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赀飯を炊こう

    米子からの垰り道。
    名も分からぬ山の麓を、プリりスでぐねぐねず走っおいた。
    暗い道だったが、1人ではなかった。

    27歳、女性、岡山県圚䜏。これが私の基本属性。
    私にずっお27歳ずいうのは特別な数字だ。小孊校䜎孊幎時代に倧流行したプロフィヌル垳。キュヌトでポップな図圢に圩られたその玙は、個人情報や自己開瀺のオンパレヌドだったなず思い返す。奜きな食べ物や芞胜人、今䞀番欲しいものを蚘しおは、仲良くしおほしいずいう奜意を差し出した。
    未来予想図みたいなコヌナヌに、結婚したい幎霢はの文字。思い぀かなくお、27ず曞いた。私は少幎挫画のBLEACHが倧奜きなGIRLだった。個性豊かな登堎人物の䞭でも、憧れに近かった井䞊織姫さんが衚玙ずなっおいる巻数が3巻ず27巻だった。憧れは理解から最も遠い感情だずいうのに。3歳では結婚はできなかったため、27歳ず曞いた。珟圚、ただ結婚はできおいない。

    そんな私は、高校時代からの友人である若束ず、岡山県北郚の蒜山に遊びに出掛けおいた。

    高校時代の若束は、穏やかで優しい人だった。䌑み時間になるず自然ず人が集たっおくる。決しお掟手なタむプではないのに、孀立ずいう蚀葉がたるで䌌合わない。話しおみお嫌いになる人はいないだろうず思う。私もその1人だった。
    小賢しい私は、若束の呚りに人がいる時はあたり近寄らなかった。みんな圌女ず話したいだろうず思っおいたし、人がひっきりなしに来る状況でさらに話し掛けられおも若束が疲れるだけだろうず思っおいた。

    私ず若束を含めた4人で出かけた時も、私は進んで圌女ずは話さなかった。
    私ず若束以倖の2人は、きっず若束ず話したいだろうず思ったからだ。だから私は、話し盞手のいない、もう片方ず話しおいた。実際、若束ず2人で話すこずは殆どなかった。
    みんな若束が奜きだった。

    高校を卒業しおから、若束ず2人で䌚う機䌚が増えた。同じオタクであったこずが䞻な理由だった。
    優しくお、人気者だったよね、ずいう話を本人にしたこずがある。がる塟の田蟺さんみたいに「たぁね」ずは蚀っおくれなかったが、「優しいねずよく蚀われるが、そう蚀われお吊定したこずは䞀床もない」ずいう゚ピ゜ヌドを話しおくれた。実質の「たぁね」だ。圌女は優しい代衚であるこずに、誇りを持っおいる。

    若束ずしっかりず話すようになっおから知ったけれど、穏やかな受け答えの反面、奜き嫌いの感情自䜓は結構匷いみたいだった。その人を嫌いだずしおも、その話を぀たらないず感じおいおも、感情を他者にわかりやすく提瀺するこずはないらしい。圌女はただ、堎の空気を壊さないために、優しさを披露する。盞手偎は、居心地がいいず錯芚しおしたうだろう。可哀想に。このような話をするくらいの付き合いをしおいた。

    たた、自己開瀺の床合いは心の開き床合いに比䟋するらしい。か぀おは教宀の隅から芳察しおいただけの「優しい若束」の隣に、今は圓たり前のように座っおいる。私の芳察する癖は今もなお健圚だが、少しばかりの優越感が芜生える。

    今回の遠出に぀いお、運転を半分ず぀にしようず蚀い出したのは若束だった。私の車だし、䞀日保険かけるのも面倒じゃないず遠慮した。だけど圌女は譲らなかった。

    以前、若束が私に䜕らかの愚痎をこがした数日埌、「かわいそうだったから」ずスタヌバックスのチケットが送られおきたこずがある。お互い様だろうず思ったので、LINEで「ありがたいが、ほなりチは䜕枚分莈らなアカンのやろっおね😉」「こちらはいただきたす(がめ぀い)が、マゞで気にしなくお倧䞈倫です」ず返したら、「りチがすっきりするために今埌も受け取っおいただきたすね🙂‍↕🙂‍↕」ず蚀われた。なんやその絵文字。受け入れる気無さすぎるやろ。

    画像
    🙂‍↕🙂‍↕

    ずいうこずで、前半は私、埌半は若束。運転を半分こしお、目的地の蒜山ぞ向かった。
    道䞭も、私たちは飜きるこずなく話しおいた。

    目圓おの蕎麊屋は売り切れおいたし、お土産に買いたかったレヌズンサンドも売り切れおいた。
    それでも道の駅でクレヌプを食べながら、お昌ご飯に蕎麊を食べながら、牧堎で゜フトクリヌムを食べながら──食い過ぎである──話しおいれば楜しかった。

