
【一首拾い】 第六十首 ― ひとつずつ積み上げたもの
中学のころから、少しだけITオタク気質があった。
PCを使った調べ学習の課題。
やり始めると止まらなくて、気づけば細かいところまで作り込んでいた。
フォント。
配置。
余白。
ちょっとした違いで、見え方が変わるのが面白かった。
放課後、教室で友達に見せると、こんなことを言われた。
「えーこれめっちゃすごいじゃん。お父さんとかに手伝ってもらったの?」
そんなわけはない。
うちの父は、2か月ほどアメリカ出張中だ。
……それに、もし手伝ってもらっていたら、
たぶんもっといいものになっている。
少しだけ考えてから、私は席に座り直す。
新しいページを開く。
写真を貼る。
背景を抜く。
文字を置く。
フォントを整える。
グリッドに合わせて、全体のバランスをそろえる。
整列。
数分で、一枚が形になる。
画面をそのまま見せる。
「ね?」
そんなに難しくないでしょ。
少しだけ間をおいて、付け足す。
――これ、自分でやったよ。
大江山 いく野の道の 遠ければ
まだふみもみず 天の橋立
そこは遠いので、まだ行ったこともないし、手紙も見ていない。というのが素直な現代語訳です。
実際には、歌会でよい歌を詠んだ際に「親に作ってもらったのでは?」と言われたので、この歌を詠んで返したという話があります。
宿題を「お父さんに手伝ってもらった?」と言われたときの経験から、この歌を思い出しました。