
最後の一年 (23)
前話: 最後の一年 (22)|微風
第二章 10
一月の研究室は、廊下から扉一枚を隔てただけで温度がちがった。三浦は引き戸を開ける前に、片手で表紙のクリップを押さえなおした。製本した卒論の控えと、想定問答を書きつけたルーズリーフの束が、鞄の中で角を立てている。中で「どうぞ」と低い声がした。聞きなれた声だった。
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