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追憶封竜記 1話

    地のレックス族の御門 燎(みかど りょう)はため息をついた。
    その原因は目の前で仁王立ちしている炎のレックス族の女子生徒にある。
    彼女の名は湊 花音(みなと かのん)。
    風紀委員会の委員長でありながら校内の風紀を乱している張本人でもある。
    「廊下のど真ん中で仁王立ちして道を塞ぐな。火炎女」
    燎は火炎女と呼んでいるのは何かあると炎魔法を使って校舎を黒焦げにするからだ。
    「貴方が素直に部室に来ればいいのよ」
    「俺は生徒会室に用事があるから部活には行けないとさっきから話してるだろ」
    「どうせ調べてる事は同じなんだから良いでしょ」
    「お前の捜査ごっことは違うんだよ」
    「私は本気よ。最近多発してる竜族の暴走事件……絶対に何かあるわ」
    花音の瞳が真剣に細められる。
    確かに、ここ数週間で学園周辺の竜族が突然暴走する事件が続いていた。
    原因は不明。魔道警備隊もまだ手がかりを掴めていないらしい。
    燎は面倒くさそうに頭を掻いた。
    「だとしたらその調べたデータを魔道警備隊にでも提出したらいいんじゃないのか。ツテはあるだろ」
    「警備隊を出し抜いて事件を解決したらこの探偵部も公認されるわけでしょ」
    「そのヘンテコな部活は何度言っても認可はしないぞ」
    「だから、貴方の手を借りたいのよ」
    「俺が探偵部に手を貸したらそれをまた周りに言いふらすんだろ。同じ手を2度は喰らわないぞ」
    「言いふらさなくても勝手に噂は広がるわよ。事件の解決なんてしたら」
    埒が明かない。
    燎がため息をもう一つ吐いて、花音の横を通り過ぎようとした瞬間——
    赤い光が爆ぜた。
    その光は花音が炎の拳(ファイアーフィスト)によって花音の拳に炎が纏ったことによる光だった。
    炎の拳は校舎の柱に当たり、当たった箇所は黒く焦げていた。
    「次は本気で当てるわよ」
    「勘弁してくれ。この修繕費は生徒会の予算から出てるんだ」
    本来なら部員が所属している部活に修繕費を請求するのだが、公認していない部活に所属していた場合は生徒会が負担することになっている
    「なら、認可すれば良いじゃない」
    「分かったよ。ついて行けばいいんだろ」
    「分かればいいのよ」
    傍から見れば公認すれば脅しに屈することも無いが公認した場合は燎が正式に副部長になるのでそれだけは避けたかった。

    部室に向かう道中、花音は事件の詳細をまくしたてる。
    「発生場所は学園周辺とその近辺……でも原因が全く分からないのが不気味なのよね。暴走した本人は『急に頭が真っ白になった』ってしか言えないみたい」
    「記憶石の異常……か?」
    燎がぽつりと呟くと、花音が目を輝かせた。
    「ほら! やっぱり貴方も気になってるんでしょ?」
    「黙ってろ。まだ仮説の段階だ」
    探偵部の部室に着いたので事件の話を止める。
    燎はいつもこの部屋に来るとため息が出る。
    その理由は目の前にある部屋にある。
    書庫と書かれた表札の上に突貫工事感満載の段ボールで作られた探偵部と
    書いてある表札が原因なのを花音は知らない。
    この部屋は元々は図書室に置ききれない本を置く書庫だった。
    図書室を学園の校舎内ではなく別館内に新設したため書庫に収納されていた本も
    そちらの図書室に併設された書庫に収納された。
    校舎内に残っている旧図書室は各部室の備品を置く倉庫になっている。
    風紀委員が書庫の整理を任されたので花音は
    書庫が空く情報をいち早く掴み勝手に占拠して部室として使っている
    何とも迷惑なことをしているのだが花音からすると千載一遇のチャンスとしか思っていない。
    ついでに書庫に隠し部屋を作ってそこに書庫からくすねた本をしまっているという噂もある

    花音は部室に入る前に腕に着けていた炎属性を示す赤色の魔法石をあしらったヘアバンドで髪をまとめた。
    花音は部室のドアを開けると
    「皆!遂に御門副部長が来たわよ」
    いちいち仰々しいなと燎は思いつつ
    部屋に目を向けると長い付け爪を器用に使って携帯端末を触っている派手な見た目の女子生徒と本を読んでいる眼鏡をかけた男子生徒が向かい合うようにソファに座っていた。
    派手な見た目をしている女子生徒は椚 香李(くぬぎ かおり)という雷のワイバーン族の1年生の生徒だ。燎と花音の1年後輩に当たる。見た目は服装規定と髪色規定を逸脱している。そのうえ校舎の屋上で雷実験をして教師や生徒会を悩ましている存在でもある。花音と二人合わせて雷炎コンビ(サンダーファイアーコンビ)という呼ばれ方をしてる。こちらを向く時に雷属性を示す黄色の魔法石をあしらったイヤリングが揺れる。
    本を読んでいる眼鏡をかけた男子生徒は不動 誠(ふどう まこと)という毒のサーペント族の1年生の生徒だ。香李と同級生で花音と燎の1年後輩に当たる。見た目は香李と違い規定に沿った服装と見た目をしており首に着けてるチョーカーには毒属性を示す紫色の魔法石があしらわれている。
    2人はこちらを見るなり
    「先輩!遂に来てくれたんですか!コーヒー淹れるのでここに座ってください」
    「椚さんが淹れるコーヒーいつも甘すぎて御門先輩の口には合わないので、僕が代わりに淹れます」
    2人は口々に話しながら燎を歓迎する。

    燎はコーヒーを飲みながら、色んなことをまとめた内容が書いてあるホワイトボードを見る。
    「どう?発生場所以外は分からないから困ってるのよ。貴方の知恵を貸してちょうだい」
    「ここに書いてない内容でもいいか?」
    後輩の2人は期待を込めた感嘆の声をあげる。
    「良いわよ」
    「記憶石が盗まれた、または一部が盗まれたってのは有り得るか?」
    「さっきも言ってたけど、有り得るも何もそんなこと可能なの?」
    「過去に例がないから分からないが、それなら辻褄が合いそうなんだよな」
    「どういうこと?」
    燎以外のメンバーは首を傾げる
    「魔法の制御って魔法石がやってるわけだろ?てことはその大元の記憶石に異常が起きないとそもそも異常が発生しないんだよ」
    「確かにそうね。でも、記憶石はサーペント族の神殿にある訳よね?それに触れることって可能なの?」
    「不動。可能なのか?」
    「司祭じゃないと分からないですね…。あっ!知り合いというか委員長の親御さんが司祭をやってるって聞いたことあります」
    「じゃあそいつに聞いてみるか」
    「先輩。私も知り合いに情報通がいるので二手に分かれませんか?」
    「その情報通は多分俺の知り合いでもありそうだな」
    「じゃ、私と香李で図書室に行ってみるわ」
    「それは却下だ。お前ら二人を一緒にさせたら新設された図書室が黒焦げになる」
    「じゃあ、僕と湊先輩で図書室に行きますね」
    「それがいいな。情報を集めたらまたここに集合ってことで」

     
     
     

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