
【一首拾い】 第八十五首 ― アイディアまでつれない夜
春の深夜 自室の机
夜中に創作を進めていた。
進める、と言っても、実際にはほとんど止まっている。
ストーリーをああでもない、こうでもないと考える。
展開を置いてみては消し、台詞を打ってみては、やっぱり違う気がして消す。
どれも面白くない。
昼間に友達とけんかをしたせいだろうか。
あのときの言い方が悪かったのか、それとも向こうの言葉がきつかったのか、もう整理もつかないまま、気持ちだけがまだ引っかかっている。
いつもなら「これは使えるかも」と思えるような小さな思いつきまで、
今夜はどれも薄くて、遠い。
画面の白さも、点滅するカーソルも、
こちらを待っているというより、静かに突き放しているみたいだった。
まだ眠るには早い気がする。
でも、このまま起きていても、急に何かが良くなる気もしない。
考えごとを抱えた夜は長い。
そして、心が少し曇っているだけで、
アイディアまで、つれなく見えてしまう。
夜もすがら 物思ふころは 明けやらで
ねやのひまさへ つれなかりけり
夜じゅうずっと考えごとをしていると、朝がなかなか来ない。
部屋のすきままで、なんだか冷たく感じてしまう。
心が晴れない夜は、部屋のすきまだけでなく、いつものアイディアまで温度を失う気がします。