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still. 思想|知識は、更新を止めた瞬間から、過去になる

    社会保険の会話をしている途中で「厚労省」と言った瞬間、あれ「厚生省だったかな」と一瞬迷ってしまった話です。

    社会保険制度
    私が初めて意識したのは30年以上も前でその頃はまだ「厚生省」でした。

    厚生省とは
    かつて医療、保健、社会保障、社会福祉などの行政を担当していた日本の行政機関です。2001年(平成13年)の省庁再編により労働省と統合され、現在は厚生労働省となっています。

    提供元: Wikipedia

    何気なくインプットされた名詞。
    使う機会が出て来た最近、
    正確に言えば、自分がそう言っていることにすら、気づいていませんでした。
    誰かに指摘されて、気づいたのです。

    厚生省が厚生労働省へ再編されたのは、もうずいぶん前のことです。
    それだけの時間が経っているにもかかわらず、ひとつの古い名前が、訂正されることなく、自分の中で息をし続けていました。

    不思議なのは、これが単に「知らなかった」という話ではないことです。

    むしろ、ちゃんと知っていたはずなのです。
    ニュースで耳にし、資料で読み、勉強時にも覚えたはずでした。
    自分の中に「事実」としてしまい込んだ。

    けれど、問題はそのあとにありました。

    しまい込まれた知識は、よほどのきっかけがない限り、もう一度取り出して確かめられることがありません。
    世の中がどれだけ変わっても、自分の中の地図だけが、その日のまま止まっていることがあります。

    これは、固有名詞だけの話ではないように思います。

    制度のこと。
    組織のこと。
    人との距離感のこと。
    働き方や、役割や、当たり前だと思っていた考え方。

    一度「こういうものだ」と理解したつもりになると、その理解は、自分の中でひとり歩きを始めます。

    現実のほうは少しずつ姿を変えているのに、こちらの地図が自動で更新されるとは限りません。
    地図を開き、いま見えている景色と照らし合わせる。
    その手間を、自分から取りにいく必要があるのだと思います。

    厄介なのは、止まった知識ほど、気づきにくいことです。

    明らかに知らないことであれば、人は調べます。
    検索もします。
    誰かに尋ねることもできます。

    けれど、「もう知っている」と思っていることは、確かめる対象にすらなりません。
    間違っているかもしれない、古くなっているかもしれない、という疑いそのものが立ち上がってこないからです。

    「厚生省」という言葉も、指摘されるまでは、私の中で何の違和感もなく動いていたのだと思います。

    考えてみると、制度や仕組みの説明にも、似たようなことがあるのかもしれません。

    「対応しています」
    「利用できます」
    「制度としてはあります」

    そうした案内は、上から降りてきます。

    けれど、それが現場でどう実装されているのか。
    実際に、必要な人へどう伝わっているのか。
    案内された内容と、現場で起きていることのあいだに、どれほどの差があるのか。

    形になっているものは確認されても、
    それが現場でどう伝わり、どこで止まっているのかまでは、見過ごされやすいものです。

    案内と実態のあいだに生まれる小さな溝は、誰かが意識して埋めにいかない限り、自然には塞がりません。
    そして、その小さな溝が積み重なると、いつのまにか「そういうもの」として扱われるようになります。

    人も、組織も、制度も、放っておけば、止まったままの状態が初期設定になっていくのかもしれません。

    動き続けるためには、ときどき現在地を確かめる必要があります。
    それは、大げさなことではありません。

    古い思い込みを誰かにそっと指摘されたとき、
    「そうか、それはもう古かったのですね」
    と、受け取れるかどうか。

    その程度の小さな姿勢の中に、更新の入り口はあるのだと思います。

    知識を更新し続けることよりも、
    自分のどこが止まっているかに気づくことのほうが、
    もしかしたら、ずっと難しいのかもしれません。

    だから、ときどき地図を開く。

    自分が見ているものは、いまの景色なのか。
    それとも、いつかの時代にしまい込んだままの景色なのか。

    その確認を怠った瞬間から、
    知識は静かに、過去になっていくのだと思います。

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    思い込みは至る所にある


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    still.

     
     
    人生後半戦。 まだやっていないことを、これから少しずつ試してみたくて「still.」を設定。 ここは備忘メモと情報収集を兼ねた未完の進行録。 完成形を語る場所ではなく、動きながら輪郭を見ていく場所です。

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