
GW前の静けさが、眠れなかったあの頃の夜を連れてくる
平日の昼下がり、
最寄の駅ビルに立ち寄ると、
いつもの賑やかさがまるでない。
ふと、明日からGWなのかと気づく。
GW目前の街は、どこか静けさをまとっている。
休暇を控えた人々が、解放のエネルギーを臨界点まで溜め込んでいる。
そんな感じだ。
既に遠方で羽を伸ばしている人もいれば、
週末からの連休を心待ちにしている人もいる。
中には、休みなく働かないといけない人もいるだろう。
また、休日こそが稼ぎ時という人も多くいる。
その中には、今から張り切っている人もいれば、
ため息を漏らしている人もいるに違いない。
同じ時間軸に、あらゆる人々の感情が波となって押し寄せる。
その波間に身を浸していると、子供の頃の記憶がよみがえる。
***
わたしは子供の頃、寝ることが嫌いだった。
布団に入っても、一向に眠りにつくことができなかったからだ。
天井の模様を観察したり、
常夜灯の明かりを、ぼんやり眺めて時間をつぶす。
それでも足らず、世界中の人々の感情を想像する。
今この瞬間、生を受けた人がいる。
今この瞬間、生を終えた人がいる。
今この瞬間、戦地で戦っている人がいる。
今この瞬間、平和を神に祈る人がいる。
それらは一体、どんな感覚だろうか?
深く潜りすぎて、得体の知れない恐怖に襲われることもあった。
部屋の暗がりが、さらにその恐怖を増幅させていた。
この恐怖から逃げ出したくなるといつも、
きらびやかな夜の街が浮かび上がる。
気づけば、わたしの意識は夜の街に繰り出していた。
今この瞬間、布団に潜るわたしがいて、
近くの街では、飲み明かし賑やかな時間を過ごす人々がいる。
静寂と喧騒が、同じ夜の中に並ぶ。
その事実に不思議な感覚を抱きながら、
次第にわたしは、深い眠りに入っていった。
秒で眠れる今となっては、
そんな日々も懐かしい思い出だ。
***
まばらに人が行き交う店内を足早に抜け、目的のスーパーに入った。
いつもは混み合う時間なのに、今日は数えられる程度の客入りだ。
手早く商品をカゴに入れて、レジへと向かう。
少し暇そうなレジスタッフが「どうぞ」と小さな笑顔で視線を向けた。
そんな姿に、連休中もお仕事なのかな?なんて、余計なことを考える。
感情を味わう癖は、今も変わっていない。
子供の頃は、押し寄せる感情の波に萎縮していた。
今は、その波に身を委ね、揺れる自分をただ眺めている。
今日の調合はたぶん、
借り物のワクワクが3割。
借り物の失望感が1割。
GW直前に仕事が入った絶望感が6割。
駅ビルを出ると、厚く重たい雲が雨を連れてくる間際だった。
早く帰ろう。
お留守番の猫が待っている。
今日の仕事も待っている。
わたしは小さくため息をついた。
今日の処方
「せめて意識だけでもバカンスへ。」