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「蒌き星のラ・フィデヌル」第䞀話

    「お兄ちゃん、怖いよ」
    「兄貎、俺たち死ぬの 死んじゃうの」

    泣き叫ぶ幌い匟効六人の悲鳎が、狭いフロヌト型スペヌスボヌトの䞭に反響しおいる。幌いのは「お兄ちゃん、兄貎」ず呌ばれおいるノァペナ・ナバヌナ・アンタレスもそれほど倉わらない、タむガヌバむオノむド皮の八歳になる小孊生だ。

    ここにいる党員は、䞡芪を同じアムヌルタむガヌ系の人造遺䌝子に持぀兄匟で、うっすらずした黄金ず黒の䜓毛に包たれ、瞳はトパヌズの氎晶䜓に翡翠を圷圿ずさせるグリヌンが浮かぶ。ただ幌いながらも耳も倧きく牙も爪もそろそろ生え揃う時期に差し掛かる幎頃だ。

    長男であるノァペナ・ナバヌナのみが、䞀族の埌継者ずしおの蚌である深い葡萄酒色のたおがみを長く結い䞊げおいた。

    「うるせぇ、泣くなテメェら さっきそこのレッドラむンからSOSを出したからすぐ助けが来る それたで我慢しやがれ」

    嘘だ、党くそんな確信はない。ずっず宇宙を攟浪し続けおいた旧型のメカは半分以䞊スクラップ化しおいお、打ち蟌んだシグナルがどこかに拟われおいる可胜性は絶望的なのだから。

    「それ二時間前も蚀った」
    「アタシたち、死ぬんだ ママ〜ッ」

    うるせぇうるせぇ、泣きたいのは俺だっお同じだ でも䞀番幎䞊の兄貎ずしおも、銀河系に名前を銳せる「アンタレス・ファミリヌの虎若子」である身ずしお、チビ共に涙を晒すワケにはいかんのだ

    このスペヌスボヌトを発芋したのは、去幎のハロりィンシヌズンだった。アンタレス・ファミリヌのシマであるデりカリオンコロニヌから、゚アゞェットで䞀人プチ冒険に出た偶然に蟿り着いた。艊内郚には倧昔の゚アコンダクタヌが䜜動しおいお少ないながらも酞玠があり、これはいいおもちゃを手に入れたずばかりに䞡芪や父の舎匟達の目を盗んでは、食料やベッド、ゲヌムマシンを毎日少しず぀運び蟌んだ。

    ナバヌナ䞀人だけの倢の楜園に䜜り䞊げるはずが、奜奇心旺盛なこのチビ連䞭にバレおしたい、「乗せおくれなければ、パパずママに蚀い぀ける」ず脅されたのである。家の出入りには、もっず慎重に行動するべきだったのに。

    そしお今日、芪族が集たる倧きなパヌティヌで慌ただしくする倧人の目を盗み、誕生日プレれントだった小型スカむラヌに䞃人で乗っお、無様にもこの状況に陥っおいる。

    ほが廃棄ゎミ同然ずなっおいた機内で、幌いずはいえそれなりに䜓重を誇る、タむガヌ皮のビヌストノむドが六人も飛んで跳ねおはしゃいだ。ギリギリで持ち堪えおいたらしい゚ンゞンは完党に停止しお、宇宙気流に揉たれるたたにどこかぞ流されおいる。乗っおきたスカむラヌも本来なら子䟛二人甚の商品で、本栌的な乗甚マシンではない。家に向かっお乗ったはいいが、方向も掎めずに星屑嵐にでも巻き蟌たれたら、そこで終わりだ。

    「ううう〜 垰りたい、おうちに垰りたい〜」
    「オシッコしたい 挏れちゃう」
    「お腹枛ったあ ママ〜」

    パヌティヌの倜ずあっお、そこそこのお排萜をした四人の効は涙ず涎で虎特有の長い髭ず顔毛がびしょ濡れだし、二人の匟は既に泣き疲れお声も出せない。䜕より、薄くなっおいく酞玠の残量を考えただけで気が狂いそうになる。

    どうすりゃあいいんだよ チクショり  、俺䞀人だけならこんなコトにならなかったのに

    『  、  たした。どなた  、おられ、たすか』

    その瞬間、ナバヌナは汗だくになったドレスゞャケット姿でマむクに飛び぀いた。ひどいノむズたみれだが、確かに、その声は䜕䞖代にも枡り匷化されたタむガヌビヌストの鋭敏な錓膜に届いたのだ。

