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プロジェクト・ヘイル・メアリー|映画感想文

    映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』、公開初週に観てきました!
    どういうかたちでまとめようか1週間悩みましたが、もうネタバレ全開でいくことにします。だってロッキーの話がしたいもんな。
    ただしロッキー以外の話もたくさんするので、この記事は長いです。

    大画面でSFを観る

    わたしはかつて年間200本ほど劇場で観る映画オタクでしたが、昔に比べてずいぶん機会が減りました。
    そんな中でもここ数か月はリバイバル上映に偏っていて(※)、そろそろ新作を観たいと思っていたところでした。
    ※『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『落下の王国』とか。

    SF、特にこの映画のような宇宙空間ものは、映画館の大画面で観る甲斐がありますね。
    わたしはIMAXで観たのでなおさらよかった。
    特に惑星エイドリアンの表現と、ラストシーン、エンドクレジットの映像が美しくて、それをスーパー大画面で見られることのありがたみ。
    音もね…この映画は無音になる場面がちらほらとあって(宇宙は無音だから)、その静けさを感じるのにもベースの音響のよさが効くんですよね。

    でもこの映画はあえてノスタルジックな手触りを残したところもあって、最新のピカピカ宇宙SFなところと両立しているのがよかったように思います。
    グレースのファッションとか。ざらっとした質感のカットが混ざったりとか。「現在」=宇宙空間と、「過去」=地上で映像のアスペクト比が違うんですよね。
    既存曲を挿入歌にする使い方もうまくて、中でもやっぱりビートルズの"Two of Us"が白眉だったように思います。
    こういう要素もノスタルジーを補強していて、なおかつ「映画にしかできないこと」だから強い。

    映画館というのは暗闇の中で黙ってスクリーンを見上げる、改めて考えるとけっこう奇妙な体験なんだけど…なおかつ映画のジャンルがなんであれこのフォーマットは常に機能するというのもおもしろいんだけど、SFジャンルとの親和性には独特のものがあるように思います。
    夜空を見上げる感覚と通ずるからなんだろうか?
    宇宙の暗闇に浮かんで、物語を追っている、みたいに感じられるからなのかもしれないですね。

    ロッキーかわいい教

    あんなんダメでしょ。ロッキーがかわいい。
    原作のロッキーはクールで真摯なエンジニアという印象が強かったけど、映画のロッキーはだいぶかわいい成分が多かったように思います。
    しゃべる声が聞こえるからというのもあるんでしょうか? 原作ロッキーもよくしゃべっていたけど、映画ロッキーは特に多弁な印象がありました。
    青年っぽい声のロッキー、かわいかったなあ。

    もうできあがった状態のドームに入って"Hi Grace!"のひとことでヘイル・メアリー号にごろんごろん突入するロッキーからの一連のシーケンスは特にかわいかったですね。
    無邪気(やあ!)かつ用意周到(乗り込む気満々で準備している)、やや傍若無人(散らかったヘイル・メアリー号にめっちゃ文句言う)。
    映画ロッキーのかわいさが詰まっている。

    そんなわけで原作読了時にはロッキーかっこいい教だったわたしも無事ロッキーかわいい教に入信しました。
    小説を再読して原作ロッキーさんのかっこよさを噛みしめ、映画のプロモーション映像を見に行って映画ロッキーのかわいさに浸る反復横跳びができる。しあわせ、しあわせ、しあわせ(プロジェクト・ヘイル・メアリー文法)。

    原作勢の感想

    さて、上の方でも何度か書いているとおりわたしは原作読了後に映画を観に行った人間なので、小説と映画の差異についてもう少し触れておきます。

    小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』のいいところは、目の前に浮かび上がる問題を一つ一つ丁寧に(ねちっこくともいう)検証していくプロセスそのものが小説化されていることだと思うんですよね。
    映画はそのへんをかなりざっくりと省略していて、そのぶんテンポがよくなっていました。
    原作勢からすると「そこ削っても成り立つんだ!?」という驚きがあって、うまい脚色だったんだなあと思います。

    たとえば、惑星エイドリアンから微生物を採取するミッションでヘイル・メアリー号がダメージを負い、航行不能の危機に陥るシーン。
    映画ではロッキーが地球側の環境に出てきて意識を失ったグレースを助け、自力でエリド側に戻るところまでやってのけるという展開でした。
    原作ではもう一ひねりあって、グレースの意識が戻ったときにはすぐそばにロッキーがいるんですよね。そのまま動かなくなったロッキーをエリド側の環境に戻すために、グレースも危険に身をさらさなくてはならない。
    わたしはここでおたがいのために身を削る二人の関係がとても好きだったんですけど、ある意味で映画のグレースとロッキーは、このシーンとクライマックスの献身でバランスをとっているのかな。

