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Organization論 #4

    科学的に考える人

    Cultureとは何か

    前回の記事では、Organizationには「循環」と「展開」という二つの動きがあると書いた。

    Jobが「循環」を担ってCashを生む。
    では、Behaviorが担う「展開」は何を生むのだろう?

    Innovatorが新しいKnowledgeを生み出し、Niquistがそれをつなぎ、Traditionalistが受け継いでいく… こうした「展開」が長期間繰り返されると、Organizationにはある種の「偏り」が少しずつ生まれてくるのではないだろうか。

    ― ここでは「日常的に観測される、Organizationを構成する個々の行動」を「Action」と呼ぶことにしよう ―

    本章は、「そのActionによって生じる偏りを、複数重ね合わせたときに浮かび上がってくるもの。それが、ボクたちが普段「企業文化(Culture)」と呼んでいるものなのではないだろうか。」という問いからスタートしようと思う。

    Actionとは

    Actionとは、Organizationを構成する個々人が日常的に取る行動を表す。そこに意図や価値観といった意味づけは含めない。

    テストの点数で考えてみよう。

    例えば、100人の社員に同じテストを受けてもらったとしよう。結果を集計すると、40点付近に多くの人が集まった。また、別の会社で同じテストをすると、そちらは65点付近に多くの人が集まったとしよう。

    平均点が40点か65点かはCultureにとってはあまり重要ではない。重要なのは、個々の得点が「どれくらい一箇所に集まっているか…」つまり「収束しているか」だ。

    例えば、平均点が65点でも、0点から100点まで社員がバラバラに分散していたら、もしくはひとりの高得点の人によって平均値が上方に移動しているだけなら、その集団に共通した傾向があるとは言いづらい。

    反対に40点付近に大部分の社員が集中しているのであれば、「この集団の人たちは、だいたいこの辺りに集まる」と予測することができる。

    それをグラフにすると「正規分布のような山」になる。

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    ボクがCultureを考えるうえで見たいのは、この山の位置ではなく山の尖り具合だ。統計学でいう厳密な「尖度」とは少し違うが、ここでは便宜上、どれだけ一つの場所に集中しているかを「尖り」と考えたい。

    山が低く扁平であれば、共通した傾向は弱い。逆に山が高く尖っていれば、多くの人が同じあたりに集中しているということだ。

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    Contextとは

    別の例も出してみよう。
    ある船の船員たちがみんなで昼食をとっている。

    その船では昼食は11時にふるまわれる。
    だけど、それは声の大きな一人の船員の意見で決まっている。他の多くの船員は面倒に巻き込まれたくないのでその意見に従っている状態だ。確かに分布の「山」は11時に収束している。しかし、この山だけを見て「この船のCultureは11時ランチだ」と判断するのは少し早い。

    なぜなら、この収束には「Context」が大きく影響しているからだ。

    Contextとは、その人の判断や行動の前提となっている環境および背景のことを指す。つまりそれは、InformationやKnowledgeを(発する側ではなく)受け取る側が、どう解釈し、どうActionするかを選択するときに参照する背景情報だと言える。

    ボクは、人によってContextの受け取り方が異なることを、以下の2つの特性で整理したい。それはDiversity(多様性)とUnderstanding(理解力)。「幅」と「深さ」のようなイメージだ。

    Context Diversity
    = これまでに、どれだけ異質な「当たり前」を経験してきたか。
    Context Understanding
    = そのContextが、なぜそのようになっているのかを理解する力。

    もし、例の声の大きな人が「昼食は11時だ!」と叫んでいたとしても、Context Diversityの高い人は「いや、以前乗っていた船では12時だったぞ」と言い返すことができるし、Context Understandingの高い人であれば「いや、各部署の仕事が揃って一段落するタイミングを考えると13時でしょ?」と言えるわけだ。

    さらに、この「Context」ってやつはカンニングOKだ。
    「Aさんも12時がいいって言ってた」とか「Bさんは12時はまだ仕事が終わらないって言ってた」とか「オレは船に乗る前に八百屋をやってたが、八百屋にゃ昼休憩なんて概念はねえ」とか、いくらでも聞き放題だ。

    そうやって互いのContextをカンニングしながら、次第に多くの船員が12時に昼食をとるようになる。つまり、Actionの分布が12時付近に収束していく。それがCulture(文化)の形成だ。

