
【一首拾い】 第十七首 ― 雨の桜で、時間を思い出す
かつての人は、紅葉した葉で埋め尽くされた川のことをうたった。
今、目の前にあるのは桜で埋まった川。だから見ているものは違う。
川沿いの桜並木に桜が散り、その花びらが川に浮かぶ。
その色はピンクだ。春の川は、やわらかい色で満ちている。
けれど、今年もその命を燃え上がらせ、きれいな花を咲かせたのだと思うと、この桜色は、ただ淡いだけじゃなく、命が燃えた“赤”に近いものに見えてくる。
静かな燃焼の色。春の火の色。
染めものをするときも、染料の色と出来上がりの色は、必ずしも一致しない。
見えている色と、染まって残る色は違うことがある。
この桜色の川で布を染めたら、どうなるだろう。
見た目は淡いのに、もしかしたら――
真っ赤な命の色になるのかもしれない。
ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
神話の時代にも聞かないほど、竜田川は紅葉で真っ赤に染まっている。
桜の花びらで桜色に染まった水路を見ながらこの歌を思い出しました。
お付き合いくださいましてありがとうございました!