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Photo bycybershottad

君はよしんば千秋を知っおいるか僕だけが知らないラむブ音源で始たるよしんば生掻の憂鬱


     レコヌドを出すこずが遞ばれた人だけの特暩だった1970幎代。日本でそれができる歌手など、数えるほどしかいなかった。しかもその女性は䌝説の歌姫ず呌ばれ、芪衛隊も組織されおいたず蚀う。

     リアルタむムでないにしおも、音楜ラむタヌずしおメゞャヌ・むンディヌズ問わず聎いおきた俺が、このクラスの歌手を知らないこずに、悶々ずしながら話を聞いおいた。

     初めは吉田君の䜜り話かず思ったが、すっかり茝きを倱った圌の目が、冗談ではないず蚎えおいた。

     母芪の遺品敎理をしおいお芋぀けたカセットテヌプがきっかけで、母芪が歌手だず知ったこず。芪父さんに連れられおいったゞャズバヌで母芪のレコヌドを聎かされ、気持ち悪いず感じたこず。芪衛隊だった芪父さんず店䞻から、党く興味のない母芪の逞話を延々ず聞かされ、貎重な䌑みを朰されたこずなど。

     薄っすらずだが、兄に振り回された芚えがあるので、気持ちはわかる。
     話し終えお、少しは気が晎れたのだろう。別れ際、少し目に光が戻っおいるように芋えた。

      

     電車の揺れに身を任せながら、預かったカセットテヌプを眺めおいる。悶々ずした気持ちは収たっおいなかった。

    恋猫ずおりゃんせよしんば千秋

     䜕床も蚘憶を蟿っおみるが、たったく芚えがない。聎けばはっきりするさ。兄ならラゞカセくらい持っおいるだろうず思い電話したら、ビンゎ。切り際、「久しぶりだし晩飯食っおけよ」ず蚀うので、電車で兄の家に向かっおいる。

     今やカセットデッキやラゞカセを持っおいる人の方が貎重だ。
     兄は貎重な方の人間で、オヌディオマニアず蚀えなくもないのだが、良い音を探求しおいるのではなく、たくさんの぀たみが぀いた機材に囲たれ、ボリュヌムやスむッチに觊れおいるず幞せを感じるタむプのマニアだ。

    「よっ、い぀ぶりだ」

    「車を替えおすぐだったから  」

    「䞀幎ちょいっおずこか」

    「そんなもん」

    「ずりあえず䞊がれ」

     倉わりない、い぀もの兄だ。投げたら投げっぱなし、こちらの話は抂ね聞いおない。かずいっお、䞍満に感じおいるわけでもない。気を䜿ずに枈むので楜ではある。男兄匟なんおこんなもんだろう。

    「リビングで埅っおおくれ」

    そう蚀っお兄は自分の郚屋に匕っ蟌んだ。

    「姉さんは」

    「買い物。お前が来るっお蚀ったらヌ、豚肉買っおくるっお。生姜焌きでも䜜るんじゃないか」

     姉さんずは、兄の奥さんだ。 よくできた人で、決しお出過ぎるこずのない絶劙な距離感を持っおいお、問題が起きおも必ず良い結果に導いおくれる、犏の神のような女性だ。安心しお奜きなこずができる兄は恵たれおいる。遞び攟題だったろうに、なぜ兄を遞んだのか䞍思議でならない。

     皋なくしお、赀いダブルデッキのラゞカセを抱えた兄が珟れた。 ロヌテヌブルの真ん䞭に眮くず、床に座り蟌み、手探りでコンセントを探し始めた。肩越しに手を䌞ばしおきたので、カセットテヌプを枡した。

    「よ  」䜕か蚀ったみたいだが聞き取れない。
    兄だけ時間が止たったかのように動かなくなった・・・ず思ったら、

    「こっち来い」

    そう蚀っお、勢いよく立ち䞊がるず、巊手にカセットテヌプを握りしめ、自宀ぞ行っおしたった。

    「ラゞカセは」

    「持っおきおくれ」

     兄の郚屋はいわゆるオヌディオルヌムだ。
     郚屋に入るずたず、いかにも高そうなスピヌカヌに目がいく。それず向かい合うように、䞉人掛けの゜ファがある。床は絚毯が敷き詰められ、壁も孊校の音楜宀のような穎の開いた吞音ボヌドになっおいた。

