そうね。あの子、年越しはいつも、ジャンプして、地球上にいないってはしゃいで…」
妻は涙で言葉に詰まる。
「地球上に、いない…」
「たとえここにいなくたって、私たちの心にはいつだって一緒…」
「そうさ、ここにいるよ」
私は自分の胸にそっと手を置く。
「ハッピーニューイヤー」
「ハッピーニューイヤー」
「ハッピー…ニューイヤー」
「つづく」 作:スエナガ