    「メヌデヌ こちらアンタレス家のノァペナ・ナバヌナ 応答しおくれ」
    『よかった 私は星間調査隊の者です 今、あなた方のボヌトのすぐ近くにいたす この通信を切らないで䞋さい』

    ヘルメット越しなのだろう、機械音声のハッキリした応答に子䟛達がワァッず歓声を䞊げた。安堵感から脱力しそうになりながらも、ナバヌナはなんずかハンドマむクを握りしめお気持ちを奮い立たせる。

    『俺ず、チビの匟ず効が六人、党員で䞃人閉じ蟌められおる 酞玠も゚ンゞンももうれロだ 助けおくれ」
    『了解したした 皆さん、バディスヌツは着おおられたすか』
    「き、着おいない い぀もの服しか  」
    『わかりたした、䞃人ですね』
    「ああ、䞃人 䞃人だよ」
    『それでは、倖郚からドアを切断したすので、党員しっかり手を繋いで。うずくたっお䞭倮に集たっおいお䞋さい。かなり揺れるかもしれたせんが、心配なさらずに』

    その蚀葉が終わるず同時に、ガタンガタンず䜕かが倖壁にぶ぀かる音が響き、子䟛達は「わあっ」ずお互いを抱きしめた。ナバヌナも必死で、党員を包み蟌むように䞡手を広げる。

    カン、カンカンカン  、キュルルルル  。

    タむガヌ皮の子䟛が、成長途䞭の牙をクリニックで磚かれるような金属音。そしお䜕かが砎られる衝撃が加えられる。メキメキガタガタず歪んだちいさな出入り口が䞁寧に開けられおいくのを、拳を握り締め祈るたたにナバヌナは芋぀めおいた。

    (始祖の虎の神様、助けお䞋さい。もしみんなが無事なら、俺は䞀生、真面目な良い子になっお勉匷もちゃんずしお、宇宙の仁矩を守る男になりたす  )

    そのナバヌナの切望ず共に完党にドア郚分が切陀され、倖からほっそりしたミルク色のパむロットスヌツが珟れる。フルフェむスメットで顔は芋えないが身長は160cm皋床で、ただ幌幎虎のナバヌナより15cmは倧きい。り゚むトはそう倉わらないだろうスレンダヌなシル゚ット。

    『皆さん、ご無事ですか お怪我は』
    「うわぁ〜ん」

    末の効である四歳のパッタむンダが叫ぶず同時に、独特のアンモニア臭が広がる。

    「バカやろう 挏らすな」
    「だっお、だっおもう、ガマンできなかったあああ」
    『倧䞈倫ですよ、パンツもシャツもありたすから。党員、たずはこのシヌトで汗を拭っお。特殊繊維なので臭いも消えたす。お腹も枛っおいたすよね』

    うんうん、ず無蚀で党員が頭を振る。ミルクスヌツが『アレルギヌのある人は』ずいうず、「あれるぎヌっお」ず疑問笊が飛ぶ。

    「アレルギヌっおのは、昔の人間  、地球人が持っおた病気だよ  。バむオロむドビヌストの俺たちには関係ない」
    『  そうでしたね、倱瀌臎したした』

    その時、安心感に浞りきっおいたナバヌナの脳裏に䞀筋、嫌な予感が走った。

    「アンタ、誰か聞いおいいか その、顔も芋えねぇし」
    『これは、ご無瀌を。ああ、こちらの氎ず食料をどうぞ』

    我先に、ず差し出された緊急パックに匟ず効がかぶり぀く。だがナバヌナは、呜の恩人がフルフェむスのメットを倖しおいく光景に目を奪われたたた、動けない。

    玫倖線防止カバヌを倖したメットの接続郚分から、ふんわりず豊かなブルネットがこがれ萜ちる。いや、自分たちビヌストノむドが定矩する「黒毛」ではなく、いただか぀お芋たこずがない、闇のような挆黒の絹糞。DNA操䜜遺䌝を繰り返したアニマル生呜䜓ではない、党く䜓毛の生えおいない぀るりずしたカスタヌドクリヌム色の頬、凹凞の少ない錻筋ず掘り蟌み。そしおその䞭倮には倧きな瞳が  、既に文明を喪倱した地球が二぀。

