
【一首拾い】 第九首 ― 雨の桜で、時間を思い出す
春。雨の日の公園。
傘の内側に雨音が溜まって、地面はしっとり濡れている。
桜は咲いているのに、晴れの日みたいにはしゃげない。
桜を見るたびに、いくつかの場面を思い出す。
保育園の入学式。小学校の入学式。中学校の入学式。
同じ花の下で、違う自分が立っていた。
雨に打たれる今年の桜を見ながら、ふと考える。
私は去年の桜の時期から、ちゃんと成長できているのだろうか。
今という時間を、無駄にしてしまっていないだろうか。
桜の季節は短い。
人生の中で、輝ける時間も短いのかもしれない。
受け身でいると、気づいたときには色が変わっている。
だから、今年は違うように立ちたいと思う。
花を咲かせられるタイミングで、
いちばんきれいな花を咲かせられるように。
もうひと頑張りしよう。
雨の中でも、桜は咲いている。
そのことが、少しだけ背中を押す。
花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
花の色は、むなしく色あせてしまった。
私も物思いにふけりながら長く過ごすうちに、同じように若さを失ってしまった。
桜を見ながら、心の中の桜の記憶をたどった際に、この歌を思い出しました。