
【一首拾い】 第三十一首 ― 朝ぼらけの足跡
冬の朝。いつもより早く目が覚める。
まだ暗い家の中で、家族を起こさないようにそっと着替え、外へ出る。
息を大きく吸い込むと、冷え切った空気が肺に少し痛い。
道路は融雪剤のおかげか、ほとんど凍っていない。
歩いているうちに、空の色がゆっくりと変わっていく。
やがて日が昇りはじめる。
いつもよりもまぶしい。
田んぼに残っている雪が、朝日を受けて光っている。
冬の田んぼに農作業はなく、足跡のない白い面が広がっている。
夜の名残のような白。
けれど、よく見ると、
畔から続く小さな足跡がある。
きっと、犬が走り回ったのだろう。
雪に喜び、はしゃぐ姿が目に浮かぶ。
その光景まで、朝日に照らされている気がする。
夜と朝のあいだで、
静かな白さが、少しだけ明るさを帯びていく。
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに
吉野の里に 降れる白雪
このうたは、有明の月かと思うほど、吉野の里に白く雪が降り積もっている様子をうたっています。
この歌の白さと静けさを、ある冬の朝の風景の中で思い出しました。