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わたしは わたし


あの夜 わたしをさらった音

最初のリフで
胸のどこかがざらりと剥がれた

言葉じゃない
叫びでもない
でも わたしの中にあった何かが
その音に 引きずり出された

意味なんて 全部わからなくていい
だけど
あの気怠い声は 
わたしの奥の 名前のない感情に
ちゃんと触れてくれた

歩き疲れたまま 身体を投げ出し
ヘッドフォンだけが世界とつながる

ここにいる でも どこにもいない
瓦礫のような日々に
あの音だけが
わたしを見つけてくれた

怒りでもなく
涙でもなく
ただ
壊れたいような
壊されたくないような
ぐちゃぐちゃなまま
わたしは 音に沈んでいった

歌ってるのは わたしじゃない
でも わたしだった

無言のわたしの 心のかわりに
誰かが 世界に牙をむいてくれてた

このどうでもいいようで
どうしようもなく苦しい日々
わたしの中にくすぶる煙のにおいを
カートの声が 嗅ぎとって
叫んでくれていた

「Smells Like Teen Spirit」
それは 青春の香りなんかじゃない

まだ火がつききらない
わたしの 火種のにおい

それでも それがあるかぎり
わたしは わたし



マガジンに掲載していただきました✨










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