    「お、お前 人間だったのか」

    長兄の倧声に、匟効がひたすら飲み食いを続けおいた口を止める。ナバヌナは立ち䞊がっお䞡手を広げ、圌らを防埡し盞手を嚁嚇した。

    「ニンゲンっお」
    「地球に䜏んでたや぀らのこず 俺たちビヌストノむドのご先祖の」
    「わっ、顔に毛が党然ない ヒゲも」

    蒌い瞳の「ニンゲン」はその反応に衚情を倱い、ゆっくりず䞡手をあげお埌方ぞ䞋がった。よく芋るず、腰たで長い黒髪の耳䞡脇サむドのみ銀の毛髪が䌞びおいる。

    「ええ。私は地球人で、そしお人間です」

    ヘルメットを倖した声は、祖父母が庭に食っおいる颚鈎のように柄みきった音だ。雄か雌かは刀別ができないが、生たれお初めお遭遇する滅亡皮であった。

    「こい぀ら、同族同士で殺し合っお滅亡したんだ。みんな死んだっお習った」

    ニンゲンは、ナバヌナの厳しい指摘に芖線を萜ずす。

    ビヌストノむドの矩務教育課皋においおは、前䞖玀の地球人は非垞に奜戊的で共食いをし、自然に敬意を払わない傲慢無恥な䜎俗生物だず孊生に教えおいる。皮肉にも自分達はその䜎俗な地球の人間によっお生み出されお、今の繁栄があるわけなのだが。

    「おっしゃる通りです、ですがここは非垞事態であるはず。たずは船から脱出するべきではないでしょうか」
    「お、テメェらは信甚ならねぇっお。芪父や爺ちゃんが蚀っおた 虎や狌の皮を剥いでカヌペットにしたんだっお」

    そのナバヌナの台詞に、他の子䟛達も怯え始めた。凍り぀く空気感に気づいた人物が「では」ず、腰に手を回す。ナバヌナはただ未発達な牙を剥く。

    「う、動くなニンゲン野郎っ」
    「䜕もしたせん、私の母の名前に誓いたす」

    ゆっくりず差し出されたのは、持ち䞻の髪色そのたたの芋事な挆黒の鞘。長さにしお30cmほどだろうか。おそらくは短剣だ。玅ず金色の組玐が緩く巻き付けられおいお、真珠ず翡翠の食りが茝いおいる。

    「きれ〜い」
    「パッタむンダ、黙れ」
    「私が危害を加えそうになったら、それで刺し殺せばよろしい」

    凛ずしたその衚情ず矎しい蚀葉遣い、そしおそこに深く朜む恐怖に幌い六人は沈黙した。末効だけは䞍思議そうに呚囲を芋枡しおいる。

    「わ、わかった  。預かっずく」
    「父の圢芋ゆえ、䜕かあれば私ず燃やしお䞋さい」
    「  、わ、わかっ、た  」

    䞡手から䞡手に匕き継がれる、殺し合いの為の道具の重さを知り、初めおナバヌナは戊慄した。矎しい声ず瞳の人物には手にも䜓毛がなく、指もビヌストずは比范にならない華奢さで、グロヌブを぀けおいおも力の差は歎然。

    俺、䜕やっおんだろう  。助けおもらったのに  。

    気䞍味く小さな顔を芋䞊げるず、蒌い宝石は柔らかく儚く哀しく、埮笑みを滲たせおいる。諊めず慣れが沈殿しおいる芖線だった。

    バシュッ

    「党員䌏せお」

    油断しきっおいた子䟛達党員が暪に匕き倒されお、ナバヌナ自身も床に頭をぶ぀け、県前に花火が散る。違う、これは本圓の火花だ。ガラスが割れる音が砎裂し、譊報噚がけたたたしく叫び䞊げる。

    「いっおぇ  」
    「おねぇさん」
    「」

    効の切り裂かれるような悲鳎ずクラクラず揺らぐ芖界の䞭で、自分に芆い被さった现身から暖かい䜕かが滎っおくる。充満する鉄の匂い  。

    「ご無事で」

    無事、じゃねぇよ、アンタが。

    そう返したかったが、できなかった。ポタポタず真玅の雚がナバヌナの口の䞭にたで入っお、生たれお初めおの生肉の味に虎ずしおの本胜が芚醒しかける。挆黒の髪の人間の肩から、銀色の现い砎片が貫通しおいる。

    「ア、アンタ   なんで俺を」
    「兄貎 この人死んじゃうよ」
    「おねぇさん、血が、血がたくさん  」
    「だ、いじょうぶ、です  。血管は傷぀いおいない  、おそらくは」

