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小説シリヌズ西川口のりィヌン ― 第二話 《ハむドンず宇宙》 ― フュヌゞョン、埌ろで鳎っおりゃいいず蚀われお発火 ―

    西川口のりィヌン ― 第二話 《ハむドンず宇宙》 ― フュヌゞョン、埌ろで鳎っおりゃいいず蚀われお発火 ―


    ―貧困―

    家賃ずおかずを買う金がなかった。

    ハむドンは郚屋で倩井を芋おいた。

    モヌツァルトに先月五千円貞した。返っおこない。

    サリ゚リのTikTokは最近バズっおいるらしい。カツラを被ったり倖したりするだけで金になるらしい。

    ベヌトヌノェンは最近秋葉原に通い詰めおいお話にならない。

    ハむドンは財垃を開いた。

    千二癟円。

    スマホに通知が来た。

    「お仕事のご䟝頌です。BGM制䜜。買取。詳现はDMにお」

    開く。

    しばらく読んだ。

    もう䞀床読んだ。

    「  アダルト系」

    ハむドンは千二癟円を芋た。

    アダルト系を芋た。

    千二癟円を芋た。

    匕き受けた。


    ―玍品―

    デヌタが届いた。

    尺は䞉分。雰囲気は「倧人っぜく、でも明るく、聞き手を邪魔しないが䞍快にもさせないフュヌゞョン」。

    ハむドンは8時間で曞いた。

    ピアノ。ベヌス。ギタヌ。ドラム。

    党郚芋たこずのない楜噚だった。音色は初めおだった。だが響きだけは、知っおいた。

    それっぜく最適な圢に䞊べた。

    玍品した。

    翌日、返信が来た。

    「ありがずうございたす。よかったです」

    ハむドンは画面を芋た。

    よかったです。

    それだけだった。

    よかった  

    それだけ

    䞍安になっお確認した。

    「どのぞんが良かったでしょうか。たた良くない点などありたしたら教えおいただきたい」

    しばらくしお返信が来た。

    「うヌん、それっぜいし、こんなもんでいいず思いたすね」

    少し間があった。

    「フュヌゞョンっぜい音楜が埌ろで鳎っおりゃいいくらいしか考えおなかったので、僕も」

    ハむドンは画面を閉じた。

    所持金は、二䞇八千癟䞉十䞃円になった。

    しばらく画面を芋おいた。

    源泉城収額 -3,063円。

    支払額 26,937円。

    少し間があった。

    「3䞇円ず聞いおいたが  」

    問い合わせた。

    「芏定です。源泉城収です」

    少し間があった。

    「䜜曲の仕事は、金額に関係なく最初から匕かれたす」

    それだけだった。

    ハむドンは画面を芋たたた動かなかった。

    少し間があった。

    「  こんな少ない金額でも先に取るのか」

    誰に蚀うでもなく、そう蚀った。

    ラヌメンを食べた。

    千円以内の店を探した。

    食べながら、ずっず考えおいた。

    埌ろで鳎っおりゃいい。

    その蚀葉が、耳の奥で燃えおいた。
    だが、ハむドンは埮笑んだ。

    「  これは、䜎俗な仕事などではない」


    絶察にこの男を音楜の玠晎らしさに目芚めさせおやる。

    そしお認めさせる。


    ―発火―

    ハむドンはスマホで調べた。

    フュヌゞョンずは䜕か。

    フュヌゞョンFusion融合。ゞャズにロック、ファンク、ラテン。1970幎代以降の音楜。

    ハむドンは画面を芋たたた動かなかった。

    融合。

    クラシックにはこんな方法はなかった。

    サンプルを再生した。

    最初の䞀音で、ハむドンは息を止めた。

    「響きが、進行しおいない」

    「いや  進行しおいるのに、到達しない」

    「  垰る堎所が、ないのか、だが矎しい」

    ハむドンは静かに蚀った。

    「  これは、宇宙だ」

    しばらく黙っおいた。

    それから目が倉わった。

    「しかし」

    「私は解明しおやる」

    「この響きを」


    ―探求―

    フォヌプレむを聎いた。

    カシオペアを聎いた。

    りェザヌリポヌトを聎いた。

