水脈
指先は 揺蕩う雲の縁を
そっとなぞるだけ
それだけで
眠れる泉が 密やかに息を吹き返す
薄絹の下で 潜んでいた熱が
ゆっくりと立ちのぼり
空気は重く 甘く沈み込む
遠い雷鳴のような脈動が
大地の底から胸の奥へ 響いてくる
触れているのは
肌でも夢でもなく
時の底を漂う 温かな水脈
そこから湧き出す光が
骨の奥まで 静かに染みてゆく
吐息が ひとつ
またひとつ
触れそうで 触れないところで絡み合い
その境界は
光を孕んだ闇のように 深く脈打つ
ひと雫がこぼれれば
夜は 星を孕み
闇の花が 静かに綻ぶ
その大地を開く風は
自分だけの呼吸
その瞬間を抱きしめたまま
深奥から押し寄せる大波を
何度も 何度も
両の手で受け止め
離さなかった
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