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空想観察日記(その2)

    科学的に考える人

    昨日は現場に行くためにいつもと違う電車に乗った。

    車内は比較的空いていた。
    そこで同じ車両に乗り合わせた人物…

    髪の毛はロマンスグレーを通り越して、ホワイトアッシュくらいの色合い。グレースーツに革靴。その上にさらに濃いグレーのダウンパーカーを着込んでいる。パッと見、定年間近の中間管理職って感じだ。

    …が、彼は手ぶらだ。
    荷物を一切持っていない。
    そして、それがさも当然のような佇まいだ。

    ボクの推理では、彼は大手酒造メーカーのベテラン営業マンだ。彼は頻繁に卸先の飲み屋に顔を出して自社商品を飲んで帰る。それが彼のメインの仕事、営業促進活動兼市場調査だ。

    酒造メーカーには、アルコールが入る前提の社内ルールがある。それは「飲みに行くときは荷物をオフィスに置いていく」こと。酔っぱらって鞄やパソコンをどこかに置き忘れたりしないための対策だ。

    昨日の夜も、いつものように荷物一式をオフィスにおいて繁華街に出かけたんだろう。そして早めに出社して、昨日の領収書の清算処理をすることから一日の仕事が始まる…

    12月は忙しい。
    自社商品を使ってくれている飲食店に年末の挨拶の訪問をしなければならないからだ。お店が忙しいのはわかっているから滞在時間はできるだけ短くして軒数を稼ぐ。その分領収書の枚数が増えるのだ。

    そして、お店ごとに年末年始の予定を聞いて、酒販会社と擦り合わせもしておかなければならない。さらに、今年は例の大手ビールメーカーのサイバーテロの影響もあって、全く見込み通りに行かなかった。年始もどうなることやら…

    「はぁ…」
    彼の口から酒臭いため息が漏れたような気がした。

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