メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【予告編】『完璧な男』第7話04「黒硝子の間」【オリジナル小説】

    ─ 痛みの「輸出」を、幼き沈黙で断つ ─

    【第7話04予告】

    2026.03.05更新

    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像
    画像

    ◆年表:黒硝子の間◆

    ◆構造起点◆
    葛城立真は、もともと少女として生まれた。
    十三歳の春、父・葛城顕臣の判断により、
    「完璧な男」を実現する国家計画の中核に据えられた。
    その過程で身体は制度的に再構築され、
    声を失い、戸籍は上書きされ、
    女性としての将来は完全に断絶された。
    この改変は不可逆であり、
    彼の人生は父の決断から始まっている。
    【第一段階:再構築】
    2019:団地→愛宕邸(01-01〜01-05)/監視選定開始
    2019:身体改変・声喪失/完璧な男の誕生
    2019年4月:嶺征学園高等部2年に13歳で編入
    2019秋:「ドーナツ事件」
    2019晩秋:「桐塚高校事件」
    【第二段階:制度への固定】
    2021:成人式、「成人登載儀礼」
    2022:性別変更に抵抗、タカ(高橋孝)と共に逃亡
    2023:捕縛・タカの死/「再構成」による少女性の根絶
    2024:国際戦略応用大学(ISAU)開校 
    2026:メディコア・ホールディングス登壇式、身体完全体へ
    2029:北郷と会い、目覚める
    【第三段階:覚醒】
    2035:制度輸出段階(虎ノ門・ISAU)
    2058:カフェ再会・告白開始(01-01)/過去記録の覚醒
    画像

    第7話「構造の正体」03のあらすじ

    監視室に映し出された複数の少女たちの中から、制度はひとりを選び出す。
    選定の先に想定されている完成形──
    六本木と芝浦の抗争を終結させた戦略家。
    記録に残る名は、葛城立真。
    社会は彼を「完璧な男」と呼んだ。

    2058年。

    その正体を追う者の前で、
    立真だった彼女は静かに語り始める。
    「その名は、いまは使っておりません」

    父の、「完璧な男を作る」という命令が、
    すべての始まりだった。

    六本木コマンドルーム。
    深夜のモニターで点滅したのは、
    単なる警告ではなかった。
    立真自身を造り替えた「人格兵装設計データ」の流出試行。

    画面に映るのは、ただのファイルではない。
    彼の身体をどう壊し、どう作り替えたかという、
    地獄の工程そのものだった。

    届出を待てば、
    自分の痛みが“技術”として世界へ輸出されてしまう。
    アラートの赤い光が室内を染める。
    無言のまま画面を見据える岩村、日下部、松村。
    誰も理由を問わない。
    立真は、制度の命令を待たずに即時制圧を命じた。

    六本木。
    暗闇のオフィスで言葉は不要だった。
    肘が喉を潰し、膝が骨を砕く。奪取された黒いUSB。
    そこに刻まれていたのは、内部の裏切りの証拠だ。

    語られるのは、国家の安全保障と輸出管理の話だけだ。
    制度が守ろうとしたのは、立真の“機能”だった。
    立真が守ろうとしたのは、立真の“痛み”だった。
    夜を統べる「六本木のファイアウォール」は、
    血に濡れた手を下ろしたまま、
    闇の中に、二度と繰り返させないという決意を置き続けていた。

    「……もう、俺一人の問題ではなくなった」

    Scene07-11【場所:ISAU大学図書館、白金台/日中/2035年冬】


     
    阿野全成研究32年。沼津週末移住、阿野館こと大泉寺で2021年より土日祝に観光ガイド実施中。小説『阿野全成伝』を2025年に全50話、毎週土曜21時更新で連載予定。エジプト考古学からイスラーム法学と性別越境を研究。平日は「IT傭兵」稼業中。AL-QASAS株式会社代表取締役。

    あなたへのおすすめ