
【微弱通信】
ポーッ……ポポ-ーーッ……。ポポポッ...ーッポ...。
途切れ途切れの通信音が、暗い管制室に響く。
「……聞こえますか?聞こえますか?!!」
私は受話器のようなものに向かって何度も呼びかける。
ザーーーッ……ノイズだけが返ってくる。
「……だめか。」
私はうなだれたように肩を落とす。
窓の外には、もう人が住めなくなった地球が広がっている。
海は干上がり、木々は枯れ果て、空は灰色に濁り、地球はまるで色を失ったようで、私の知る、過去の地球とはもう完全に別世界だった。
人類はとっくに別の星へ移住していて、ここに残っているのは、観測員である私ひとりだけ。
この装置は、旧文明の研究施設から見つかったものだった。
“微弱ながら過去へ通信できる可能性がある”
そんな記録だけが残されていた。
もし本当に繋がるなら、まだ世界が壊れる前の誰かに、
伝えられるかもしれない。
ッポポポーーーッポッ
「だれか、誰か聞こえますか!??」
私の声だけがやけに響いていた。
その時、なぜかふいに、科学者であった教授が言っていた言葉を思い出した。
「世界を理解した結果、人間を超越したわけではない。
むしろ私は、世界を知れば知るほど、人を愛おしく思うようになった。」
あの頃は意味が分からなかった。
人類は愚かで、何度も間違えて、その果てにこの星を壊していったのだから。
でも、長い時間をここでひとりで過ごすうちに、私は少し考えが変わった。
人は、すぐには変われない。
でも、長い長い時間をかけ、何も変わっていないように見えても、見えない場所で、何かは静かに育っている。
だからきっと、過去に必要だったのは、“正しい答え”じゃなかった。
誰かが安心して、立ち止まって、空を見上げられるような、ほんの少しの余白だったのかもしれない。
私はもう一度、通信機のスイッチを入れる。
ポーッ——……ポーーッ
「聞こえますか。」
「まだ、間に合いますか。」