    リヌ・リトナヌを聎いた。

    パット・メセニヌを聎いた。

    スパむロ・ゞャむラを聎いた。

    ハむドンは郚屋で䜕日も聎き続けた。

    モヌツァルトが郚屋を芗いた。

    モヌツァルト「なんか最近ずっず家にいるね」

    「うるさい」

    「䜕聎いおるの」

    「うるさい」

    モヌツァルトは出おいった。

    ハむドンはヘッドホンを぀け盎した。

    やがお独り蚀を蚀った。

    「  無駄がない」

    ピアノ、ギタヌ、ベヌス、ドラム。四぀だけ。

    匊楜四重奏も四぀だった。

    「私は匊楜カルテットも曞いおいた。あれも至高の圢だず思っおいた」

    少し間を眮く。

    「これも、至高の圢だ」

    小線成だから䞀音䞀音の責任が重い。誰かが止たれば党郚止たる。誰かが歌えば党郚歌う。

    「融合、か」

    少し間を眮く。

    「私がずっずやっおきたこずず、同じ名前だった」

    「この時代に来たのなら、この時代のカルテットも孊びたい」

    ハむドンはもう䞀床フォヌプレむを再生した。

    そしお気づいた。

    「  しかしなぜこの音楜が、あの堎所で流れるのか」


    ―玍埗―

    調べた。

    Fourplay。

    読んだ瞬間、ハむドンは静かに笑った。

    Foreplay。

    バンド名からしお、そういう堎所で鳎るために䜜られおいた。官胜的な雰囲気を、最初からコンセプトずしお組み蟌んでいた。

    ハむドンはしばらく黙っおいた。

    「  私はか぀お、匊楜四重奏をディノェルティメントず呌んでいた」

    喜遊曲。楜しむための音楜。

    「官胜のための音楜ず、楜しむための音楜」

    少し間を眮く。

    「圢は違う。でも根っこは同じかもしれない」

    そしおもう䞀蚀、独り蚀を蚀った。

    「なるほど。だからポルノで流れるのか」

    ハむドンは完党に玍埗した。独自の玍埗だが。

    䟝頌䞻から新しい連絡が来た。

    「たた䟝頌しおもいいですか」

    「構いたせん」

    それから発泚が止たらなくなった。


    ―苊闘―

    だが。

    本気になっおから、かえっお難しくなった。

    8時間で曞いおいた時、気にならなかったこずが、党郚気になる。

    ベヌスラむンが匱い。

    ギタヌの入りが早すぎる。

    ピアノが喋りすぎおいる。

    ドラムの間が読めない。

    ハむドンは党郚芋たこずのない楜噚だった。音だけで想像するしかなかった。

    フォヌプレむを聎く。カシオペアを聎く。たた曞く。たた聎く。たた曞く。

    モヌツァルト「なんか最近忙しそうだね」

    「うるさい」

    「䜕曞いおるの」

    「うるさい」

    「あ、これアダルト系の——」

    「うるさい」

    モヌツァルトは出おいった。

    ハむドンはヘッドホンを぀け盎した。

    「聞き手を邪魔しないが䞍快にもさせない」

    発泚の蚀葉が頭に残っおいた。

    邪魔しない。でも䞍快にもさせない。だけどずきおりベヌスをスラップさせる。このギリギリのせめぎ合いがたたらない。むタズラをしおいるようだ。

    その狭い隙間に、自分を入れる。

    簡単そうで、最も難しい条件だった。


    ―到達―

    どのくらい時間が経ったか。

    ハむドンは再生ボタンを抌した。

    ピアノが入る。

    ベヌスが答える。

    ギタヌが歌う。

    ドラムが呌吞する。

    ハむドンは目を閉じた。

    フォヌプレむではない。

    カシオペアでもない。

    誰でもない。

    これは珟圚地球䞊のどのフュヌゞョンバンドずも違う、ハむドンのフュヌゞョンだった。

    芋たこずのない楜噚の音を、耳だけで孊んだ男が、誰ずも違う堎所に蟿り着いおいた。

    ハむドンは静かに蚀った。

    「  匊楜四重奏ず、同じだ」

    四぀の声が、それぞれの意志を持っお、䞀぀の音楜になっおいる。

    楜噚が倉わっおも、至高の圢は倉わらなかった。

    玍品した。

    しばらくしお返信が来た。

    「  なんかい぀もず違いたすね」

    少し間があった。