    原作のグレースとロッキーは「科学人間」と「エンジニア」とかなり明確に定義づけられているけど、映画はその印象がやや薄まっていたようにも思います。
    ロッキーがかわいいせいか? いや、問題定義して試算して検証するという原作頻出のプロセスが簡略化されたためかな。
    わたしは原作ロッキーが絶えず手を動かして何かしら作っているところ(エリディアンはマルチタスクが得意でしゃべりながら手を動かすのが普通みたいな描写がある)が好きだったので、ちょっと残念ではある。
    グレースが記憶喪失状態から自分という存在や、異なる太陽系にいることを理解するまでのプロセスがあっさりしていたのもそうですね。
    でもそのかわりに髪とひげがぼうぼうのまま飲んだくれるグレースとか、ラーメンで作った人形もどきと踊るグレースとか、目覚めるまでのシーケンスを映画ならではの感傷的なモンタージュで表現していたのはすごくよかった。

    原作には、なぜこの広い宇宙で自分たちが出会えたのか、という疑問についてグレースとロッキーがディスカッションするシーンがあります。
    ここでの理屈づけ(ざっくりいうと知能・技術レベルが同等だから)にはなるほど~と思ったのでわたしはとても好きなシーンだけど、映画のプロットに必要かと言われるとまあ…なくてもいいのか…?という気はします。納得はできる。

    総じてこの映画、まあまあ忠実だけど「完全映画化」みたいなものではない、かといって「翻案」でもないけっこう不思議なことをやっていますよね。
    エッセンスを抽出して再構成する、みたいな方向性の映画化。
    映画を観ると原作を読みたくなるし、原作を読むと映画を観たくなる。それがすごくよかったです。

    映画版の好き要素

    細かいところでいうとロボットアーム…アルマンドでしたっけ? 名前までついていて。原作では「コンピュータ」=ヘイル・メアリー号=女性の声とロボットアームが同一人格(?)のような印象だったけど、映画版のロボットアームは独立していて、ところどころでユーモラスな動きもしていましたよね。かわいい。なんとラストシーンまでついてくる。

    意外だったのがそのラストシーン自体ですね。
    飼い主と犬みたいな様子で海辺を歩く二人はそのビジュでいいのか?と思いつつ、なんかめっちゃ広い海岸になっているのが…エリディアンからグレースへの厚情を感じてよかった。
    原作グレースは「さまざまな色合いの岩で庭の景観を作って愛でている」みたいなことを言っていたけど、それが更にグレードアップしたのがあの奇岩っぽい風景の海岸ということかな。
    環境(水温だったっけ?)に関して「エイドリアンに伝えておくよ」とロッキーが言っていたように思うので、エイドリアンもエンジニアなんだろうか!?と想像が広がりました。
    教室のシーンもすごくよかった…。グレースは研究者としての未来を閉ざされて不本意ながら教師になったというバックグラウンドがあるけど、本当に子ども好きな人なんですよね。エリディアンの子どもたち、とてもかわいかった。それを見て笑顔になるグレース、そこでバシッとエンドロールに入る、これですよ。フェードじゃない、クリアなカット。あれが最高。

    キャラクター関連

    • カール:誰?だったけどおそらく原作に登場する「愛想のいい兵士」スティーヴがベースになっているのかな? 出発前の物語を描くにあたっていい追加要素だったと思います。グレースが地上で見た最後の光景にいるのがなんか…いいですよね、やるせなくて。

    • ストラット:歌う。えっ! 原作ストラットは歌いそうな雰囲気がまったくなかったものだから…。

    • デュボア&シャピロ:原作ではだいぶパンチの効いたキャラクターをしていたけど映画では比較的…ほのぼのカップルというか…? いや、いいんだけど。わたしは原作の「別に何も悪いことはしていない二人だけど、ものすごく困っているグレースの気持ちがよくわかる」というあの感じが好きでしたね。

    • その他キャラクター:グレースが空母に入るあたりから登場する気のよさそうな男はレデルだったんだろうか? それともディミトリ? ヤオ船長は小説ではきわめて堅物という印象だったけど、映画版では陽気な男として描かれていたように思う。おもしろい変化ですね。

    その他好きな改変

    • "Rocky hate Mark.":ロッキーの台詞。めっちゃ好き。原作ロッキーは言わないかもしれない(言ったとしてMark badくらいなような気がする)けど映画ロッキーなら言う、かわいいからね…という謎の納得がある。

    • ブリップAの観測ロボット:ロッキーとのファーストコンタクトのシーンで船からにゅっと出てくるロボット2体、かわいかったですね~! なんかアンテナっぽいかたちのと、もうちょっと小型のと。あのロボットで見た(聞いた)グレースの姿をあのキセノナイト製人形にしたんだと思うとほんとにいい…。

    • ハグ:原作のグレースとロッキーはわりと始終イチャイチャしている印象ではあるけど明確なハグは描写されていなかったように思います。特にタウメーバ採取での事故のあと眠っていたロッキーが目覚めたのに気づいたときのハグ、グレースの涙、ドームの中でちょっと伸び上がってくれる(?)ロッキー、最高によかった。

    おわりに

    感想を書きながらもう一回観に行きたくてたまらなくなってしまった…。
    上にも書いたけど、たぶん小説と映画を往復するのが向いているタイプの作品なんだと思います。相互補完的。
    映画から入った人はぜひ原作読んでね…。

    タイトル画像は入場者プレゼントでいただいたワッペンです。良い、良い、良い!

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    月村

     
     
    アラフォー独身OLと日々のこと|一人暮らし|関西在住|読書と映画|園芸|旅行|ときどき投資

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