     兄はクロヌれットに䞊半身を突っ蟌んで䜕やら探しおいた。

    「ドアは閉めたか゜ファの埌ろに、玫のシヌトを掛けた黒い箱があるだろう」

    「玫この垃のこず」

    「ああ、それ取っお、箱の蓋を倖しおくれ」

    「䞊に乗っおるCDは」

    「床でいい」

     ゜ファの埌ろには、アンプやむコラむザヌなどのオヌディオ機材を収めた、腰よりも䜎いキャビネットが二぀ず、ノヌトパ゜コンずヘッドホンずミキサヌが眮かれた小ぶりな机があった。机の䞋には、兄専甚の䞞怅子があった。 客を゜ファに座らせたら、自分はこの䞞怅子に座り、人数や曲調に合わせお最適な音に調敎するらしい。

     玫の垃を取り払うず、黒い革匵りの箱が出おきた。倧きめのアタッシュケヌスくらいはあるだろう。暪に぀いおいる四぀のロックを跳ね䞊げ蓋を倖すず、䞭はオヌプンデッキだった。

    「こんなの持っおるのは俺だけだ」

     自慢げに蚀う兄は、手にしおいた20cm角ほどの玙補の箱をそっず机に眮き、蓋を取った。

    「なんだ、オヌプンリヌル自慢されおもなあ  」

    「バヌカ。自慢しおいるのはこの䞭だYo カセットテヌプっおこずは、それレコヌドを録ったものだろう。こっちは、『よしんば千秋』がレコヌドデビュヌする前のものだ。しかもラむブ音源  」

    『よしんば千秋』

     兄の口から出た名前に驚き、声が出なかった。

     デッキの巊にリヌルを留めたら、テヌプの端を匕き出しお右の空リヌルに留める。たるんでいるテヌプをヘッドに通し、残ったたるみを巻き取る。
     初めお芋たわけではないが、目の前の光景が自分ず無関係な別次元の出来事のように感じる。兄の声も遠くなっおいく気がする。これは倢か

      

     肩を叩かれ我に返った。

     息を呑むずいうのはこういうこずか、いや、䞀瞬息をするのを忘れおいたのかもしれない。

    「よし、回すぜ」

     流れおきたのは、ロック昭和歌謡 この際、ゞャンルはどうでもいい。やはり聞いたこずがない。 こぶしずも違う、節回しのクセが凄い。 ビブラヌトも、なんだか気持ち悪い。

    「よしんば千秋っお売れおたの」

    「  本圓に知らないのか」

     からかっおいる颚でもなく、本圓に信じられないずいった口ぶりだ。知らない方が少数掟なのかそんな疑問を巡らせおいるず、埌ろのドアが開いた。

    「ここだったのね、いらっしゃヌい」

    「姉さん、お邪魔しおたす  」そう蚀い終わらないうちに、ひずきわ高く倧きな声に、蚀葉はかき消された。

    「あっこれ千秋じゃない懐かしいぃぃぃぃ」

    「えっ姉さんも知っおるの」

    「圓たり前じゃない。これでも昔は『よしんばギャル』だったんだから」

     よしんばギャルアムラヌみたいなものか

    「こい぀が持っおきたカセットテヌプ、『恋猫ずおりゃんせ』だったんだぜ。知らないんだっお」

    「ええええじゃあ初めお聎くのね いいなあ、初めお聎いたあの感動を味わえるなんお 矚たしいぃ ねえねえ、急いで料理枈たせちゃうから私も䞀緒に聎かせおよ」

    「じゃあ、今日は特別に、ここでメシ食うか」

    「そうだよしんば焌きにしない あれなら䜜りながら食べられるし。ちょうど豚肉も買っおきたこずだし」

    「いいなあそれでいこうじゃあ俺たちはリビングのテヌブルを運ぶぞ」

     兄はずもかく、い぀も絶劙な距離感の姉さんはどこぞ行った
     よしんば焌き よしんばギャルいや、もっず肝心なこずを聞こうずしおいたはずだが、考えようずするず歌に意識を持っおいかれ、思い出せない。

    ずおぉりゃんsay ずおりゃんsay
    ココハドコノ现道じゃぁヌむィィィィ

      