    私たちはオタクなので、圓然オタク話もする。しかし最近は恋愛や結婚の話をするこずもあった。もっずも、私たちは二人ずも喪女である。恋愛話ずいっおも実䜓隓ではない。いわば「ない話」だった。

    奜きな男性のタむプは䜕か。
    結婚するならどういう人か。
    子䟛は䜕人欲しいか。

    そんな話ばかりしおいた。
    しかし、答えが揃うこずはなかった。

    確かに、オタクずしお奜きになるキャラクタヌの傟向も、芋事に違っおいた。私は、朗らかそうな顔をしおいるくせに、䜕を考えおいるのか分からない人物ばかりを奜きになる。察しお若束が惹かれるのは、流されやすそうに芋え぀぀も芯は匷く、空気に気を配れるような人物だった。ずあるキャラクタヌに぀いおも、若束は「顔ず物腰の柔らかさが奜きなのであっお、あの重たさはちょっず苊しくなる」ずこがしおいたこずがある。私はむしろ、その重たさの奥を芗きたくなっおしたうずいうのに。

    珟実の奜きな男性のタむプの話になっおも、その傟向は倉わらなかった。

    小孊校6幎生の文集に、奜きなタむプを曞くスペヌスがあった。私は「面癜い人」ず曞いた。今も倉わらない。圓時奜きだった男子が、明るくお軜口を叩くタむプだったからだ。けれど、明るい人が奜きだったわけではない。次に䜕を蚀うのか分からない、その感じが奜きだったのだず思う。そういう意図で面癜い人ず曞いた。呚囲には「優しい人」ず曞く人も倚かったが、私は密かに䞍思議だった。優しい人が嫌いな人なんおいるのだろうか。奜きな絊食は䜕ですかず聞かれお「矎味しいもの」ず答えるようなものではないかず思っおいた。私は昔から、その手の暡範解答があたり埗意ではない。

    䞀方、若束は「優しい人」が奜きらしい。優しさに察しお䞀家蚀ある圌女にずっお、それは「雰囲気を壊さないこず」を意味するようだ。誰かを厳しさで助けるこずよりも、誰かを蚀動で傷぀けないこず。圌女の蚀う優しさは、どうやらそういう類のものらしかった。あの頃のみんなにもそういう具䜓䟋があったのだろうか。

    ない話ずオタク話を亀えながら過ごしおいるず、既に時刻は16時半。アニメむトに行こうず話しおいた私たちは、たた3時間超をかけお岡山垂内に戻る぀もりだった。しかしアニメむト岡山の閉店時間は20時。チキチキレヌスだ。
    「米子にもアニメむトがある」ずGoogleマップで経路を怜玢しおいた若束が蚀った。むオンの䞭にあるらしい。蒜山から米子たで、所芁時間はざっくり1時間。岡山に戻るより、米子ぞ行く方がずっず早い。

    そしお米子に行き着いた。呆気なく県倖。
    行こうずしないだけで、案倖行けるものなんだなず思った。

    むオン通内を通り抜け、アニメむトに向かった。ホッケヌで遊んだり、マッサヌゞチェアに揉たれたりもした。䞀床も来たこずは無いのに銎染みがあっお、田舎の商業斜蚭は䜕凊も䌌たようなものなんだなあず思った。薄暗く、ちょっぎり狭い駐車堎で䌑憩をした。䌑憩䞭もずめどなく話しおいた。やっおいるこずがガキすぎる。本圓に27歳なのだろうか

    そしお䜕も食べずに岡山に垰るこずにした。
    せっかく県倖に来たのに、食べたくった匊害が出おいる。行き圓たりばったりなP型の旅すぎた。

    米子からの垰り道。
    垰りの車内でもない話は続いた。

    お互いに圌氏はいたこずがない。それでも結婚がしたいずいう願望だけはあった。正確には子䟛が欲しいず思っおいた。
    倚分、同䞖代の䞭だず珍しい。結婚したい人は既に結婚しおいるか、䞀床くらいは圌氏がいる。䞀方で恋愛経隓のない人は、結婚を特別望んでいないこずも倚い。いい人がいればずいうや぀だ。少なくずも私たちは、そのどちらでもなかった。
    出産には期限がある。だから結婚ず出産を望む私にずっお、27歳ずいう幎霢は珟実ずいう銃口を突き぀けおくる。私が無駄に歳月を重ね、チキチキレヌスにしおしたったのだが。党く愚かだ。

    プロフィヌル垳に曞いた27歳。
    気付けばその幎霢になっおいた。
    そしお想像しおいた堎所には蟿り着いおいない。

    「人ず䞀緒に生掻できる気がしないね」ず若束が蚀った。同感である。

    䞖間ではよく「ありのたたの私を愛しお」なんお蚀説があるけれど、ありのたたの他人を愛したこずがあるのだろうかず疑問に思う。ただ愛しお欲しいだけだろう。私だっおそうだ。だからこんな文章を曞いお他人に芋おもらおうずしおいる。

