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男の子だってバストアップしたい話

    薯蕷粽(とろろちまき)

    迷惑メールとは無縁だった私のdocomoメールが、その日を境に死んだ。

    迷惑メールというものは多くの場合、悪意あるサイトやサービスにメールアドレスを不用意に登録してしまうことがきっかけで届くようになる。
    胡散臭いページに釣られない賢明な人間には迷惑メールは届かないはずだ。

    どういう奴がそんな低級な罠に引っかかるのかと思っていたが、私のような人間が引っかかるのだった。


    ある日、「あなたに合ったバストアップ診断」というネット広告を見つけた。

    私には女心が分からぬ。
    けれども邪悪とバストに対しては、人一倍に敏感であった。

    馬鹿馬鹿しい。
    現実的なバストアップ方法など、太るかベンチプレスするか以外にはあり得ないのだ。
    人のコンプレックスにつけ込む卑劣なビジネスに腹が立った。
    どうせありきたりで中身のない質問を並べ、取って付けたような軽薄なハウツーでお茶を濁すに違いない。
    そうだ、私が診断を受けてやろう、私をバストアップしてみろ。


    そう思って鼻息荒く広告ページを開いたのだが、予想外の展開となった。
    アンケートの一問目が、「あなたの性別は?」だったのである。

    虚を突かれた。
    女性をターゲットにしているに違いにないと決めつけて相手を試そうとした私は、最初から相手の手のひらで踊っていたのだ。

    敗北に打ちのめされて質問に答えていくと、ページの最後には
    「↓↓↓のアドレスに空メールを送って結果をチェック★☆」
    と書いてあった。
    自分自身に失望していた私は、それ以上考えることを、戦うことをやめて指示に従った。


    その日を境に、怒涛の勢いで迷惑メールが届くようになった。
    せっせと迷惑メールを削除しながら育乳のイメトレを続けたが、待てど暮らせど私に合ったバストアップ方法は届かなかった。


    迷惑メールが来るようになったことは自分の負けなので仕方がないと思っている。
    しかし、バストアップ方法を教えてもらえなかったことについては未だに納得していない。


    (799文字)


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