    Cultureはレイヤーで見る

    しかし「12時にみんなで一斉に昼食をとる」ということだけではCultureにならない。船員たちをよく観察していると、ほかにもいくつかの共通するActionが見つかるかもしれない。

    コックは、寄港するたびに大量の水と塩漬け肉を積み込む。
    機関士は、出航前に念入りに船を点検する。
    船長は、雲行きが怪しくなり始めると、さっさと港に寄って錨を下す。

    これらは、それぞれ別軸で行われているActionだが、それぞれを重ね合わせてみると、ぼんやりとひとつの像が浮かび上がってくる。

    ― この船の人たちは、みんなで力を合わせて不確実性に備えている ―

    それこそがCultureだ。
    そのCultureに惹かれて「同じ船に乗りたい」と共感する人が現れるのだ。

    ここでもう一度、テストの話に戻ろう。

    テストではカンニングは禁止されているけれど、OrganizationではカンニングOKだ。っていうか、みんながカンニングをしている。

    「あの人はどうやってるんだろう」
    「あっちの部署ではどうしてる?」
    「前の会社ではこうやってたよ」
    「別の業界では、こんなやり方が普通だった」

    誰もが、これまで経験してきたさまざまなContextを参照し、それを自分なりに解釈しながら、自分のActionを少しずつ変えていくものだ。

    程度の差はあれど。

    誰がカンニングを媒介するのか

    そして、そのカンニングを媒介するのがNiquistだ。

    「Aさん、こんなことやってたよ」
    「それ、Cさんのところでも使えるんじゃない?」
    「Dさんもこの話に入れようよ」

    Niquistはどんどん異なるContextを接続していくけれど、彼がCultureを作り出すわけじゃない。Niquistは(単なる善意に基づいて)異なるContextを接続し、互いに参照できる状態にしているだけだ。

    しかし、そのInteractionが繰り返されることでActionは変化し、結果として山の形も変わっていく。

    しかし、必ずしも分布の山が収束するとは限らない。
    例えば船員同士が、

    「お前、昼メシ何時がいい?」
    「12時かな」
    「オレも」

    とカンニングし合っていれば、12時付近の山はさらに尖っていくかもしれないが、新しく乗ってきた船員が、「前の船では14時だったよ」と言えば、それに引っ張られてActionが分散するかもしれない。

    逆に、それを聞いたうえで、「いや、やっぱり12時の方がいいな」となれば、以前より12時へ強く収束する可能性もある。

    つまり「Context」はCultureを強くすることもあれば、弱くすることもあり、「Action」はContextによって収束と分散を繰り返すのだ。

    Cultureを発見する

    ボクは「Cultureは作れない」というスタンスに立っている。
    だけど、Cultureは「勝手に形成される」ものだ。

    もちろんHelmsmanが「ウチの船の昼食は絶対11時だ!」と言い続けることもできるだろう。それを何年も続ければ、そのルール自体がContextとなり、船員のActionが11時付近へ収束するかもしれない。

    そういう方法もアリだろう。実際、それを長期間続ければ「この船では11時に昼食をとる」というContextが共有され、いつか11時付近にActionが収束する可能性もある。しかし、必ずそうなるとは限らない。「やっぱり12時がいい」と別の山ができるかもしれないし、11時派と12時派に分散するかもしれない。

    つまり、Cultureに介入することはできるけれど、その収束先と収束度まで完全にコントロールすることはできないのだ。

    では、Cultureを経営の武器にしたいならどうすればいいのか。
    まずは、自社のCultureを「発見」することだ。

    12時にみんなで一斉に昼食をとる
    寄港するたびに大量の水と塩漬け肉を積み込む。
    出航前に念入りに船を点検する。
    雲行きが怪しくなり始めると、さっさと港に寄って錨を下す。

    それらをレイヤーで重ねたときに、どんな像が浮かび上がってくるかを観察し、分析するのだ。そこはGeneralに任せてもいいし、自分でやってもいいだろう。

    そして、そこから浮かび上がってきた「どうやらウチの船は、不確実性への備えが強いらしい」というCultureを、競争優位の武器として使うのだ。

    「ウチの船は、どんな航海でも目的地までたどり着く。どうだ!」と主張しよう。勝手にできあがったCultureに意味を与え、外部に向けて表現しよう。

    それがやがてBrandになっていくのだ。


    これで、4回にわたって考えてきた「Organizationとは何か」という問いに、いったん区切りをつけようと思う。

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