
サフォークの空から
湖水地方からロンドンに到着すると、
地下鉄はストで止まり、
通りには人が溢れていた。
混みあったバスにようやく乗り込み、
ジンジャーブレッドを友人に届けた。
翌日、私はリヴァプール・ストリート駅にいた。
地下鉄駅の静寂、鉄道駅の喧騒。
思ったときに動かなければ、
旅は遠のいてしまう気がした。
コンスタブル・カントリーも、
「いつか」のひとつだった。
目に見えない不安が世界を覆い、
自由がままならない頃、
ある展覧会が開かれた。
「光を描く、空気が動き出す。」
望めばそこにあったイギリスの風景は、
もう、他者を介さなければ
感じられないのかもしれない。
十九世紀の空と、今日のサフォークの空。
見知らぬ誰かが撮った空が、
はるかむこうの国から届く。
私が惹かれていたのは、
展示そのものよりも、その空だった。
THE SKY CONNECTS US
空は、わたしたちをつなげてくれる
三菱一号館美術館
We’ll meet again.
あの頃、この言葉は、戦時中の歌とともに、
イギリスで静かに歌われていた。
あれから四年、私はサフォークに降り立った。
どこまでも続く青い空と平地。
つかめそうにやわらかな光の気配。
水面が揺らぎ、ウィローが風と戯れる。
丸めた干し草の、かすかに青い匂い。
夏が行こうとしている。
いまでは深い眠りについている
あの美術館のアカウントへ、
一枚の写真を送った。
まだ仕上がりそうにない
刻々と変わる習作の雲を仰ぐ。
空は、私たちをつないでくれていた。





Constable Country Walk ルート
Manningtree
⇒ Flatford(Flatford Mill, Willy Lott's House, Valley Farm, Flatford Granary, Dry Dock, the Lock)
⇒ Dedham
⇒ along River Stour
⇒ Flatford(Bridge Cottage, Flatford Bridge)
⇒ Manningtree

※ 同じ旅の時間から書いた「道は終わらない」もあります。