
Second Wind|第5話 予感[唯]
Second Wind
第1章『Superstar』
第5話 予感[唯]
「あら、思ったより早いお戻りね。珍しいこと。」
控え室に戻ると、撮影台本を掲げたマネージャーの京子さんがニッコリ笑って嫌味たっぷりに出迎えてくれた。
「遅くなってごめんなさい。今日はちょっと…、先客がいたものだから。」
「あら、それはまた奇特な人がいたものね。徹夜明けで逃げ出してきた新米スタッフか何か? この業界に、貴女以外にそんな変わり者がいたとはね。」
私は何も答えず、ただ小さく肩だけすくめて見せた。
けれど面白そうに笑う京子さんの目の奥が、今一瞬光ったような気がする。
……この人は、本当に鋭い。
「まぁ、いいわ。それよりいつもの儀式ができなかったことの方が問題ね。すでにもう押し気味だし、撮影は長丁場になるわよ。大丈夫?」
「ええ、まあ、多少の気分転換にはなったと思うから。…大丈夫でしょう。私は〈有石唯〉だもの。」
そう諦めたようにそっとおどけてみせると、京子さんは目を細めてフッと笑った。
「そうね。あなたが〈天才〉と呼ばれる本当のゆえんは、才能だけじゃない、どんな仕事もやり遂げるその精神力にこそあるのよね。」
その時、何人かの足音と共に、部屋をノックする音がした。
*続き | 第6話 春の女神[イクス]
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