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狂気の女たち

    人間の感情を4つに分けるなら、喜怒哀楽だと言われているが、私の母親にはそれらに加えて「狂」があるんだな、と32歳になった私は気付いた。逆に言うと、32歳になるまで気付かなかった。母親は誰にだって1人しかいないから。
    それがどういうことか説明するには、すごくエネルギーがかかる。

    あー、本当にダメなんだなと思ったのは、大学生くらいになった時に、買い物をしていたら、母が隣にいて、高いところにある商品を取ろうと手を上げた時に、無意識に私は目を瞑った。これがどういうことか分からない人は、素敵な親に育てられたんだろう。
    母のことはいつか書きたい。

    今日は妹に会ってきた。妹は私の6個下だ。妹はシングルマザーで、今の彼氏の子供を妊娠している。腹違いという単語は耳馴染みが良いが、「種違い」の子供が生まれる。「種違い」は急に下品になる。なぜだろう。

    私自身、自分の人生で精一杯なタイミングがあり、妹は気付いたら、シングルマザーだった。結婚、出産、離婚を1年で全て経験していた。それらが母を狂わせたわけではないが、その後
    もいろいろあって、妹と母はほぼ絶縁状態だった。本当にいろいろあった。母にも妹にも私は呆れている部分だってある。でも1番腹立たしいのは、私たち娘の気持ちより、孫が可愛くて仕方ない母だ。しかもそれを隠すこともしない。親が嫌いな子供なんていないのに。

    でも、そんなこと言ってる場合じゃなかったのだ。母、妹、そして父、それぞれと私が何度も何度も話し合い、ようやく妹の2人目の出産サポートに母は前向きになったようだ。ここに至るまで、私の時間もエネルギーもたくさん使った。

    母と妹がある程度和解してくれて、それは本当によかった。

    妹は私に感謝してくれている。直接的には何も言ってこないが、何となく伝わってくるものがある。
    別に感謝されたかったわけではない。甥っ子が可愛くて、可愛くて、そして可哀想なのだ。私がやりたいことをやった。「私のやれることしかやらないからね」と妹には何度も伝えている。その言葉を私は体現しているだけだ。

    だから、見返りなんて求めていない。求めてはいけない。

    それでも、母と妹から「いろいろありがとう。ごめんね。」という言葉が欲しかった。「ありがとう」を欲しがる私はさっき、妊娠検査薬を握りしめていた。

    お腹をさすりながら、「ありがとう」と「ごめんね」を言える子になってほしいなと思った。

    私はピルを服用しているので、妊娠はしていない。ピルのせいで生理が来ていないだけとは分かりつつ、この夏はセフレに溺れていたので、念の為に使った真っ白な妊娠検査薬の窓を見つめていただけだ。

    なんとなく、冷たいものでスッキリしたくて、私にしては珍しくスタバに寄った。ドライブスルーで「エスプレッソアフォガードフラペチーノ」を頼んだ。

    この暑さのせいで、受け取った瞬間からなぜか、変に溶けたフラペチーノを飲みながら、私は冷たい現実をかき混ぜた気がした。

    この暑さは10月まで続くらしい。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
    34歳、バツイチ、躁鬱の物書き ど田舎の神童、国公立大学卒業、教員、起業、リクルート、ベンチャーを経験して、現在は東京暮らしのフリーランス 恋愛も、仕事も、人生も、 「ちゃんとした人生」から少しはみ出しながら生きています 失敗も、再出発も、寂しい夜も、 あとから笑える文章へ

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