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遞択匏小説『ただ、名前で呌べない』第14話

    第14話 譲れない時間


     ハルが顔を䞊げたのはたたたただった。
     それでも、倖を歩いおいる人が目にずたり、芖線が䞊に移動するず、その人物は倧孊時代に付き合っおいた圌――桜庭さくらば匘暹ひろきだった。
     しかも、運悪く圌もハルに気づいお驚いた顔をした。
     けれど、圌はそのたた通り過ぎたので、ハルはどこかほっずした気持ちになった。

    「束䞋さん、どうしたしたか」
    「いえ、なんでも  。倖を歩いおいた人が知り合いに䌌おいたので――」

     ハルはそう答えお、グラタンにスプヌンを入れようずしたずころに。

    「やっぱり、ハルじゃん」

     埌ろから声をかけおきたのは、昔よく聞いた声だった。

    「桜庭君」
    「久しぶりだな。  あ、デヌト䞭 悪かったな、話しかけお」

     今気づいたかのように蓮を芋お、桜庭は悪気もなくそう蚀った。

    「デヌトっお蚳じゃないけど  今、ご飯食べおるから」

     なにより倉な蚀い方は蓮に倱瀌だ。
     ずはいえ、ハルはなんずなく「䌚瀟の䞊叞なの」ず蚀いたくなかった。ここは䌚瀟ではない。趣味の仲間のようなもの――そう感じお。

    「なんだ、冷たい。元カレに䌚ったっおいうのに」
    「それは  もう、終わったこずだもの」

     終わらせたのはあなたの方じゃない――そう蚀いたかったのを、ぐっず飲み蟌んだ。
     なんだろう。蓮ず図曞通で䌚っお本の話をしお、お薊めの喫茶店で矎味しいご飯を食べおいるはずなのに、うたく息ができない息苊しさを感じおしたう。

    せっかく楜しい時間だったのに  

     ハルはう぀むいお黙っおしたう。
     そんなハルに、桜庭は「おいおい、せっかくわざわざ声かけたっおのに」ずふお腐れた口調で蚀う。
     最初は分からずに黙っおいた蓮も、ここたで来れば理解する。ハルの䜕かに耐えるような衚情が目に入り、口を開いた。

    「今、束䞋さんず話しおる。悪いけど、埌にしおくれ」

     蓮の口調がい぀もず違ったのに気づき、ハルは目を瞠った。

    「あんた、圌氏」
    「違う」

     ハルは口を挟もうずするが、桜庭の芖線は蓮に向かっおいた。

    「でも、今は俺ず食事をしおる」
    「小宮さん、あの  」

     いきなり珟れた桜庭ず、い぀もず違う蓮にどうしおいいのか迷う。
     もずもず自分がきちんず察応できなかったから、蓮が口を挟んだのだ。自分の察応の悪さに嫌気がさす。
     桜庭もいったい䜕を蚀いたいのか。

    「そっか。圌氏じゃなくお良かったな。圌氏になるず倧倉だぜ。本にかじり぀いお存圚を忘れられるからな」
    「本が奜きなこずは知っおる。別に、それは悪いこずじゃないだろう」

     䜕を蚀っおいるのだず、蓮は顔をしかめた。
     持っおいたフォヌクを眮いお、桜庭に向かい合う。
     桜庭は少しむっずした顔で、「いやいや、昔なんかさ、デヌトしたっお本を読んで俺の存圚忘れるし」ず呆れたずいうようなゞェスチャヌを぀けお倧げさに蚀う。
     蓮はそのこずに苛立った。

    「奜きなこずに倢䞭になれるのは、いいこずだろ」
    「いやいや、圌氏ずしおは寂しいぜ」
    「それを決めるのは圌女じゃなくお、付き合う盞手だ」
    「  たあ、そうかもな。あんたは圌氏じゃないから、気楜に蚀えるんだよ」
    「  」
    「どういう関係かは知らないけどさ。た、やめずいた方がいいぜ、コむツは」

     ハルは蚀い返そうずした。けれど、その蚀葉を飲み蟌む。
     昔の自分がそうだったこずは、吊定できなかった。
     それに、蓮に蚀うのも蚀い蚳のようで違うず思った。

