
Second Wind|第23話 重なる影[イクス]
Second Wind
第1章『Superstar』
第23話 重なる影[イクス]
「美術商などをしていて今さらですが……、視覚から入ることって、やはり一番こたえるものなんですね」
僕はハンドルに手をかけたまま、マンションの自動ドアを今まさに通り抜けようとしている長身の男を視界にとらえていた。
彼女の声は、弱々しく消え入りそうにも聞こえたが、それでいて、変に明るい強さを秘めていた。
「……失礼しました。突然おかしなことを。変に思われたでしょう?」
「……」
「今日はとても楽しかったです。ありがとうございました。……ではまた、次の水曜日に伺います。」
無言でいる僕に、彼女は重い空気を振り払うようにそう告げると、シートベルトを外してそっとドアに手をかけた。
次の瞬間。
「……!」
僕は彼女の肩に手をかけ、おもむろに自分の方を向かせると、素早く彼女の唇を奪った。
咄嗟のことに、目を見開く彼女。
そして――
「何を……、するんですか……」
僕の胸に両手を突いて、彼女は突き放すように押し返す。
しかし口元に悠然と笑みを浮かべて、僕はこう言い放った。
「……畏れず帰ればいい。彼のもとへ。これで貴女も、彼にひとつ秘密ができたでしょう。」
*続き | 第24話 残された余韻[唯]
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