自由診療シリーズ②自由診療では、どんな薬や製剤が使われているの?
前回は、自由診療が「公的医療保険を使わず、費用を原則として全額自己負担する診療」であることをお伝えしました。
では、自由診療では、実際にどのようなものが使われているのでしょうか。
医療機関のホームページを見ると、「国内承認薬」「適応外使用」「未承認薬」「幹細胞」「培養上清液」「エクソソーム」など、聞き慣れない言葉が並んでいることがあります。
ただでさえ体調に不安を抱えているときに、こうした言葉を一つずつ調べるのは大変です。また、名称だけを見ても、それがどのようなものなのか、どこまで効果や安全性が確認されているのかは分かりません。
今回は、自由診療で使われている薬や製剤などについて、全体像をできるだけ分かりやすく整理します。
なお、一般にはまとめて「製剤」と呼ばれることがありますが、法律上はすべてが同じ扱いではありません。ここでは分かりやすさを優先して、治療に使われる薬や加工物などを「薬や製剤など」と表現します。
まず知っておきたい、二つの見方
自由診療で使われるものを知るときは、二つの見方があります。
一つ目は、日本国内でどのような承認を受けているかという見方です。
二つ目は、何から作られているものなのかという見方です。
例えば、同じ注射や点滴であっても、国内で承認された薬を承認された目的で使う場合もあれば、承認とは異なる目的で使う場合、国内では承認されていないものを使う場合もあります。
「注射だから同じ」「点滴だから同じ」というわけではありません。
国内で承認されている薬を使う場合
日本国内で、品質、有効性、安全性について審査を受け、承認されている医薬品があります。
ただし、国内で承認されている薬を使う場合でも、すべての使い方に健康保険が適用されるとは限りません。使用する目的や対象となる病気、投与方法、保険適用の条件などによって、自由診療になることがあります。
ここで気をつけたいのは、「国内で承認されていること」と「今回の使い方にも承認があること」は別だという点です。
また、国内承認薬であっても、副作用やアレルギーなどの危険がなくなるわけではありません。
承認された目的とは異なる使い方をする場合
国内で承認されている薬を、承認された病気や目的、用法・用量とは異なる形で使うことを「適応外使用」といいます。
例えば、ある病気の治療薬として承認された薬を、美容や体重管理など、別の目的で使用する場合があります。プラセンタ製剤も、承認された目的とは異なる美容目的などで使われる場合は、自由診療になります。
適応外使用だから、すべて不適切というわけではありません。医療の現場では、医学的な根拠や患者の状態を考慮し、医師の判断で行われることがあります。
ただし、患者側は、その薬自体が国内で承認されているかどうかだけでなく、自分が受けようとしている目的や使い方についても承認されているのかを確認することが大切です。
国内で承認されていない薬などを使う場合
海外で使用されていても、日本国内では承認されていない医薬品や医療機器があります。医師が輸入し、自由診療で使用していることもあります。
国内未承認だから、直ちに効果がない、危険であると決めつけることはできません。一方で、日本の承認制度において、その使用目的での品質、有効性、安全性が確認されているわけではないことも理解しておく必要があります。
未承認のものを使う治療では、医療機関に次のようなことを確認してみてください。
国内で承認されているものか
未承認の場合は、どこから入手しているのか
同じ目的で使える国内承認薬があるのか
海外ではどのように使用されているのか
どのようなリスクや副作用が報告されているのか
健康被害が起きた場合、どのような対応を受けられるのか
医薬品副作用被害救済制度の対象になるのか
厚生労働省の資料でも、未承認の医薬品等や、承認された目的とは異なる使い方をする治療については、承認の状況、入手経路、国内の承認品の有無、海外の安全性情報などを分かりやすく示すことが求められています。
ビタミンや栄養成分などを使うもの
自由診療では、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などを含む点滴や注射が行われることがあります。
比較的身近な成分に見えるため、「栄養だから安全だろう」と思う方もいるかもしれません。
しかし、口から摂取する場合と、注射や点滴で体内に直接入れる場合は同じではありません。投与する量や速さ、持病、腎臓や肝臓の状態、服用中の薬などによって、身体への影響が変わることがあります。
身近な成分であっても、期待されることだけではなく、副作用や受けられない条件について説明を受けることが大切です。
人の身体に由来する成分を使うもの
人の胎盤から作られるプラセンタ製剤など、人の身体に由来する成分を使用するものもあります。
こうしたものでは、アレルギーなどの副作用に加えて、原料、製造方法、感染症対策、投与後の制限などについて確認が必要になる場合があります。
「人の身体に由来するものだから自然で安心」とは限りません。どのような原料を使い、どのように製造・管理されているのかを確認することが大切です。
自分の血液や細胞を利用するもの
本人から採取した血液や細胞を加工し、治療に使用するものもあります。
例えば、本人の血液から血小板を多く含む部分を取り出して使用するPRPや、脂肪などから採取した細胞を培養して使用する治療などがあります。
細胞を用いる再生医療等については、再生医療等安全性確保法に基づく手続きが必要です。厚生労働省は、再生医療等を提供する医療機関や治療計画に関する情報を公表しています。
再生医療等を検討するときは、医療機関名や治療名が公表されているかを確認し、医師から十分な説明を受けたうえで判断することが大切です。