    「桜庭君、もういいでしょ。どちらにしろ、もう関係ないんだから」

     ハルがそう蚀うず、桜庭はハルの存圚を思い出したかのように「そういや、そうだったな」ず軜く蚀った。

    「それにしおも、ホント倉わらねぇよな、ハルは」
    「それは  桜庭君もそう芋えるよ」
    「俺は瀟䌚人になっお成長したんだよ」
    「それなら 瀟䌚人ずしお盞応な振る舞いをしおよ。初察面の小宮さんに倱瀌なこずを蚀わないで」

     少し倧きな声で桜庭に文句を蚀うず、ようやくハルを芋お肩を竊めた。
     桜庭は「だっおホントのこずだろ」ず返す。それを蚀われるず、ハルは䜕も蚀い返せない。
     桜庭は倧げさにため息を぀くず。

    「た、俺、邪魔もんみたいだから消えるわ。圌女ずの玄束の時間も近いしな」

     そう蚀うず、手をひらひらさせながら喫茶店を出お行った。

     

     嵐が去ったかのような状態だった。
     ハルは黙っおう぀むき、苊い顔をしおいる。
     蓮もどう声をかけおいいのかわからず、しばし躊躇った。
     ずはいえ、このたたでは良くないず思い、蓮はナポリタンを食べ始めた。

    「小宮さん、その  すみたせんでした」
    「いえ、ああいうのは急にやっおくるもので、束䞋さんのせいではありたせん」
    「そうですが  」

     蓮はナポリタンを巻き付けたフォヌクを持った手を止める。
     い぀も笑っおいるハルの衚情が、今は曇っおいる。
     その事実が、先皋の男がいただにハルに圱響を䞎えおいるのが分かり、わずかに苛぀いた。
     その感情を振り払うように、蓮は䜕事もなかったかのように振る舞う。

    「グラタン、冷めるず矎味しさが半枛したす。早く食べた方がいいでしょう」
    「  あ、そうですね」

     蓮の指摘にハルは慌おおグラタンを食べ始める。
     互いに機械的に料理を口に運んでいる状態だった。
     おかげで䌚話は桜庭が珟れる前ず違っお、あたり匟たない。
     食べ終えた埌のコヌヒヌの時間になっお、ようやくハルは口を開いた。

    「あの、本圓に先皋はすみたせんでした。桜庭君が迷惑をかけお」
    「いえ、ああいうのは反応するから䜙蚈に面癜がりたす。䞀番いいのは盞手にしないこずです」
    「  そうですね」

     蓮がアドバむスしおみるものの、二十䞉歳のハルには盞手をうたく躱すずいうのは難しいだろう。
     ずはいえ、楜しかった時間に氎を差されたようで、蓮は少々苛぀いおいた。蚀葉の端にい぀もの䞁寧さが欠けおいる。

    「それに、元圌氏だずいうのなら、もう䌚うこずもないですよね」
    「それは  ないず思いたす。先皋の話から、付き合っおいる圌女もいるみたいですし。私なんか・・・ずよりを戻そうなんお、思わないず思いたす」

     蓮はハルの『私なんか・・・』ずいう蚀葉に、䞀皮の劣等感が芋えた。
     おそらく、桜庭にそれほど悪気はなくおも、圌の蚀葉はハルを傷぀けおきたのだろう。

    「私なんか・・・ずいうのは、自分に倱瀌です。自分のこずを倧事にしおください」
    「  はい、そうですね」

     ハルは短く答えお、アむスコヌヒヌのコップを持ち、ストロヌに口を぀けた。
     蓮もすでにぬるくなっおしたったコヌヒヌに口を぀ける。
     ブラックで飲むコヌヒヌが、い぀にも増しお苊く感じた。

    「  あの、今日、ご迷惑をかけおしたっおたのに、こんなこずを聞くのもなんですが  」
    「なんですか」
    「来週も、図曞通に行きたすか」
    「  」

     蓮は少しだけ考えた。
     ハルの問いかけは、どういう意味なのだろう――ず。

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    今回の遞択は 
    ちょっず気たずくなった二人。
    それでもハルは勇気を出しお、来週も図曞通ぞ行くか質問した。
    蓮はどう答える

    A. 「もちろん行きたす」ず返事。
    B. 「束䞋さんは行かないのですか」ず問う。

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    創䜜小説メむン。様々な䞖界を舞台にした人間ドラマを執筆䞭。 日垞の蚘録、心に觊れた本・挫画・アニメの感想も。 愛甚品・おすすめ挫画amazon.co.jp/shop/riku406 ※圓noteはAmazonア゜シ゚むト参加者であり適栌販売により収入を埗おいたす。

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