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Organization論 #1

    科学的に考える人

    Jobとは何か

    ― いったいボクは何をする人なんだろう?―
    これはボクを20年にわたって悩ませてきた問いだ。

    ボクは、これまで日本企業と外資企業に勤めた経験を持っていて、自分で年商数億円の小さな会社の経営をしたこともある。

    ただ、ボクは組織に馴染めない人だ。
    ワーカホリックくらい仕事は好きなんだが、目標に縛られるのが大嫌い。そして(いずれ機会があったら詳しく書くが)会社のイベントに参加したくないタイプだ。

    ボクはいろいろなポジションで働いてきた。
    もちろん、ボクだってキャリアのスタートは単なるワーカーだった。そして40名の部下を抱える管理職だったこともある。マネジメントだけじゃなく、セールスもクリエイションも経験してきた。経営者だったこともあるし、部下を持たない専門職だったこともある。

    だからボクは、会社組織というものを意外と冷静に俯瞰で見ている。そうしているうちに、ボクは以下のように組織を分解して考えるようになったのだ。

    Helmsman(舵取り)
    General(戦略の策定)
    Execution(翻訳と実装)
    Operation(価値の創造)

    なお、他の組織論と混同しやすいので、ボクはこの4つの分類を「Job(果たすべき責務)」と呼ぶことにしようと思う。

    Helmsman(舵取り)

    概ね、経営者は「Helmsman」だ。

    helmsman(ヘルムスマン)は、「操舵手」「舵取り」「指導者」を意味する英語の名詞です。船の舵(helm)を握る人から転じて、組織や国家を導く人を指す比喩としても使われます。

    また「舵を取る」という言葉は「ガバナンス」の原義でもあるので、経営者をイメージしやすいだろうと思う。企業のなかで絶対に欠かせないJobだ。Helmsmanが存在しなければ、企業の存在意義がないと言ってもよい。

    Operation(価値の創造)

    次に重要なのは「Operation」だ。
    このJobの人たちが価値を生むことで会社は収益を得ることができる。それは、運送業であれば配送、飲食店であれば調理・接客、小売業であれば販売、製造業であれば製造・加工・組立、美容院であれば施術、学校や塾であれば授業だ。

    この整理は「職種」を定義しているわけではない。ボクはこれらの4つのJobを「何に責任を持つか」によって分類をしている。なので「顧客に対して価値を生むという責務を果たすべき人」という文脈で考えると、工場の作業員も、店舗の販売員も、企業の営業マンも、学校の先生も「Operation」だ。

    General(戦略の策定)

    「General」は、軍隊における将軍・大将をイメージしたネーミングだが、どちらかというと「参謀」をイメージしてもらった方がわかりやすいかもしれない。

    軍隊におけるGeneral(将軍/大将/将官)は「全軍の戦略や運用を統括する最高司令部(将官団)」を指します。最高意思決定と作戦指揮、リソース(物資・人員)の管理などを行います。

    Helmsmanが「どこに行くか」を決め、Generalが(Helmsmanが示した方向に対して)「どうやってそこに行くか」を設計する。そのためにGeneralは以下のようなタスクを担うことになる。

    ・情報を集める
    ・情報同士を関連づけて分析する
    ・言語化・可視化・数値化する
    ・リソースやリスクを評価する
    ・選択肢を作る
    ・戦略を設計する
    ・Helmsmanに対して、迎合せず意見を返す

    もちろん、会社が小さいうちは経営者(Helmsman)自身がGeneralを兼務するだろう。だが、これらの設計なしに航海に出てしまうと、いずれ事故に巻き込まれる可能性が高くなることは間違いない。

    Execution(翻訳と実装)

    ボクの頭を長年悩ませてきたのが「Execution」だ。

    ビジネスにおける「execution(エグゼキューション)」は、計画や戦略を「実行・遂行して成果に結びつけること」を意味します。単なる作業ではなく、アイデアや方針を行動に移すためのプロセスや、最後までやり抜く実行力を指して使われます。

    つまり、多くの場合(ボクのJob整理の)Operationとしてカテゴライズされることが多いのだが、文脈によってはExecutionにカテゴライズされるという、微妙な立ち位置なのだ。

    なぜボクがここにこだわったかというと、それはボク自身がこのポジションに身を置くことが多かったからだ。自分がその役割において「何を果たすべきなのか」を見定めることができていなかったので、非常にフワフワした状態で仕事をしていた期間が長かった。

    だけど、この「Execution」というJobを「Operation」と「General」から切り離して、独立したJobと考えると「何を果たすべきか」がクリアになる。それは、Helmsmanが方向を決め、Generalが設計をした戦略を、Operationにつなぐ役割だ。

