メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ファンガスマン|第五章 #6

    ファンガスマンの夜明け(6)

    前回の話

    スターチス、挑まれたポエム対決、受けてやるぜ。今この瞬間を炙り出してやる。

    「いいぞ、崇。ファンガスマンの苦悩をぶちまけろ!」

    ✳︎     ✳︎     ✳︎

    罪

    縄をなう母
    網をかける父
    暗雲を招くシスター
    モグラたたき精神が滲みついた級友
    不透明な絵の具で塗りこめられた鏡の俺

    否応なく 
    それと気づくことなく 
    自覚させられた 
    共同作成の俺は 妖怪

    誰かの良心を慰め 
    誰かのストレスのはけ口となる
    課せられた役割を 
    己の本分と信じ全うする

    皮膚は分厚く 
    多層で多色
    鼻孔には粘膜がはりついて 
    息も絶え絶え

    みなは それを愛してくれます
    動きやすいようにと手取り足取り誘います

    「レッテルスロットって知ってる?」

    その日のレッテルをスロットマシーンで作り
    背中に貼って晒し者になるって遊び

    思考とは無関係にレッテル通りの想念が頭の中を駆けめぐるんだってさ
    みんな善意を持ち寄って
    嘘も方便 俺を祭り上げる

    やけに喉が渇く 口が粘りだした
    目の前が ゆっくり揺れている

    機械音が鳴り響いて何かが俺の中心をどこまでも落下していく

    これは俺の障害物競走

    今日のレッテルは何だろう

    ✳︎     ✳︎     ✳︎

    以上、これが俺のポエムだ。

    内なる悪を意識する俺は、内なる神を信じている。嘘みたいな本当の話。俺はこの部屋で世界と渾然一体となり不信を内包しつつもがき苦しんでいたのさ。

    「カシャカシャ、マークアップ完了、ううぅ」

    どうしたスターチス、さっきまでとは打って変わって他人行儀だ。さては俺が投下したポエム爆弾に恐れをなしたな。

    ハッハッハッ、ポエム対決は俺の圧勝とみた。
    世界を救うヒーロー『ファンガスマン』誕生前夜を祝おうじゃないか。

    「カシャカシャ、テーマは凱旋、んんっ」

    どうしたんだろう。
    俺に負けたのが悔しいのかな……。

    抑揚のないロボットじみた声を合図に、壁一面に凱旋ポイントを繋いだ道筋が示された。

    初めて挫折を味わい引きこもるきっかけになった中学のグラウンド、誰も遊ばずの公園、唐揚げを囲む会での新しい出会い、駆られる世界、ツクヨミ遊園……。

    「カシャカシャ、過去を再解釈して無害化したドキュメントが始まるぜ、ええぇ」

    無機質なスターチスの解説とともに、それは始まり、心の底深くを揺り動かした。

    シャカリキになって辻褄を合わせる俺が壁一面に投射され、さまざまな思いがこみ上げた。

    スターチス相手に自己完結して、大袈裟な悔恨の涙を流す不面目な生活は、誰のせいでもない。成長の過程で加えられた外圧の影響から脱する事が出来ず、停滞と混乱の果てに逸脱したまで。

    結局は、ただ自分で業を深めただけのこと。見ないふりして放っておいた自分のせいさね。

    足早に歩く俺が映る。駆られる世界からの帰り道、角を曲がると、上へ上へと枝を茂らせながら狭く尖った円錐を形づくる木が、細く長い影を地面に落としている。

    焼印のように黒々と前方に伸びる影は一本の時間軸になり俺の家を指し示している。

    誰も遊ばずの公園の向こう側、遠くのほうに巨大な岩山が見える。言い伝えでは、はるか昔、隕石が衝突して地面に突き刺さりモニュメントになったというが、表層から顔を出した厚顔無恥な岩肌は、純真で素朴な傷つきやすさを深層に隠している。
    アイデンティティの象徴として、身を以て俺に教え諭しているようだ。

    「カシャカシャ、隕石の教え、ええぇ」

    つまり、生きなおすために必要なのは方向転換でも時を戻すことでもない。剥き出しの柔肌を世間に晒して生きる、結局のところ俺に打てるのは、その一手ってこと⭐️

    次のエピソードはこちら

     
     
    完全にマイワールド、没入感💯%のままアップするつもりが停滞中😢気力が復活したら少しずつ補完していく予定なので、お気軽にのぞいていただけると嬉しいです⭐️

    あなたへのおすすめ