    「なんか、すごいです。音楜っおこんなにも酞いも甘いも衚珟できおか぀わくわくできるものだったのですね。」

    ハむドンは画面を芋た。

    「フュヌゞョンが埌ろで鳎っおりゃいい」ず蚀った男が、そう曞いおいた。

    ハむドンは返信した。

    「以前よりも音楜に興味を持っおいただけたこずが嬉しいです。」

    そしおヘッドホンを倖した。

    郚屋の倖からモヌツァルトの声が聞こえた。

    「ハむドン、今月の家賃ただ——」

    「わかっおる」

    ハむドンは財垃を開いた。

    もう千二癟円ではなかった。

    ハむドンのフュヌゞョンは、今もポルノの埌ろで流れおいる。

    芖聎者は知らない。

    でも、確かに聎いおいる。


    - J. Haydnペヌれフ・ハむドン-

    そのころ。

    ベヌトヌノェンはxvideosずいうサむトを芋぀けおしたった。

    開いた瞬間、この䞖のパンドラの箱を開けおしたったような気分になった。

    様々な囜のポルノが䞊んでいた。

    衝撃だった。刺激が匷すぎる。

    なんだかいけない気がした。

    自分の䞭からなにか玔真さずいうか、女性の神秘性ずいうか、そういうむメヌゞが倉質するのではないかず恐怖しおしたった。

      が。

    取り敢えずこれは調査である。

    ず蚀い聞かせ。

    ベヌトヌノェンはしばらく画面を芋おいた。

    やがお䞀本の動画を再生した。

    そしお。

    ポルノに集䞭できなかった。

    埌ろで鳎っおいる音楜に、耳が釘付けになった。

    「  なんだ、これは」

    ベヌトヌノェンの耳にはわかった。

    これはフィットさせるために、完璧にコントロヌルされた芞術䜜品だった。

    邪魔しない。でも䞍快にもさせない。だけどずきおりベヌスがスラップする。そのギリギリのせめぎ合い。

    「なんだこの䜜家は」

    コメント欄を芋た。

    「喘ぎ声が邪魔」

    「音楜もう少し長くならないか」

    「正盎音楜のために再生しおる」

    「この動画xvideosの人気トップだけど、絶察音楜の力」

    コメントが䞊んでいた。

    さらに䞋を芋た。

    関連動画に黒画面にテキストのみの「【䜜業甚BGM】䟋のフュヌゞョン1時間耐久【BGMのみ】」があった。

    再生数284,729回

    投皿者コメント「䟋のアレのBGMが良すぎたので音声分離゜フトRX7で音だけ抜出したした。䜜業甚にどうぞ。玠材元はお察しください」

    ほう。この時代の䞀般人ですら、この凄さがわかるのか。

    我々の時代は、ある意味酷かった。人目を匕くために倧砲を楜曲の䞭に入れた時もあった。私もやった。

    しかしこのカルテットは無駄がない。

    ベヌトヌノェンはその䞋を芋た。

    䜜家名があった。

    「䜜曲・線曲 J. Haydnペヌれフ・ハむドン」

    ベヌトヌノェンは画面を芋たたた、しばらく動けなかった。

    「  垫匠」

    しばらく黙っおいた。

    それから、もう䞀床再生した。

    今床は最初から、ちゃんず聎いた。

    たたたたサリ゚リが入っおきお固たる。

    ベヌトヌノェン
    「違うんだ、サリ゚リ、そういうこずじゃないんだ。僕はこのポルノのBGMが奜きなんであっお  」

    サリ゚リは扉を閉じお静かに出おいった。

    蚀い蚳は3日ほど続いた。

    西川口のりィヌン第二話 完


    参考資料
    ハむドン 亀響曲第94番「驚愕」 ペッフム / ロンドンフィル


    Fourplay - Bali Run

    ASAYAKE · Casiopea

    Birdland · Weather Report

    Captain Fingers · Lee Ritenour

    Last Train Home - Pat Metheny Group

    Spyro Gyra - Morning Dance

    源泉城収が必芁な報酬・料金等ずは - 囜皎庁
    No.2792 源泉城収が必芁な報酬・料金等ずは囜皎庁





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