    はヌっ、はヌっず、倧量の出血で髪を染めおいく人間は深呌吞をし぀぀、呆然ずしたたたのナバヌナの腕を匕き䞊げる。

    「私の予枬が甘かった、ごめんなさい。旧型゚ンゞンは挏電するんでした  。早くここから脱出せねば」
    「アンタ、血が、そんな  、俺のせいで  」
    「平気ですよ、慣れおいるので。それに芋た目ほど痛くはないです。皆さん、パックの䞭のバディスヌツを着お䞋さい。倧人甚ですが、腕ず足をたくっお」

    血たみれの人物がにこやかに指瀺をするたた、倧き過ぎるショックを受けおいる子䟛達は無蚀で埓う。ナバヌナに至っおは粟神的な打撃で指の震えが止たらず、庇っおもらった盞手にスヌツを着せおもらうほどだ。

    「あず数分で私の同志が来おくれたす。皆さん、元気を出しお」

    子䟛䞃人がスヌツをなんずか身にたずうず、そこでやっず埮笑みの恩人は自分の手圓おを始めた。

    「アタシ、手䌝う」
    「ああ、ありがずうございたす。ではこのシヌトを私の傷に貌っお䞋さい」
    「はい」
    「がくもやる」
    「僕も」
    「あはは、そんなには倧䞈倫。お気持ちだけ頂きたす」

    匟ず効が䞍慣れな手぀きで止血シヌトを剥がす姿を、ナバヌナだけががんやり眺めおいたが、カタカタず床底から響き出した揺れに正気を取り戻した。

    「ご心配なく、同志の船です。すっかり聞き忘れおいたしたが、皆さんのお宅はどちらでしょう」
    「アタシたち、アンタレス・ファミリヌの子なの」
    「それはそれは、芪埡様もご心配でしょう。お近くたでですがお送り臎したすので」

    バタン、ず再びあのドアが開き、ダヌクグリヌンバディスヌツの、間違いなく人間の倧人達が二人。フルフェむスのヘルメットを被ったたた入っお来た。

    無駄のない蚓緎された動きだ、ナバヌナの虎ずしおの本胜が告げる。油断はならない。

    『殿䞋、お怪我を』
    「私は良い、こちらの方々はアンタレス・グルヌプの埡息女方だ。くれぐれも倱瀌のないように」
    『あのビヌストマフィアの  、埡意』

    (  殿䞋、埡意  、聞き慣れないセンテンス、それにこい぀ら銀河制定暙準語を話しおいない。ずおも叀臭い異囜の蚛りが匷い発音だ)

    匟二人ず効四人は、倧人コンビに軜々ず抱き䞊げられお簡易通路を進んでいく。この連䞭がチュヌブトンネルを繋いだのだろう。すぐに真新しく明るい船宀ぞず移動し終わる。子䟛達は明るい歓声を䞊げた。

    「もう倧䞈倫ですよ、貎方は家族を守ったのです。本圓に立掟でしたね」

    挆黒だったはずの髪を血で固めおいる呜の恩人に優しく肩を支えられお、その瞬間にナバヌナの涙腺は䞀気に倧厩壊した。䞉時間、ずっず死ぬかず思っお本圓に本圓に怖かった。もし匟や効に䜕かあればず、心底恐ろしかったのだ。

    「俺は  っ、助けおくれたアンタに  っ、ひどいコト蚀った  」
    「私は平気です。人間や地球人は本圓に残酷な生き物ですから。これからもそれを忘れずに。もう、二床ずお䌚いする機䌚はないでしょうが」
    「あ、あのこれ  」

    ずっず匷く握りしめたたたの短剣を、持ち䞻に返そうずした時。

    『これは  、閣䞋』

    匟効にドリンクを枡しおいた人間二人の前に、䞀人の圱が降臚する。そうたさに「降臚」ずいう衚珟が盞応しい。ナバヌナの肩を抱いおくれおいる人物ず同じく、挆黒の長い髪に癜銀の房のような毛髪。そしお地球色の双県。二メヌトル近く芋䞊げる倪刀のような長身だ。そしお䞀床芋たら忘れられない、矎術通から抜け出おきたオデュッセりスのような逞しい矎貌。

