『メタル幼稚園児(三歳)日記』 #09

本連載は、平均的な三歳児の語彙力とは裏腹に、なぜか「鋼鉄の魂(メタル・スピリット)」と「重厚なる批評精神」を宿してしまった一人の幼児による、あまりにもドラマチックな日常の記録である。
メタル幼稚園児(三歳)日記 #09
ねっとりとした異様に粘度の高い陰鬱な気分から抜け出せないままの状態が続いている。いくら梅雨とはいえ、たかだか三歳児の僕がこうもあからさまに沈み込んでいるのには理由がある。そう、ここ数日、寝しなの子守唄がわりに母に聴かされている、ドゥームロックやゴシックメタルの影響に違いないのだ。昨晩は確かカテドラルの『この森の静寂の中で』だったはずだ。
これはべつにハラスメントとかのたぐいでは無いことははっきり書いておかねばなるまい。簡単に言うと、「暑いときには熱いお茶を飲む」というやつだ。つまり、「寝苦しい夜には鬱々とした音楽を聴く」ということになる。理屈的には正しいような気はするものの、本当に梅雨のジメジメした気分が、VAN HALENの「PANAMA」や、DAVID LEE ROTHの「CALIFORNIA GIRLS」のMVを見た時のようなカラッとした気分になるのであろうか?
いや、そんな邪心でせっかくの母の気持ちを裏切るのは心苦しい。沖縄地方では梅雨も明けたと聞く。もう少し、この悪夢の一歩手前の状態に付き合うことも、一人前のヘヴィメタル・スピリットを持った幼稚園児としての貴重な修行になるに違いあるまい。僕は逃げも隠れもしない。覚悟は出来ている。さぁ、今夜も流したまえ、あの地獄のサロンミュージック達を。