
【一首拾い】 第八十七首 ― 曇り窓に残らない公式
テスト初日。
いつもより少し早い時間の電車に乗る。
朝、雨が降ると言っていたからか、
このあたり特有の地形のせいか、
電車は通り雨に包まれた。
ガタゴトと進む音は、変わらない。
雨のせいで、窓が曇る。
湿ったガラスに、指で公式を書いてみる。
足りなくなって、息を吹きかける。
そのまま続きを書こうとしたとき、
ふと顔を上げると、
外は、もう晴れていた。
窓の曇りも、
さっきの式も、消えていた。
村雨の 露もまだひぬ 槙の葉に
霧立ちのぼる 秋の夕暮
通り雨の露がまだ残る槙の葉のあたりから、霧が立ちのぼっていく秋の夕方。
雨の季節、急に降った雨、湿度が上がって電車の中の曇ったガラスを見ながら、この歌を思い浮かべました。