
第1回・なぜ人は最後に逃げるのか。納期間近に逃げる担当者。「逃げ得」を許す上司の優しさが、優秀な人を絶望させる
納期間近にすべてを投げ出して逃げる担当者。その尻拭いをするのは、いつも真面目な優秀層です。上司がここで対応を誤れば、組織の正義は死に、優秀な人から離れていきます。「逃げ得」を許さず、頑張った人が正当に評価されるチームを作るために。リアルな修羅場で学んだ、逃げる担当者への「冷徹かつ誠実な対処法」をまとめました。
「ここから先は、上司に任せたので。」
「私では手に負えないので、別の人をアサインしてください。」
「(進捗を詰められそうになった瞬間に)体調不良でお休みします。」
プロジェクトの佳境、一番泥臭くて大変なラストスパートのタイミングで、忽然と姿を消す。残されたのは、中途半端に散らかった仕事と、納期間近になって発覚した「実は何もできていませんでした」という最悪の事実。
あなたの職場にも、そんな「最後に逃げる人」はいませんか?
昔、まさにこの「土壇場で仕事を放棄するメンバー」が現れました。結果として、周囲の優秀なメンバーたちが必死にカバーしてくれたおかげで、なんとか納期には間に合い、事なきを得たのですが……。
本当に疲弊したのは、仕事そのものよりも「残されたメンバーの心」と「現場に渦巻く特大のモヤモヤ感」でした。
今日は、そんな「納期間近にすべてを白紙に戻して逃げる担当者」に直面したとき、上司として「絶対にやってはいけないこと」と、「優秀な人を守るための3つの事後対処法」について、リアルな気づきを共有します。
やりがちだけど「絶対にやってはいけないこと」
トラブルが無事に解決すると、上司としてはホッとして、ついつい優しさからこう言ってしまいがちです。
「まぁ、結果オーライ! みんなでカバーしてなんとかなったから、次からは気をつけてね」
これ、絶対にNGです。
これをやってしまうと、逃げた本人は「あ、逃げても誰かがやってくれるんだ。ラッキー」と学習します(=逃げ得の成立)。
そして何より、夜遅くまで残業して、自分の仕事を止めてまで尻拭いをしてくれた優秀なメンバーたちが「なんでサボった奴はお咎めなしで同じ扱いなんだ」「真面目にやるだけバカを見る」と、上司に絶望して離れていきます。
上司の仕事は、波風を立てないことではありません。
「頑張った人が正当に報われ、サボった人が損をする」という職場の正義を守ることです。逃げた人に優しくすることは、踏ん張ったメンバーへの裏切りに他なりません。
その優しさが、チームの士気を根底から破壊するのです。
追い込まれた人が繰り出す「免責カード」
なぜ彼らは、もっと早い段階で相談してくれなかったのか。
理由はシンプルです。「できない自分」を認めたくないという、ちっぽけなプライドです。
上司に失望されるのが怖くて、破綻するまで現実逃避し、根拠のない、「明日になればなんとかなるかも」を繰り返し、いよいよ隠しきれなくなった納期間近に、彼らは驚くほど共通した「免責カード」を繰り出してきます。
【カード①:強制終了】「ここから先は、上司に任せたので。」
【カード②:責任転嫁】「私では手に負えないので、別の人をアサインしてください。」
【カード③:逃亡】「(進捗を詰められそうになった瞬間に)体調不良でお休みします。」
もちろん、本当に体調を崩したなら休むべきです。しかし、タチが悪いのは「進捗の遅れをギリギリまで隠し、自分の持ち場が破綻する最後の最後でこれらのカードを切り、自分を『無罪放免』にしようとする」その姿勢です。
「相談のない『できません』は、報告ではない。自分のプライドを守るために、チーム全員を巻き込んで引き起こした『終わりのない泥沼劇』だ。」
早い段階で相談してくれれば、人を増やす、納期を交渉する、やる内容を削るといった「大ケガを避ける選択肢」がいくらでもあったはずです。
前日に言われるということは、上司やチームからすべての選択肢を奪い、強制的に泥沼に引きずり込んだということです。
その身勝手なストーリーの裏で、残されたメンバーたちがどれほど身を削っているか。それを放置することは、上司として絶対に許してはいけないのです。
優秀な人を守るための「事後対処法」
事が無事に終わった「後」だからこそ、上司は以下のステップを淡々と進める必要があります。
対処法①:事実は「感情を抜いて」厳然たる事実として記録する
感情的に怒っても、逃げる人は巧妙な言い訳や「体調不良」を盾にかわします。だからこそ、数字とスケジュールという客観的な事実だけをロギングします。
「〇月〇日、〇〇氏がタスクを離脱」
「その後、Aさんが〇時間、Bさんが〇時間かけてカバーし、納期に間に合わせた」 このデータ(チームが払ったコスト)を、評価シートに淡々と残します。
対処法②:「助かったよ」と言わず、プロセス評価を突きつける
事が終わった後の面談で、本人に事実を突きつけます。
「今回、最終的には成功したけれど、君が途中でタスクを放棄したことでチームにこれだけの超過労働が発生した。これはプロセス評価として大きく減点せざるを得ない。」
本人が「体調が悪かった」「アサインミスだ」と言い訳してきたら、「体調管理や、手に負えないというアラートを、破綻する前に出すこと。それがプロとして、チームに対する最大の誠実さです」と、基準を明確に伝えてください。
感情的に責める必要はありません。「何がプロとして足りなかったのか」を本人に正しく認識させることが、再起への第一歩になるからです。
対処法③:「仕組み」で逃げ道を塞ぎ、クリティカルな仕事から外す
タスクを「1日単位」まで細分化し、毎朝の進捗確認をルーチン化します。
100%の完成を待たず、30%の段階で成果物を強制的にレビューする「中間チェック」を仕組みとして導入してください。
また、万が一の離脱に備え、作業はすべて共有クラウド上で行わせ、常に「誰かが引き継げる状態」を担保させます。
そして、最後に、逃げられると詰むような重要ポジションからは外し、手順の決まった定型業務へと役割をシフトさせます。
背負いきれない責任から解放し、まずは『完遂できるタスク』で信頼を再構築させる。これは排除ではなく、彼らをこれ以上の破綻から守るための、組織としての本当の救済です。
最後に
上司の皆さん。
逃げた人を「説得して改心させよう」とする必要はありません。
そこにエネルギーを使うくらいなら、カバーしてくれた他のメンバーを全力で労い、評価や処遇で倍返しにすることにエネルギーを使いましょう。
それが結果的に、逃げた本人に『自分の立ち位置』を正しく突きつける、本当の意味での救済にも繋がるはずです。
頑張っている人が、ちゃんと報われるチームを。
明日からも、淡々と、毅然と、マネジメントしていきましょう。
次回予告
担当者のサボりはまだ可愛いもの。もし、高い給料をもらい、プロとして約束したはずの“技術スペシャリスト”が、プレッシャーに負けて逃げ出したら、組織はどうなるのか?
彼らが犯す『大罪』と、その冷徹な処方箋を紐解きます。
この記事が、あなたの明日を変えるきっかけになれば嬉しいです。
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