
【創作文】寂しい案内板
『←A街 B街→』
案内板はそこにたつ。訪れた人がどちらに行くか悩んだり確認したりする顔を眺めながら。
行き先がわかった人たちの背中を見送る毎日。
案内板は少しだけ寂しかった。
『はぁ。毎日見送ってばかりだな。』
結構な年月そこにいるものだから、ボロボロになってちょっと傾いている自分。それが余計に寂しさを感じさせた。
『あ!こっちで良いんだ!』
そう言って目をキラキラさせる子ども。
『あっちじゃないかな?』
そうワクワクしながら何かを探している夫婦。
『じゃあね!』
元気に別れをいいながらちょっと寂しそうな2人組。
みんな見送ってきた。
『いってらっしゃい!』
はじめは嬉しくて楽しくて。ちょっと誇らしくて。
だけどだんだんと寂しくなった。
『私は案内板。みんなにはただの案内板。すぐに忘れられて、誰も気にしていないんだろうなぁ。』
そんな事を考え出したら寂しくなった。
ある日
『おい、君。なんかしょんぼりしてるな!!』
誰かが話しかけてきた。1人の青年だった。
案内板はビックリしたがじっと聴くしかできなかった。
『なんだ君は寂しいのか?そうだよな、毎日人を見送ってさ。夜には灯りもないし人も来ないもんな。』
『そうなんだよ!』
案内板はそう思った。
『でもさ、しっかりしてくれよ。こんな風に傾かれてちゃ困るんだ。』
そう言うと青年は案内板を真っ直ぐに立たせた。
『それからさ…』
青年は案内板に何かを書いている。
くすぐったいけど案内板はじっと耐えるしかできない。
『お待たせ!何書いているの?』
女の子が1人やってきて青年に言った。
『んー、なんかさ案内板、しょぼくれてて寂しのかな?って。』
『そっか。でもここは私たちには大事な場所だよね。』
『また来るからさ!しっかりしてよ!』
2人は歩いて行った。
だけど案内板は寂しくなかった。
『←A街 ↓ゴールとスタート B街→』
小さく書き足された目的地。
そこは2人の待ち合わせの場所。
待ち合わせのゴール、ここから楽しい時間のスタートする場所。
案内板は胸を張った。
『いってらっしゃい!!』
楽しそうに話す2人をいつも通り見送る。
でも、案内板はもう寂しくなかった。