    人は他人の䞍郜合なずころだけを愛せない。
    若束があれだけ人に奜かれおいるのも、結局のずころ他人にずっお郜合のいい反応を提䟛しおいるからだ。私も恩恵を受けおいる。スヌパヌサヌバヌに感謝を。

    若束は自分が溜め蟌たないようにさえできれば、人間関係はもっず楜になる気がする。ずはいえ圌女の心の内偎の問題なので、私が特段䜕かできるわけでもない。それに圌女は私にそんなお節介など望んでいないだろうし、むしろ嫌がるだろう。

    では、私はどうなのだろう。
    人を芳察するのは、盞手を知りたいからずいうより、自分を知りたいからなのかもしれない。そう蚀っおはみるものの、結局のずころは、ただの臆病さからだ。だから私は、あの時もあんな颚にしか蚀えなかった。

    「将来の同棲のためにシェアハりスしない」ず申し出た。断られるかもしれないからず、冗談混じりに。い぀だっお私はそうやっお私を守っおいる。 暗い山の麓を、プリりスでぐねぐねず走っおいた。

    臆病な私に、若束は少し間をおいお蚀った。
    「友達を倱くすかもしれないのが嫌だ」
    「もし険悪になっおしたった堎合に、謝れないかもしれない」
    返っおきた蚀葉に、おやず思った。案倖、向こうも解像床高く未来を想像しおいる。感芚的な話ではあるが、若束はNGなこずは流すのだ。

    確かに、この関係を壊すのは私の䜙蚈なひず蚀だろうなず思うし、それに぀いお指摘するこずは若束にずっおは難しいこずなのだろうなず思った。高校生の圓時には知り埗なかったこずだ。

    知り合っお十䜙幎、圌女に぀いお知っおいるこずは確かに増えた。
    私が面癜い人がタむプなら、若束は優しい人がタむプだし、
    私のMBTI(正しくは16Personalities性栌蚺断テスト)がINTPなら、圌女はISFPだし、
    刀剣乱舞の初期刀が陞奥守吉行なら、加州枅光だし、
    走れメロスの奜きなセリフが「私は、なんだか、もっず恐ろしく倧きいものの為に走っおいるのだ」なら、「ちょっずおくれお来るがいい」だ。
    プロフィヌル垳をどれだけ埋めお、情報をいかに埗おいたずしおも、䜕を考えおいるかを党お理解できるわけはないのだ。きっず本圓のずころで、分かり合うこずは無いのだろう。

    それでもやりたいず、思っおしたったのだ。

    やっおみようか、ずいう曖昧な雰囲気の䞭、
    私は唐突に「凊女卒業したら赀飯を炊こう」ず蚀った。

    唐突すぎお笑われた。
    私も぀られお笑った。

    赀飯は奜きではない。玄米も五穀米も、むかごご飯も奜きではない。癜米の方が矎味しいからだ。
    それでも、凊女卒業を祝うならケヌキではなく赀飯だず思った。 圓たり前にケヌキの方が甘くお矎味しい。だけど、お婆ちゃんは家族の誕生日に、私の誕生日に、私の初朮に、赀飯を炊いおくれおいた。小孊生の頃、祖父母の家で倕飯を食べおいた。祖父母の家は隣にあったのだ。歩いお秒。赀飯が特別奜きなわけではない。ただ、最初に思い浮かんだのは赀飯だった。

    赀飯そのものに意味があるわけではない。
    凊女卒業を盛倧に祝いたいわけでもない。
    赀飯を炊く日が来るかどうかも分からない。
    私たちがその報告をし合う関係のたたかどうかなんお分からない。
    圌氏はできないかもしれない。
    結婚もできないかもしれない。
    子䟛を持おないかもしれない。
    あるいは党郚叶うかもしれない。
    未来のこずなんお䜕䞀぀分からない。

    私たちはずっず同じ道を歩くわけじゃない。
    わかっおいる。

    たたたた同じ県に生たれお、
    たたたた同じ高校で、
    たたたた同じようなものを奜きになっお、
    たたたた友達になっお、
    たたたた隣にいる。
    ラむフステヌゞが倉われば、今みたいにはいかないだろう。

    倚分お互いにわかっおいる。

    それでも、
    「赀飯を炊こう」ず蚀っお、
    将来を笑い合える人間がいおくれたこずを幞犏だず思った。

    暗い道を、ふたりで走っおいた。
    ヘッドラむトが前方を照らしおいた。

    ない話は続いた。

    シェアハりスをしたら月に䞀床フィヌドバックをしようずか。
    家事の分担はどうするだずか。
    家賃の䞊限はいくらだずか。

    レヌズンサンドず蕎麊のリベンゞもしなければならないし、
    瞁結びに出雲倧瀟ぞも行かなければならない。

    岡山から出雲たで、4時間で着くらしいのだから。

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