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3分で読めるSFショートショート第19話後継者アルフレッド・マカローニ

    帝国には十二人の王位継承候補がいた。

    将軍。

    学者。

    発明家。

    大臣。

    英雄。

    誰もが優秀だった。

    誰もが王になるための努力をしていた。

    ただ一人を除いて。


    アルフレッド・マカローニ。


    彼は王位継承候補でありながら、

    なぜか毎日カブトムシを探していた。

    三十歳を過ぎても探していた。

    四十歳になっても探していた。

    王宮の庭。

    森。

    川辺。

    山奥。

    どこに行っても探していた。


    「殿下」


    「何をなさっているのですか」

    「ヘラクレスを見つける者が王になるという逸話を知らないのか?」

    「そうでしたか、、、、?」

    他の候補者たちはため息をついた。

    「なぜ彼が、後継者候補なのだ、、」

    誰もがそう思った。


    ところが。

    老皇帝だけは違った。

    ある日、

    継承候補たちを集めて尋ねた。

    「帝国が滅びそうになったらどうする」


    将軍

    「軍を率います」

    学者

    「知恵で導きます」

    大臣
    「制度改革を行います」


    アルフレッド
    「逃げます」


    老皇帝は笑った。

    なぜ笑ったのか、

    誰もわからなかった。


    そして翌年。
    「後継者はアルフレッド・マカローニとする」


    帝国中が驚いた。

    本人も驚いた。

    「え?」

    「なんで?」

    老皇帝は何も説明しなかった。


    戴冠式。
    盛大だった。
    花火。
    祝砲。
    パレード。
    歓声。


    だが、継承した翌日。


    世界最大の銀行が破綻した。

    「え?」

    穀倉地帯が大干ばつ。

    「え?」

    主要同盟国が内戦。

    「え?」

    疫病。

    不況。

    失業。

    暴動。


    全部来た。


    アルフレッドは静かに立ち上がった。
    「ちょっと待て」

    大臣たちが顔を上げる。

    「ちょっと待て待て待て待て」

    「昨日まで普通だったよな?」


    「普通でした」

    「昨日まで平和だったよな?」

    「平和でした」

    「じゃあ何で今日こうなってんだよ!!」


    ドゴォォン!!

    机を蹴り飛ばした。


    壁を叩いた。


    扉を蹴った。


    窓を開けて叫んだ。

    「ふざけんなぁぁぁぁ!!」

    「俺まだ王になって二日目だぞぉぉぉ!!」

    「新人だぞぉぉぉ!!」

    「研修期間だろ普通!!」


    帝国中に響くほど怒った。


    すると。

    蹴り飛ばした机の裏から、

    歴代大臣たちの隠し帳簿が見つかった。

    巨大汚職発覚。

    隠し金庫の存在が明るみとなり

    財政問題改善。


    その翌日

    食料不足。

    「陛下!」

    「食糧庫が空です!」

    「知らん!!」

    馬に飛び乗る。

    「何で継いだ途端になんだよぉぉぉ!!」

    山を越え

    谷を越え、

    崖を越え、

    森を突っ切る。

    「ふざけんなぁぁぁ!!」

    その先で、

    帝国最大の未開拓農地を発見。

    食料問題解決。


    歴史家。

    『王による偉大なる視察』

    違う。癇癪である。


    さらに戦争。

    「陛下!」

    「隣国が攻めてきます!」

    「だから何で全部一緒に来るんだよぉぉぉ!!」

    単身で敵国へ向かう。

    「お前ら空気読めぇぇぇ!!」

    「こっちも忙しいんだよぉぉぉ!!」

    「チヤホヤ期間があるはずだろうに」

    「銀行!」

    「干ばつ!」

    「疫病!」

    「戦争!」

    「順番に来い!!」


    二時間怒鳴った。

    敵国王。

    「・・・すまん」

    なぜか和平成立。


    歴史書。
    『伝説の和平演説』


    九割文句だった。


    そんなことを20年続けた。

    災害。
    「ふざけんなぁぁぁ!!」
    解決。

    暴動。

    「ふざけんなぁぁぁ!!」

    解決。

    疫病。

    「ふざけんなぁぁぁ!!」

    隕石。

    「もう知らんわぁぁぁ!!」

    いつしか国民は彼を呼んだ。

    『厄災王』

    そして、

    『救世王』

    とも呼んだ。


    本人だけは納得していなかった。

    「絶対おかしい」

    「絶対俺が原因だ」

    六十五歳。


    アルフレッドは退位を決意した。

    「次の王に譲る」

    国民は泣いた。

    「陛下!」

    「行かないでください!」

    「帝国にはあなたが必要です!」

    アルフレッドは首を振った。

    「いや」

    「たぶん必要ない」

    「むしろ逆だ」

    退位式。

    王冠が次代へ渡る。


    その翌年。

    帝国史上最大の豊作。


    翌々年。

    帝国史上最高の好景気。


    翌々々年。
    百年続いた国境問題解決。


    疫病消滅。

    犯罪激減。

    株価上昇。

    出生率回復。

    魔物まで減った。


    歴史家たちは混乱した。

    「説明がつかない」

    「なぜ退位後に」

    「全部良くなったのか」


    老いたアルフレッドは、

    川辺でカブトムシを探していた。

    「やっぱりな」

    付き添いが尋ねる。

    「何がです?」

    アルフレッドは高らかに笑った。


    「ハッハッハッハ」

    「?」


    ようやく見つけた大きなカブトムシを手に取り


    「これを見つける前に王になってしまったからか、、、、ハッハッハッハ」



    アルフレッドから王位継承した

    ウァイン・ヴァルモン王の兜には

    ヘラクレスオオカブトのブローチが輝いていた

     
     

    Blue

     
     
    SFショートショートが自分の中で1番しっくりくるスタイルだなと、40年生きてきて、辿り着いた気になっているので、現在はSFショートショートをまず100本書き上げる事を日々のライフワークとしてやっています!

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