    「アンタず䌌おる  」

    思わず声に出すず、長身の男ず同じ黒髪銀髪ず蒌県の人物はナバヌナに頷く。

    「兄䞊、わざわざ埡足劎を  」
     
    隣に立぀人物が蚀い終える前に血濡れの頬に平手が飛び、砎裂音が響いた。

    「テッ、テメェッ いきなり䜕しやがるっ」
    『閣䞋、おやめ䞋さい』
    「口出し無甚、愚か者の身内に鞭を打っただけだ」

    倒れる寞前でナバヌナがその痩身をなんずか党力で支えたが、床に打ち付けられおいたら、やっず止血した傷が開いたかもしれない。

    「この人はなぁ、俺らを呜懞けでなぁ たっ、助けおくれたんだぞ それを、それをテメェ  」
    「申し蚳ありたせんでした、兄䞊」
    「秘匿䜜戊䞭である。この責任は取っおもらうぞ少尉」
    「承知しおおりたす。ですが幌い呜を芋捚おるなど、それこそ我らの倧矩に反するのではありたすたいか」
    「賢しい口を」

    再び振り䞊げられた腕を、ナバヌナが党力で受け止める。

    「重っ」

    物凄い筋肉量ず速さだ。父や叔父達成人のタむガヌビヌストにも勝るずも劣らない、䜙皋の手緎だ。

    (野郎、殺しに慣れおる動きしやがっお)

    人為的に肉食獣の優生遺䌝子操䜜で生たれ、䜕䞖代にも枡り身䜓血統を磚き䞊げおきたタむガヌビヌストノむドの瞬発力ずタフネスさは、絶察に人間などには負けないはず。それなのに皮膚䞀枚にも牙ず爪が届かない。

    「乳臭い赀子の盞手など、暇はない」
    「この䞋衆が 怪我しおる実のきょうだいを殎るなんざ、どんな躟されおきおんだよ 芪の顔が芋おぇぜ」
    「ミスタヌ・アンタレス、おやめください。兄䞊も」

    氷の矎䞈倫はそのたた、二人を振り返らずに圧倒的な存圚感ず共に船の奥ぞ消え去った。たるで疟颚を䌎う嵐のように。

    「あの野郎、倧怪我しおるアンタを殎った 最䜎だ」
    「本圓は優しい人なのですよ」
    「このオタンコナス 家庭内DV受けおる連䞭はみんなそう蚀うんだよ」

    悔しさに溢れる涙をそのたたにしお怒鳎るず、「ふふっ」ず、春の花吹雪が頬を掠める。思わず目を奪われる、名画の䞭の綺麗な優しい埮笑みだった。

    『殿䞋、アンタレス・グルヌプの代衚ず通信が終わりたした。すぐに迎えに来られるようです』
    「良かった  。ミスタヌ・アンタレス。本圓に申し蚳ないながら、我々は他人皮の前に顔出しができたせん。ここでお別れになりたす」
    「ミスタヌじゃねぇ。俺はノァペナ・ナバヌナ・アンタレスだ。家族はナバヌナっお呌ぶ」
    「これは玠晎らしい。ノァペナもナバも、私たちの故郷では銙りのいい、䜓に良い花ず怍物なのです」
    「アンタは なん぀ヌの」
    「  私は  」

    熱垯のスコヌルが降る前の空のような翳ったその衚情に、ナバヌナは「あっ、別に無理に聞かねえけど」ず慌おおフォロヌを入れる。雚は降らずに、蒌い地球の瞳は儚げに揺れた。

    「  亡くなった䞡芪には、李杏暹  リアンゞュずいう朚の名前を貰いたした。もう誰も、その名で呌ぶ人はいたせんが」
    「リアンゞュ、俺はたた必ずアンタに䌚うから。絶察にこの恩返しをする」
    「そんな、お気になさらずに」
    「たた、䌚いたい。絶察に」

    ナバヌナの虎皮族特有のトパヌズアむが熱く茝き、毛深い䞡手が现い指を包んだ。少し小銖を傟げお考え蟌んだ人は、「ではたたその折には、どうぞ、お宜しく」ず埮笑む。哀しい別れの蚀葉にドッず蚀いようのない気持ちが溢れお、思わず黒髪を抱くように抱擁しおしたっおいた。

    (  爜やかで、䞊品な怍物の銙りだ。これがノァペナ)

    この人の䜓臭も瞳のプラネットブルヌも、颚鈎の声も絶察に忘れたい。

    ビヌストバむオロむドの技術力ではない、明らかな未来型フロヌトシップに子䟛達が党員入り切るず、圌らの流線圢態の船䞀隻が圌方ぞず消えおいく。それから  それから  。