    経営層と現場では会話が嚙み合わないことが多い。
    それは、違う言語を使っているからだ。

    ボクがよく知っている某大企業も、ある時にホールディングス化してから経営層に新しい言語が導入されてしまったようだ。先日、その会社の人と会話する機会があったが、彼は「現場の意見が上層部に届かなくなった」と嘆いていらっしゃった。

    そう、組織には翻訳者が必要だ。
    人によって言語が異なり、また人によって理解力が異なる。そのギャップを調整する人がいなければ、意思決定は組織の隅々まで浸透していかない。

    具体的に書き出すなら、Executionのタスクはこんな感じになるだろう。

    ・Generalが書いた戦略を理解する
    ・Operationのリソースや制約を把握する
    ・戦略とOperationのギャップ(不足や矛盾)を見つける
    ・戦略の定着に必要なナレッジや人材をコネクトする
    ・Operationが自律駆動するためのプロセスを展開する
    ・Operationからフィードバックを受け、Generalに戻す
    ・プロセスを修正し、Operationの自律駆動を定着させる

    Executorのジレンマ

    Executionは、Operationの実行が仕事ではない。
    そして、単なる「プロジェクトを進める人」でも「GeneralとOperationの伝書鳩」でもない。Executionの最終成果は、ExecutionがいなくてもOperationが自律的に回る状態を作り出すことなのだ。

    だけど、ここを混同している人は多いように思う。ExecutionのJobを担っているはずなのに、プロジェクト・マネージャーになってしまっている人、Operationを回すことに躍起になっている人、上層部に意見することができない人… ボクはそんな人をよく見かける。

    問題なのは、経営者がExecutionのJobを理解していないことだろう。そして、経営者がExecutionのJobを評価しない(評価できない)ことなのだ。

    実は経営者にとってそれは難しいことだ。
    だって、Executionの最終成果は「ExecutionがいなくてもOperationが自律的に回る状態を作り出すこと」なのだから。

    だから、ほとんどのExecutorが目に見える成果を出そうとする。そうじゃないと評価されないからだ。そうすると、徐々にExecutionが機能しなくなり、現場と経営者との意思疎通不全が大きくなっていくのだ。それがいわゆる「大企業病」だとボクは思っている。

    暗黙知と形式知

    そうなると、社員一人ひとりが「直接生み出した価値」だけを成果としてカウントすることに違和感が生まれる。

    なぜなら、顧客に対して直接価値を提供するのはOperationだからだ。GeneralもExecutionも、ましてやHelmsmanも直接的に価値を提供するわけではない。彼らの存在意義は、彼らの働きかけによって、組織のネットワーク上の別の場所で、より効率的に、より大きな価値が生まれることにある。

    では、GeneralやExecutionは何を扱っているのか。
    ボクは、そのひとつが「Knowledge」なんじゃないかと思っている。

    企業の中に存在する「暗黙知」の大半はOperationが持っている。毎日顧客と話している営業マンは、どんな言葉に顧客が反応するのかを知っている。配送をしているドライバーは、どの時間帯にどの道路が混雑するのかを知っている。工場で働く作業員は、マニュアルには書かれていない作業のコツを知っている。

    だけど、それらのKnowledgeは、その人の頭の中にあるだけでは組織全体で使うことができない。だから、そういった「暗黙知」を誰かが拾い上げ、言語化し、他の人にも扱える「形式知」へ変えていく必要があるのだ。

    暗黙知とは、個人の経験や勘に基づき、言葉で説明しにくい主観的な知識(ノウハウやコツ)のことです。一方、形式知とは、文章や図表、マニュアルなどによって客観的に目に見える形に言語化された知識のことです。

    Generalは、社内外からKnowledgeを集め、それらを分析し、戦略へと変えていく。Executionは、そのKnowledgeを共通言語へ翻訳し、人や組織を跨いで共有できる状態にしていく。そしてOperationは、そこで得たKnowledgeを使って価値を生みながら、現実世界との接触によって新たな暗黙知を蓄積していく。

    だけど、ここでもうひとつ疑問が生まれる。
    同じJobを担っている人でも、Knowledgeの扱い方は同じなのだろうか。

    新しいKnowledgeを試そうとする人もいる。別々のKnowledgeをつなぐことが得意な人もいる。そして、すでにあるKnowledgeを正確に受け継ぐことを得意とする人もいる。

    つまり、「何を担うか」と「Knowledgeをどう扱うか」は別の話なのだ。

    Behavior(行動特性)

    そうなると「Job」だけでは組織を表現することができないだろう。

    そこでボクは、このOrganization論に「Behavior(行動特性)」という考え方を加えることにした。

    次回はこの「Behavior(行動特性)」について、続きを書いていこうと思う。


    ↓ #2へ続く

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