
青春の空腹を支えてくれた茶色いパンの試食販売
高校生の時に通学で使っていた広島駅は、
放課後の時間を使うのには少し退屈な場所だった。再開発が始まる前の広島駅でよくすることと言えば、直結のショッピングビルに入ってるAfternoon Tea LIVINGで新商品をみたり、
書店で文房具を補充したり、そしてたまにスタバに行くくらい。(スタバは特に人気で、いつも限られた席の取り合い状態だった)
駅前も大きなパチンコ店や雑居ビルが立ち並んでいて、お世辞でも今のような賑わいがある場所とは言い難いところだった。
高校生の時の私は常に空腹だった。
でもアルバイトは校則で禁止、お小遣いも限られた額で、毎度お菓子とジュースなんて買っていたら破産してしまうような資金ぶり。
そんな時通っていたのが広島駅の地下にあった
スーパーマーケット「ユアーズ」だ。
ここでは週2程度でパンの試食販売を行なっていて、おやつの購入ついでによく通っていた。
試食コーナーにはいつも同じ、40代くらいの女性販売員の方がいたのだが、少しクセのある人だった。
一番覚えているのが、キャッチの方法だ。
配っている近くを通ると、力強い声と独特の口調で「ふわふわの茶色いパンです、どうぞ!」と
呼び止められる。
パンって8割方茶色じゃないか…?
毎度そんな疑問を抱きながら、手渡された茶色いパンを口に運んだ。
いつの日かはミルクフランスか何か、クリームをサンドしたパンの試食を配っていた。
端の部分のカットをもらい口に運ぶと、クリームが全くなく、コッペパン部分の試食で終わった。他にも特徴的なエピソードはいくつかあるが、
いつもその販売員の女性は真面目に、そして誠意をもって試食を配っていた。
試食をもらえるだけでもありがたい。
ちょっとの想定外があった時は心の中で受け止めながら、高校生の私は、毎度パンの試食の恩恵にあずかっていた。
再開発後もユアーズは駅内に残ったが、
規模を縮小して逆側のエリアに移転し、パンの試食販売も見かけなくなった。あの人は今どうしているだろうか。スーパーの前を通ると、私の青春の胃袋を支えてくれた販売員の、あの独特な口調とキャッチをふと聞きたくなる時がある。