
小説 『三時のお茶』 第二十章
丘の上に立つ街の、一番高い位置にある閑静なアパルトマンのバルコニーで、詩人は一人静かに三時のお茶を飲んでいた。あの蕾の茶葉を街じゅう探し歩いたが、見つけることができなかった。あの湯の中で優雅に花開く蕾をもう一度見たかった。
机の上には彼の詩集と今日の新聞が乗っていた。詩集の売れ行きは上々で、この部屋を買うこともできた。新聞には、最近出版されたあの小説家の新作について華々しい批評が載っていた。文学界の新境地を開拓した彼女の斬新な小説は、批評家によって『未知派』と名付けられ、国際的な文学賞にノミネートされたと報じられていた。彼女はあの物語を完結できたらしい。
詩人は新聞を静かにテーブルの上に置いた。膝の上の柔らかな白猫を撫でながら、詩人はあの霧に包まれた日々を懐かしく思い出した。芸術家や哲学者たちとの議論。憂いなく創作に没頭できる生活ーー。
いや、今だって、今でこそ、一人で創作に励むことができるはずだ。でも、もう、詩人には残された言葉がなかった。詩人は自分の空虚さを感じながら、窓から、霧に覆われた森の奥に立つ灰色の屋敷の廃墟を見つめた。
お茶はもう残っていなかった。
【完】
*創作大賞オールカテゴリ部門に応募しています。
*全二十章ある小説の第二十章です。(一章ずつ投稿しています。)
*マガジンにまとめています。