
無力な馬鹿娘
仕事をしていて、12時回ったあたりだったか、母親から電話がかかってきた。
この時間帯は珍しいなと思って電話に出たら、
「落ち着いて聞いてね、お父さんが心筋梗塞で倒れたの。救急車で運ばれて、今〇〇病院のICUで治療を受けてて…」
ゾワッとした。これは夢か?と、一瞬おもった。PCに表示されてある印刷書類に目がいって、こんな鮮明な夢があるわけないだろと一瞬で我に返った。
「大丈夫だから、不安にならなくていいからね」
と何度もいわれて電話がきれた。
母親が一番不安になっているんじゃないかと電話ごしだけど感じて、こりゃいかんと仕事を早退させてもらって父親がいる〇〇病院へ向かった。
病院へ向かいたくても、こういう時に限ってタクシーがつかまらない。走ってもいない。最悪バスで行こうとバスの停留所を見つけ、時刻表を確認しようとした時、「このバスに乗れ」といわんばかりのタイミングでバスが停まった。スロットは当たらないけど、こういうのは本当に恵まれてるなとおもった。ありがたい。スロットも当たってくれたらいいのに。
父親が治療を受けている〇〇病院へつくなり、母親のところへ駆けつけた。一瞬だったけど、母親の目がうるっとしていたとおもう。
横では父方の祖母が、目をぐしゃぐしゃにさせながら泣いていたので持っていたポケットティッシュで拭きながら「大丈夫だよ」と言った。私は絶対泣くもんかと心に決めた。
治療の結果、大丈夫とは言えないけれど、父親の病態は落ち着いたらしい。
母親の話を聞くと、倒れる前日の夜から体調が悪くて、日が明けても体調が良くならないため病院へ行ったらしい。そこで心臓あたりに激痛がはしり嘔吐もありながら今いる病院へ運ばれたとの事。意識はずっとあったらしいから、そこだけが救いかなと個人的におもった。
治療を受けた後の父親と面会できるという事で、ICU付近で母親と二人で待った。1時間くらい待ったと思う。
お父さん大丈夫かな、とか
お父さんはきっと大丈夫だよ、とか
症状が出てから時間がたってるから、お医者さんに危ないかもしれませんねって言われたの、とか
なんで気づいてあげられなかったんだろう、とか
お父さんの体に負担かけすぎでしまったのかな、とか
カップラーメンばかりたべて、注意しても言うこと聞かないんだもん、とか
いつも「俺ぁ、大丈夫だから」とか言ってるけど、全然大丈夫じゃねーじゃん、とか
お父さんの「大丈夫」は一番信用できない「大丈夫」だもんね、とか
そんな話ばかりしていたら、看護師さんに呼ばれた。
弱っている父親と会うのは少し心構えをしてしまったが、ベットに寝ている父親の顔色は悪かったけど、いつもの父親だった。
ちょっと安心した。
父親と少し話て、先生からの今の状態や今後の治療とかを説明されて、父親の心臓の血管が3箇所、狭くなってたり、血流がとまってたり。
病名は「急性心筋梗塞」といわれたり。
そうなんですね、としかいえず。
自分は何もしてあげられないし、無力だなって思った。
説明などが終わって帰る際に、母親は父親の手をギュッと握って「本当によかった。今日は帰るけど、また来るからね」っていった。
私はなぜか父親の手をポンポンと叩くことしか出来なくて、母親みたくぎゅっと握ることができなくて、恥ずかしさが先にでてきてしまった。
なんとももどかしいことよ。
素直に手をぎゅっと握れる娘になりたかった。
すごく後悔した。
もう、ゾワッとはしたくないけれど、手を握れる娘になりたいと思った。
数日がたち、母親のLINEに入院している父親からメッセージがきていた、
「病院の食事には、焼き鳥がでません」
そりゃそうだろ。
そして私は、店長の机の上を書類だらけのままにして早退したことを今思い出した。
早くお父さん帰ってこないかな。