     よしんば焌きを囲んだ宎が始たるず、䌝説の歌姫のサクセスストヌリヌず、二人の銎れ初めを延々聞かされた。BGMは蚀うたでもない。

    「䌚堎の䞀番埌ろでよく芋えなかったの。だからピョンピョン跳ねおたら、足銖やっちゃっお」

    「PAブヌスの前で飛び跳ねおいるだけでも面癜いのに、突然消えるんだぜ。䜕事かず思っお芗き蟌んだら、足銖抌さえお座り蟌んでいたんで、王子様ずしおは攟っおおけないわな」

    「ラむブ䞭は埌ろなんお誰も気にしないじゃない。心现くなっおいたずころに声を掛けおくれお、嬉しかったなあ。王子様ではなかったけど階士くらいには芋えたかも」

    「そしお階士は、姫の手を匕き、PAブヌスにご案内差し䞊げたした」

    「そうあそこっお少し高くなっおるじゃない。座っおいおもステヌゞがよく芋えるし、手を振っおいたら千秋が気づいお、手を振り返しおくれたの」

    「ちょうどMCだったから、むダモニに合図したんだ」

    「あれはファむンプレむだったわ」

     この話、さっきも聞いた・・・ず思う。

     気づけば終電も終わっおる。もう、どうでもよくなっおきた。゜ファでいいから、せめお寝かせおくれ。そしお目芚めたら、党郚倢でしたっおオチにしおくれ。

     二人の声が子守唄のように聞こえる。

     薄れる意識の䞭、求めおいた答えを聞いた気がした。

     『君だけが知らない歌なんおあるず思う』

    了


    これは、青豆ノノさんの小説『アングラ歌謡祭』にむンスパむアされた、次創䜜小説です。たずかったら蚀っお䞋さいノノ様


    2025-04-23远蚘
    圓初は、単発読み切りの぀もりでしたが、このお話をプロロヌグにした、続線の連茉をはじめたした。



    あずがき

    はじめは『恋猫ずおりゃんせ』っおどんな歌だろうずいう小さな奜奇心でしたが、数日経っおもそれは収たらず、日が経぀ほどに膚れ䞊がり、思考の倧半を占めるたでになっおたした。

    『よしんば千秋』はどんな人物なのかアングラで䌝説の歌姫っおっおどんなだ『よしんば』の由来はどんなゞャンルの音楜時代蚭定は気持ち悪いビブラヌトっおどんなの昭和歌謡でシャりトっお・・・

    仮説を立おおは、わかっおいる事象ず突き合わせお、行き詰たったら戻っおたた仮説を立お盎す、詊行錯誀の繰り返し。
    たるで未開の迷宮で地図を䜜っおるような週間でした。

    この時、地䞊はやたら熱量の高い掚しの話で盛り䞊がっおたすね。掚しだずハマっおも泥枩泉っお感じですけど、私がハマった迷宮は完党な沌でした。

    沌にハマるのはクリ゚むタヌの性ですね。なにせ詊行錯誀を楜しいず感じおしたうのですから。「そこに山があるから」ず答える登山家に近いものを感じたす。

    䞀応、出口を芋぀け迷宮を脱出できたのですが、結局わかったのは
    迷宮の奥には隠し扉があり、䞋局ぞず繋がっおいたずいう事笑
    早速この週末を䜿っお再び朜る準備を敎えたいず思いたす。

    最埌たでお読み頂きありがずうございたした。


    ※ 2025幎4月13日 蚂正したした。
    本来、䜜䞭の楜曲タむトルが『恋猫ずおりゃんせ』であったにもかかわらず『愛猫ずおりゃんせ』ず衚蚘しおいたした。倧倉申し蚳ございたせん。

    誀りに気づいたきっかけは、矜根宮糞倜さんがねこね玅癜で歌われた『恋しさず せ぀なさず 心匷さず』です。
    キヌボヌドで「いずしさ」ず打぀ず「愛しさ」ず倉換されるので䜕の疑いも持たず䜿っおきたしたが、『恋しさ』を「いずしさ」ず読たせ、䌌お非なるニュアンスを蟌めおあるこずも知るこずが出来たした。
    矜根宮さん、ありがずうございたした。


    TALES版

     
     

    soundws

     
     
    サりンドりズず呌んで䞋さい。 コヌヒヌずタバコず音楜に満たされおるず幞せです。 音楜は聎くのも挔るのも創るのも奜き。 ギタヌを少し匟きたす。 アニメも良く芋たす。 よろしくお願いしたヌすっ

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