また、「幹細胞」と書かれているからといって、すべてがiPS細胞を使った治療というわけではありません。どこから採取した、どのような細胞を使うのかを確認する必要があります。
培養上清液、エクソソーム、セクレトームとは
近年、自由診療の案内で「幹細胞培養上清液」「エクソソーム」「セクレトーム」という言葉を見かけることがあります。
幹細胞培養上清液は、幹細胞などを培養したあとの液体から、細胞そのものを取り除いたものです。その中には、細胞から分泌されたさまざまな成分が含まれています。
セクレトームは、細胞から分泌される成分全体を指す言葉です。
エクソソームは、細胞から放出される非常に小さな粒子状の構造の一つで、培養上清液に含まれることがあります。
この三つは関係していますが、まったく同じ意味ではありません。
また、同じ「培養上清液」や「エクソソーム」という名称であっても、使用した細胞の由来、培養方法、成分の取り出し方、濃度、品質管理、保管・輸送方法などが同じとは限りません。
名称を見ただけで、品質や期待される働きを判断することは難しいため、医療機関から具体的な説明を受ける必要があります。
「承認されている」と「効果が保証されている」は同じではありません
国内で承認された薬であっても、すべての人に同じ効果が出るわけではありません。また、自由診療として使用されているからといって、その治療効果が確立しているとは限りません。
反対に、未承認であるという言葉だけで、海外での使用実績や研究結果まで否定されるわけでもありません。
大切なのは、よい・悪いと単純に分けることではなく、現在どこまで分かっていて、どこから先がまだ分かっていないのかを知ることです。
医師が、期待できることだけではなく、効果が得られない可能性や、まだ十分に分かっていないことについても説明してくれるかどうかは、大切な判断材料になります。
自宅で受ける場合は、さらに確認したいことがあります
ここまで紹介したものが、すべて自宅で受けられるわけではありません。
オンライン診療に対応していても、実際の治療は通院が必要な場合があります。治療内容や患者の状態によっては、設備の整った医療機関で受けた方が安全なこともあります。
自宅での治療を希望する場合は、使用するものについての説明に加えて、次の点も確認してください。
自宅での実施が可能な治療なのか
誰が、どのような立場で訪問するのか
医師と連絡できる体制があるか
治療前にどのような体調確認を行うのか
副作用や急変が起きた場合、どのように対応するのか
治療後の相談先はどこか
自宅で受けられることは、通院が難しい方にとって大きな助けになる可能性があります。その一方で、「自宅まで来てくれるから」という理由だけで決めず、治療内容と安全体制の両方を確認することが大切です。
医師に誠実さを感じられるかも、大切な判断材料です
自由診療を選ぶときは、治療内容や費用だけでなく、説明をする医師に誠実さを感じられるかも大切です。
誠実さは、資格や肩書き、ホームページの立派さだけでは判断できません。実際に話をしたときの言葉や姿勢から感じ取れることもあります。
例えば、治療のよい面だけでなく、次のようなことも説明してくれるでしょうか。
効果が得られない可能性
現時点では分かっていないこと
起こり得る副作用やリスク
自宅では実施できない場合があること
保険診療を含めた、ほかの選択肢
治療を受けないという選択肢
必要になる費用の総額
質問をしたときに面倒そうな態度を取らず、分かる言葉で説明してくれるか。すぐに契約や治療を勧めるのではなく、考える時間を与えてくれるか。患者の希望だけでなく、体調や生活状況にも耳を傾けてくれるか。
こうした姿勢も、医療機関を選ぶうえで大切な判断材料になります。
自由診療は、患者自身が費用を負担し、説明を受けたうえで選択する医療です。だからこそ、「この先生になら何でも聞ける」「よいことだけではなく、難しいことも話してくれそう」と感じられる関係が大切です。
反対に、質問への答えが曖昧なまま治療を急がされたり、「必ずよくなる」「今すぐ始めた方がよい」と強く勧められたりしたときは、一度立ち止まってもかまいません。
医師の説明を聞いたうえで、何となく不安や違和感が残る場合は、その場で決めず、家族やかかりつけ医に相談したり、別の医師の意見を聞いたりすることも一つの方法です。
治療を受けるかどうかだけでなく、「誰から説明を受け、誰に身体を任せるのか」も、納得して選んでほしいと思います。
分からない言葉は、そのままにしなくて大丈夫です
医療機関の説明を聞いても、専門用語ばかりで理解できないことがあるかもしれません。
そのようなときは、
「これは国内で承認されていますか」
「私が受ける目的にも承認されていますか」
「何から作られたものですか」
「分かっていないことも教えてください」
と、尋ねてみてください。
すぐに治療を受けるかどうかを決める必要はありません。説明を聞いたあとに持ち帰って考えたり、家族やかかりつけ医に相談したりすることもできます。
治療を選ぶために質問することは、決して失礼なことではありません。
自分の身体に入るものだからこそ、分からないままにせず、納得できるまで説明を受けてほしいと思います。
次回は、なぜ自宅で自由診療を受けたいと考える方がいるのか、通院が難しい方やご家族の事情も含めて考えていきます。
※本記事は、自由診療で使用される薬や製剤などについて知っていただくための一般的な情報提供です。特定の治療、医薬品、製剤または医療機関を推奨するものではありません。治療の適応、承認状況、期待される効果、リスク、費用などは、医師から十分な説明を受けたうえでご判断ください。
参考資料
厚生労働省
医療広告ガイドライン(2026年3月版)
厚生労働省
医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)
厚生労働省
再生・細胞医療・遺伝子治療について
厚生労働省
再生医療等提供機関の情報について
