
KEMPERって何者?アンシミュとの違い
こんにちは、Studio Clariのいっちーです。
KEMPERやTONEX、NAMのRIG(サウンドデータ)を制作・販売しています。
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ところで、皆さんは、KEMPERが何者なのか、アンプシミュレーター(アンシミュ)と何が違うのか、説明できますか?
「デジタルでアンプの音が出るやつ」という意味では、どちらも同じに見えます。でも、中身の考え方は大きく違います。意外と知られていないこの違いを、今回はできるだけ噛み砕いて書いてみます。
そもそも「アンシミュ」とは
アンプシミュレーター(アンシミュ、モデリングアンプとも呼ばれます)は、一言でいうと「アンプの“振る舞い”を再現したもの」です。
たとえば、アンプのゲインのつまみを3から5に上げると、歪みのかかり方が変わりますよね。そもそもの歪みの質感も、アンプごとに違います。EQ(低音・中音・高音のつまみ)も、アンプによって効き方が違います。
こうした「つまみを動かすと、こう変わる」というアンプの動きを分析し、計算式(アルゴリズム)として組み上げるのがアンシミュです。作り手が「このアンプはこう動く」を、プログラムで作り込んでいくイメージです。
アンシミュは昔からある
実は、アンシミュのほうが歴史は長いです。広く知られるきっかけになったのは、1998年に登場したLine 6の「POD」でしょう。赤い豆のような形の卓上機で、当時としては画期的な、アンプの音を手軽に録れる機材でした。
その後もアンシミュは進化を続け、現在ではFractal AudioのAxeやLine 6のHelixなどが、プロの現場でも使われる定番になっています。
KEMPERは「写真」のようなもの
では、KEMPERは何が違うのでしょうか。
KEMPERの方式は「プロファイリング」と呼ばれます。実際のアンプの音を測って、KEMPERに取り込む方式です。取り込んだものは「RIG」と呼ばれます。
アンシミュが「アンプの動きを、計算式で組む」方式だとしたら、KEMPERは「アンプのその瞬間の音を、そのまま撮る」方式です。写真のようなものだと考えると分かりやすいと思います。
たとえば、あるアンプの「ゲイン5、EQはこの位置」という状態を、丸ごと1枚撮る。その写真が、1つのプロファイルです。
KEMPERのプロファイリングについては、KEMPER公式が説明しています。
出典:KEMPER 公式「PROFILING技術」
https://www.kemper-amps.com/profiling
「写真型」の仲間:TONEX,Cortex,NAM
実は、この「アンプの音を写真のように撮る」考え方は、KEMPERだけのものではありません。ほかにも、次のようなものがあります。
TONEX:IK Multimediaの機材・ソフト。アンプの音をAIに学習させた「Tone Model」を使います。
NAM(Neural Amp Modeler):無料のオープンソース技術。アンプの音をディープラーニングで学習させたモデルを使います。
Cortexシリーズ(Neural DSP):Quad Cortex、Quad Cortex mini、Nano Cortexなど。アンプの音をAIに学習させた「Neural Capture」を使います。
作り方(測るのか、AIに学ばせるのか)は違いますが、「ある設定のアンプの音を撮って、再現する」という点は共通しています。Studio Clariでは、KEMPER・TONEX・NAMを同じ「写真型」の仲間として扱っています。今回はKEMPERを中心に書きますが、以下の話は、Studio Clariの使用感としては、TONEXやNAMにも通じます。
違いを並べてみると

大事なのは、どちらが優れているかという話ではないということです。「作り方が違う」ので、得意なことも違います。この得意不得意は、次の記事で詳しく書きます。
使ってみると、こう違う
ここからは、Studio Clariの使用感です。標準的なプロファイルを使った場合の話になります。KEMPERで説明しますが、私たちの感覚では、TONEXもNAMも同じです。
ゲインを上げると
KEMPER本体のゲインつまみを上げれば、もちろん歪みは増えます。ただ、実機のアンプの感覚とはかなり違います。
実機のアンプには、ゲインを3〜4に上げたあたりで一気に歪みが増す機種もあります。しかしKEMPERの本体側のゲインは、そうしたアンプごとの特性を考慮せず、どの機種でも一律に、直線的に上がっていきます。
EQを触ると
EQも似ています。実機には、あまり効かないEQのアンプもあれば、よく効くアンプもあります。ところがKEMPER側のEQは、どのアンプでも同じような効き方をします。そして、いじりすぎると、音が崩れて、別のアンプのようになってしまうことがあります。
これは「写真」を思い出すと納得がいきます。写真は、撮った瞬間の状態が完成形です。あとから色を大きく変えれば、元の写真とは別のものになりますよね。
だからStudio Clariは「ゲイン段階ごとに撮る」
つまみで動かせないなら、どうするか。答えは「必要なゲイン段階ごとに、別々に撮っておく」ことです。
Studio Clariでは、1つのアンプのチャンネルについて、ゲインを段階ごとに分け、それぞれを別のRIGとして収録しています。KEMPER側でいじって無理に音を作るのではなく、撮る時点で音を完成させておくという考え方です。
なお、KEMPERにはつまみの操作にも反応する「Liquid Profile」という、例外的な種類もあります。今回は、標準的なプロファイル(KEMPER Generic)の話としてお読みください。
出典:KEMPER 公式「Liquid Profiling」
https://www.kemper-amps.com/news/88/Liquid_Profiling_PROFILING_meets_modeling
まとめ
アンシミュは、アンプの「振る舞い」を計算式で再現したもの
KEMPERは、アンプの「その瞬間の音」を写真のように撮って再現するもの(TONEX、NAM、Neural DSPのCortexシリーズも同じ「写真型」の仲間)
どちらが上ではなく、作り方が違う
標準的なプロファイルでは、本体のゲインやEQは実機とは別物の動き。だから、撮る時点で音を完成させる
次回は、「KEMPERとアンシミュ、それぞれ得意なことは?」を書きます。
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