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【エッセイ】送信ボタンの悪魔

     よく、誰かにメッセージを送りますよね。
     その理由は人それぞれ。日々の何でもない日常を共有したい。遊びに誘う。待ち合わせ……などなど。
     その一見すると、特に題材にするほどなことでもないと思えるでしょう。
     しかし私はこれに現在、振り回されています。
     その理由と、送信ボタンがもたらす恐ろしさを見ていきたいと思います。


     いや、暑くなりましたね。
     今やほぼ全てのスーパーで冷房がかけられていて鮮魚コーナーなどは冷えることがあります。
     そこでお腹が痛い、何てこともあるんじゃないでしょうか。
     あぁ、そうだな。友達にスーパー寒すぎるなんてメッセージを送りますか。
     と、送信ボタンを押す。
     問題です。ここから湧く感情は何でしょうか。
     正解は人それぞれ。拍子抜けですよね。
     でも本当にそうなんです。
     寂しがりやな貴方は送信ボタンを押してから反応してくれるまで画面と睨めっこしたり。
     せっかちな貴方は反応が帰ってくるまでにもう何件か送信ボタンを押して待ったりするでしょう。
     でもまた呑気な貴方は帰ってくるまで何とも思わないかもしれない。
     人それぞれ。
     でも私は思うんです。これって、送信ボタンを押したがゆえに発生する固有の恐ろしさなのでは?と。

     場面は切り替わってSNS。
     リプで何回もラリーをして、返ってきた問いに少し迷う。
     そこで何度か手を握ったり広げたりするようなざわざわ感が出ます。
     何度か確認をしてやっと送るぞ、となった時に訪れるのは送信ボタンという悪魔です。
     こいつはボタン一押しで相手に届き、返ってきたりするまでの間、『あぁ、これで良かったのかな』『傷付けてないかな』『ちょっと踏み込みすぎたかな』などなど……。
     これは犯罪級です。えぇ、やってます。
     友達や知り合い同士でそれなのですからそりゃぁ人生の分かれ道ではどうでしょう。

     またまた画面は切り替わり、おやおや?この少年、メッセージで告白しようとしてますよ。
     そして少年は送信ボタンを押そうとする。「あぁ?早く押せよ」この時点から送信ボタンの悪魔は現れています。目の前に。
     少年は送信ボタンを押したと同時に完全に悪魔を顕現させてしまった。
     これから相手からの返答が来るまで画面を付けては消し、画面を消しては付け、ループする悪魔の思考に囚われています。
     更に恐ろしいのが、送信するまでは優位などはなかったのにこの瞬間、完全に生まれてることです。
     相手はこれに対して送るメッセージのタイミングは縛られない。
     簡単にいえば未読無視したり後に回したり更には既読無視まで!「あぁいかんいかん。送信ボタンの悪魔は後手に回ったものにはつかんのか!」
     いや憑くは憑くんですけど所謂下位悪魔でしてね……。
     と、送信ボタン。
    「ふむ、そうか。ならばこの少年に憑くだけにするか」
     えぇえぇ、悪魔は目の前からどこかに行っちゃいました。
     あぁ!少年の背中にべったりと引っ付いてる!
     そしてメッセージが少年に返ってくる。
    「まずはありがとう。でもごめんね」
     送信ボタンの悪魔の本領はここからです。
     やはり、悪魔は囁きます。
     『送らなければ良かった』『明日学校行きたくないな』『今どう思われてるのだろう』『女子のチャットとかで共有されたりしてるのか』
     まあこんなところですかね。 送信ボタンを押してから返ってくるまでの、サスペンス映画を優に越えるドキドキ、ハラハラと返ってきてからの後悔、或いは喜び。 押した後も前も葛藤。
     こりゃ叶わんて。降参降参。 


     まあ、語りますかね。私に取り憑いてきた悪魔を。
     私は本当に趣味で小説を書いてるんですよ。
     物語を作りたい欲がすごくてね。
     何かがあればここどんな表現でどんな文脈が流れるんだろうなど日々感じていて。
     賞に応募したこともない素人がね。
     そこでねぇ、初めて一作書ききってみたんです。
     短編の純文学何ですがね、それを誰かに見てもらいたい!と、親のトーク画面で送信ボタンを押しました。
     押す前もこんなん人に見せていいのか。笑われないか。不安で、不安で。そしたら送信ボタンの悪魔に上から笑われていました。
     でも勇気を振り絞って送信!したはいいものの返信がこない……。
     一応、母親とはリアルで話した後だしなと思い気にしないようにしたのですが。
     父親からもリアクションがなく、消そう!と思ったが踏みとどまり考える。
     後々消して「読もうと思っていたのに」など返されたらまた送信ボタンの悪魔が完全顕現してくるじゃないですか!
     あれ、?逃げ場ねぇ!
     送信ボタンの悪魔さんや。お優しくしてくださいや。
     沈黙。
     やはり人に自分の小説を見てもらいたいだなんて烏滸がましいのか。
     そこで一通のメールが入る。
     祖母から。
     「ちゃんと文になってる。ちょっとしか見なかったけど」的なことが!
     母親、祖母と会って直接見せたらしい!
     祖母にも憑いたのか気になるがまあ他人の心配などしておれん。
     空が灰色に染まるようなアレが脳内に広がる広がる。
    そう、ネガティブ思考がね。 

     さて、送信ボタンの悪魔とは何だったのか。
     送信ボタンを押す前と押した後の感情、葛藤。その集合体こそが正体。これは生半可な気持ちじゃ勝てないですね。
     悪魔は来てほしくないときこそ来て、どうでもいい時にはこなかったりする。
     気分屋なんですかね。
     送信ボタンの悪魔は今も君の真後ろでヒヒヒと笑ってますよ。
     でもまた私たちは送信ボタンを押し、悩むのでしょうね。

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