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正方形のノート~届くかわからない、でも伝えたい。~

    1. 埋もれたエッセイ


    創作大賞に応募した。

    時間をかけて書いたエッセイだった。

    すぐ埋もれた。

    ビューもスキも伸びない。

    AIに相談した。

    「タイトルを工夫する。」

    「読まれる文章を研究する。」

    「フォローを増やす。」

    正しいとはわかっている。

    でも、なぜか手が動かなかった。

    何かが引っかかっていた…


    2. 押し入れの雑誌


    埋もれたまま、何もできなかった。

    次のエッセイを書こうと思った。

    でも、思い浮かばない。

    何となく押し入れを探ってみた。

    1冊の雑誌を見つけた。

    20年以上前のコミッカーズだ。

    マンガやイラストを描くことに特化した雑誌だった。

    ページをめくる。

    そこには、小さな正方形の枠が並んでいた。



    3. 正方形に描いた思い


    小さな正方形。

    それは、読者の投稿コーナーだった。

    雑誌のアンケートハガキには、正方形の自由欄があった。

    そこに、読者が白黒のイラストや文章を投稿していた。

    私の投稿も載っていた。

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    19歳。

    今から20年以上前だ。

    天広先生の描く女の子が好きだった。

    でも、人前では言えなかった。

    周りから「おたく」と思われるのが、
    イヤだった。

    それでも、伝えたかった。

    心の奥に抑えていた思いを、小さな正方形に描いた。

    掲載された時は、嬉しかった。

    周りに自慢もできず、1人で静かに喜んだ。

    でも、恥ずかしくて、
    ちゃんと自分の投稿を見られないまま、
    押し入れにしまっていた。


    4. コミッカーズという場所


    自分の投稿の周りにも、いろんな正方形があった。

    親に反対されたけど、「マンガ家になる!」と宣言する人。

    何度も不掲載だけど、「それでも投稿するぞ!!」と意気込む人。

    2週間入院して、「みなさん、体はお大事に」と呼びかける人。

    画材は買ったけど、「実力が追いつかない」と嘆く人。

    スラムダンクは「最高に面白いバスケ漫画」と語る人。

    同じ小さな正方形の中には、
    その人の「本気」が詰まっていた。

    そして、正方形には、編集部に悩みや質問をするコーナーもあった。

    イラストを描いていくうちに、友人たちが結婚していく切なさを書く人。

    「萌え」について詳しく知りたい人

    「編集部の好きなジャンルは何か?」と質問する人

    気になる言葉を拾って、コメントを返していた。

    あっ、そうだった…

    読者ページが、いつも楽しみだった。

    そして、読んでいく内に…

    自分も正方形に「スキ」を描きたくなったのだと……。


    5. 指先は覚えていた


    なんとなく、白黒で、
    20年前に描いた花穂を描きたくなった。

    まず、参考になるイラストをたくさん集める。

    昔と変わらないスタイルだ。

    描きたい表情。

    描きたいポーズ。

    イメージに合ったイラストを組み立てて
    自分の中の花穂を描いていく…

    顔を描いていく。

    手が止まった。

    「目」だ。

    白黒だと、瞳の表現が難しい。

    あ、そうだ。

    あの頃、目を描くために
    ボールペンを使い分けていた。

    0.7ミリ。

    0.5ミリ。

    0.3ミリ。

    目は、0.5と0.3ミリを使った。

    まず、外側を0.5ミリで描く。

    瞳は薄くなるように
    0.3ミリの先に全神経を注いで、弱く塗った…

    文字は0.7で目立たせたかった。

    でも、太すぎるので0.5で書いた。

    そして、正方形があるハガキは一枚しかなかった。

    だから、鉛筆で下書きをして、

    その上から、何度も線を重ねていく。

    インクがかすれても、

    線が途切れないように…

    またなぞる。

    20年以上たっても、
    指先は覚えていた。


    6. 正方形はつながっていた


    コミッカーズを読み返していると、こんな投稿があった。

    「友人の投稿が載ったので、自分も初投稿しました。」

    「これからも、お互いに学校もイラストもがんばろう!!」

    正方形は、次の正方形につながっていた。

    みんなの正方形で、
    私もコミッカーズに叫びたくなった。

    「天広先生の絵が大好きだ!」

    そんな気持ちをポストへ…

    そのかすれた正方形を、
    編集部は受け取ってくれた。

    昔は、掲載された喜びと恥ずかしさで分からなかった。

    でも、またこの雑誌に出会えたことで気づくことができた。

    あの正方形は、

    作品を載せるだけじゃなかった。

    誰かの「スキ」を受けとめる場所でもあった。


    7.届くかわからない。でも、伝えたい。

    創作大賞で埋もれてしまった。

    AIは「マーケティング」を提案してくれた。

    でも、やってみようと思ったけど、できなかった…

    それは、数字がイヤだったからではない。

    飾るのが、イヤだったわけでもない。

    私は、ずっと押し入れに入れたまま、忘れていた。

    誰かの「スキ」を受けとめて、
    また誰かの「スキ」につながっていく…

    あの正方形を。

    今は、描きたくても、
    あのハガキも、
    受け取ってくれる宛先もない。

    でも、届くかわからない。

    それでも、伝えたい。

    このノートで。


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    40代の社会福祉士。 深掘りしすぎて、ソーシャルワークより哲学の話をしていることが多々あります。 音楽や映画、日常の違和感からソーシャルワークを見つめ直しています。

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