愚行録
灯りの消えかけた街
風に押されて
わたしたちは また逢った
あなたの声が
心ではなく 喉元で止まっていたのに
わたしは
その無理を 愛おしいとすら思った
グラスの氷が溶けていくたび
わたしたちは
正しさから すこしずつ遠ざかる
ふたり分の靴を並べて
何も言わずに鍵をかける
あなたはわたしの肌に 触れ
わたしはそれに 吐息で答えた
背中を這う 爪の痕
首すじに残る 噛み痕
ひそやかな破壊音のなかで
あなたを受け入れるたび
わたしは 世界をひとつ壊していた
わたしは
あなたが名前を呼ぶ唇を 指で留めた
だめ… 覚えなくていい
どこかで すべてを壊す気がして
怯えているあなたを わたしは知ってる
時は 熱く 儚く過ぎて
煙草に火をつけるふりをして
目を合わせないあなたを
わたしは何度 見送ってきただろう
この 悪いひとを
愛してしまったのは
わたし
悪いのは わたし
あなたの日々に
わたしがいなくても
今宵の温度だけが
わたしを 裏切らないと信じた
求めるより 奪いたい
埋まらない空洞がある
歪んだわたしの有り様を
誰にも 赦しは請わない
それを
性と呼ぶには あまりに愚かで
愛と呼ぶには あまりに歪んでいた
あなたが去った部屋の中で
まだ熱を残すシーツの上
わたしは 目を閉じて
その不在を 抱いていた
そしてまた
ひとつ 夜が増えた
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