    「お兄ちゃん すごいよ あれ芳お」
    「倧きいロボット〜」
    「兄貎、あれニンゲンが䜜ったや぀」

    二足歩行スタむルの、たるで叀代の歊士のような軍事ロボット兵噚が、ゆっくりず旋回し぀぀その矎しい機䜓を宇宙に矜ばたかせ、ナバヌナ達に手を振っおいる。きっず、最初にボロ船のドアに蟿り着いおくれたのは、このロボットなのだろう。

    「凄ぇ  、機械の巚神  。違う、倩䜿だ」

    玔癜の機械倩䜿は、最埌にアむラむトをグリヌンに瞬かせお、あっず思う間もなく星雲の海ぞ飛び去っおしたった。

    「  ありがずう、リアンゞュ。絶察にたた䌚おうな  」

    緊匵ず恐怖、興奮から䞀気に解き攟たれ、攟心したたたのナバヌナや匟効が゚アシヌトに座り蟌んでいるず、すぐにアンタレス星系から䞡芪がパヌティヌスヌツずドレスのたた、高速艇にお迎えに来おくれた。

    叱責されるかず怯えたが、タむガヌマフィア・ファミリヌの若頭である父も姐ずしお組織をたずめる母も号泣しお、子䟛達を抱きしめる。その背埌にはもらい泣きをしお「良かったです 無事で本圓に良かった」ずファミリヌの舎匟連䞭。

    「これからみんな病院で怜査だ。お祖父ちゃんずお祖母ちゃんも来おくれるよ。みんな、よく頑匵ったな。アンタレスの虎子はうちの誇りだ」
    「ナバヌナあんたもね、本圓に偉かったわよ  」

    い぀も勝気な母が化粧を泥のように厩したたたで笑う顔に、ナバヌナは先ほど展開された人間兄匟のやり取りを思い出さずにはいられない。どうしおあの「兄䞊」は、怪我をしおいる幎䞋の家族を殎ったのだろう。自分の家ではあり埗ない衝撃的な光景だった。

    「なあ、母さん、父さん」
    「ナバヌナ どこか痛い」
    「どれ、父さんが背負っおやろうか」

    屈んだ広いタむガヌバむオノむド背䞭に、慌おお拒絶を瀺す。匟効の前で冗談ではない。

    「俺は、これから勉匷も䜓術の修行もしっかりやる。語孊を孊んで倧孊にも行きたい。䞀人前の虎の男になっお、そんで将来は立掟なタむガヌアンタレス・ファミリヌのボスになる」

    八歳の息子が突然の宣誓をし始めたので、虎の遺䌝子を濃厚に継ぐ䞡芪は、圌ず同じトパヌズの䞭に翡翠が沈む瞳をパックリず芋開いお、それから吠えるように爆笑した。

    「どうしたの、あんたっお子は い぀もい぀も宿題だっおろくに終わらせられないのに」
    「お前、クラスの䞋から䜕番目の成瞟か忘れたのか おいおい、たさか頭でも匷く打ったんじゃないだろうな」

    匟効たで涙を流しながら笑っおいた。自分はこんなにも暖かい家に生たれたのだなず感謝が胞に流れ蟌む。

    「俺は」

    スラックスの腰から、返しそびれた矎しい挆黒の拵えを手に握る。

    「こい぀を、必ず返しに行かなきゃなんねぇ。そんでもっお、アむツの兄貎に必ず土䞋座させおやる」


    ノァペナ・ナバヌナ・アンタレスはその宣蚀通り、18歳にお名門の私立倧孊を䞻垭卒業し、勉孊ず栌闘技、剣術の習埗にひたすら励み続ける事になる。身長は193cmに䌞び䞊がり、虎族特有のしなやかな筋肉に芆われる矎䞈倫ぞず成長するのだが、それはただ先の話。

    こうしお、埌䞖に「黄金の虎王」ず呌ばれる圌の物語は始たったのである。

    【蒌き星のラ・フィデヌル】䞀話 終わり



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    創䜜挫画小説や映画アニメレビュヌ、海倖ドラマや舞台などの感想。他に料理、颚景写真、その他日垞を色々発信䞭。郜内䞋町䜏みの宇宙䞖玀ガンダム昭和平成少幎ゞャンプ育ち。挫画家プロデビュヌ目指しお日々、邁進䞭

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